第20話
次の日の朝。
俺はいつもの通り冒険者ギルドへと来ていた。
今日の仕事は荷物運びだ。
ポーションの納品に関してはある程度制限をかけるとは言っていたが、それでもやはりある程度の量が必要なようだ。
リーシャがいる店はもちろんのこと、他のお店にも運んでほしいとのことだ。
「……だ、大丈夫ですか? かなり重たいですよ?」
……今日はもう一回り大きな荷車を用意してもらった。
二つの店に納品するポーションをまとめて運ぶためだ。
俺は軽く引っ張ってみるが、まあ大丈夫だろう。
ちょうどいいトレーニングにもなるしな。
「このくらいなら問題ない。それじゃあ行ってくるな」
「……はい。お願いします。リーシャさんは……まあ、ジョンさんなら大丈夫だと思いますが、一応気を付けてくださいね」
受付の言葉に一つ頷いてから、俺は荷車を引っ張った。
まずは冒険者通りの店から行こうか。リーシャのところはそのあとでいいだろう。
俺は地図を見ながら、その方角へと歩きだす。
……たぶん、あの店か? 俺が不安に思っていた時だった。
「わー、お兄さん凄いね!」
驚いたような様子で少女が声をかけてきた。
俺はちらとそちらを見ると、少女三人がいた。昨日助けた子たちもこのくらいの年齢の子だったよな。
二人は倒れていて顔は見えなかったが……一人はうん、眼鏡かけているし違う子だな。
「そうでもない。……ちょっと聞きたいんだが、このポーションショップってそこの店で合っているか?」
「うん、あってるよ。あたしたちもよく利用するから間違いなし!」
少女がぐっと親指を立てる。
と、こちらに青髪の子がやってきた。
「もう、ヒレン。急いでいるんだから」
「えー、道を聞かれたから答えていただけよ。いいじゃないそのくらい!」
「……まったく。そもそも、あなたが寝坊したからこんな時間になった。早く、昨日の剣士について聞きに行きたいんだから」
「もう、アクフィアはせっかちだなぁ。それじゃあねお兄さん!」
ヒレンと呼ばれた子がバタバタと手を振っていた。
一番後ろにいた杖を持った少女がすっと頭を下げ、それからギルドの方へと歩いて行った。
と、その後姿を見ていた冒険者たちが、声をあげる。
「さっきの『紅蓮の翼』だよな? めっちゃ可愛いよなーやっぱり」
「え!? マジかよ!? Aランクパーティーの子たちだよな!?」
……あの年齢でAランク、か。
かなり優秀な子たちなんだろうな。羨ましい。
……嫉妬してばかりもいられないな。
俺も頑張らないとな。
〇
「相変わらず早いわねぇ」
リーシャがポーションを造りながら俺が運び込むのを見ていた。
リーシャには今日の予定を伝えていたので、俺が想定よりも早く来た?
「早く終わらせて、午後になる前に魔物狩りにでも行こうと思ってな」
「あら、そうなのね。午後はどうするの?」
「猫探しの依頼があってな。それを受けようと思っている」
「猫、ね。また大変そうじゃない。迷子になるんじゃない?」
「まあ、なんとかなるだろう」
カナもいることだしな。
たぶん、アリラもついてくるのではないだろうか?
そんなことを考えながら、俺は薬草を運び込んだ。
「……こんなところか」
「ええ、ありがとね。前回納品されていた分は作り終えたから、これもこの前と同じように運んでもらってもいいかしら?」
「わかった」
リーシャが指さした場所に置かれたポーションを、荷車へと運んでいく。
すべて運んだところで、リーシャが口を開いた。
「さて、私も今日中にポーション作って、明日からまた依頼を手伝えるようにするわね」
「……ああ、ありがとな」
別にそれほど急がなくてもな。
とりあえず俺は、ポーションを言われた店と孤児院へと運んで行った。
〇
その二つの作業を終えたあと、俺はギルドに戻り討伐依頼を探した。
……森の方でゴブリンが大量発生しているようだ。
その数を減らすために、冒険者たちを募集しているようだな。
午後までに数体くらいなら倒せるだろう。
行ってくるとしようか。
ゴブリン討伐依頼を受け、ギルドを出る。
外に出る依頼を受けるのはこれが初めてだな。
少し緊張するな。
街の外に出た俺は、それから森を目指して歩いていく。
以前、リーシャとゴーレム狩りの際に近くまで来ていたので、迷うことはなかった。
森に踏み込むと、すぐにゴブリンを発見できた。
ゴブリンの数は三体……飛びかかってきた、そいつらを正拳突きで仕留めた。
「……ふぅ」
なんとかなったな。
ゴブリンの魔石を拾い、アイテムボックスに入れる。
そうやって、ゴブリンを数体倒した時だった。
俺の体から力があふれ出した。
……なんだ、この感覚は?
魔力を用いて肉体を強化したときは別のものだ。
初めての感覚に戸惑いながら、俺は自分の状態を確認していく。
……肉体が強化されているようだ。
ステータスを確認してみようか。
俺はステータスカードを取り出してみた。
ジョン・リートル ジョブ:テイマー レベル2/10
力80
耐久力79
器用76
俊敏82
魔力72
スキル『正拳突き レベル81』
おお! レベルアップしている! 初めてのレベルアップだ!
……それにしても、凄いな。
こんなあっさりとステータスが1も上がるとは思っていなかった。
レベルアップというのはやはり凄いな。
……ただ、こうなると逆のことも考えられるな。
レベルアップでは、ステータスは1程度しか上がらない。
……今後も同じ成長かどうかはわからないが、もしもこれからも1程度しか成長しないのなら、基礎鍛錬が非常に大事になってくる。
だって、俺がレベル100まであがるのに、あと98しか成長しないんだからな。
こんなのでは、やはりレベル100を目指すのは夢のまた夢だろう。
……もっと、ちゃんと体を鍛えないとな。
正拳突きもレベル81になったが、こちらはとにかく使い込んでいくしかない。
……頑張らないとな。
俺は軽く息を吐いてから、アイテムボックスから時計を取り出す。
……時間は12時か。
……そろそろ、戻ったほうがいいか?
街までは全力で走れば5分とかからないが、街中まで同じように走るわけにはいかないからな。
ギルドによって依頼報告まで考えたら、そろそろ戻った方がいいだろうな。
……でも、レベルアップしたんだ。
これからも時間を見つけて、魔物狩りを頑張っていこう。
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オタクな俺がポンコツ美少女JKを助けたら、お互いの家を行き来するような仲になりました
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