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第14話



 街の外に出た俺たちはすぐに目的の魔物を探しに向かう。

 今回討伐する魔物は、ゴーレムだ。


 この辺りに出現するゴーレムはあまり強くないらしい。ただ、最近街付近でも見かけるようになってきたので討伐してほしいとの話だ。


 本来はもっと街から離れた場所で見かける魔物なのだそうだ。

 街から西に向かうと遠くに森が見えてきた。


「あの森は色々な魔物がいるからうかつに近づくと危険なのよ」

「……なるほどな」

「ただ、薬草採取をするときはあそこがいいのよね。危険だけど、効率よく集められるわ」

「難しいところだな……」

「そうね」


 そんな話をしていると、ゴーレムを発見した。

 ゴーレムたちもこちらに気づいたようで、向かってくる。

 さて、戦うとするか。俺が拳を構えたところで、リーシャが前に出た。


「久しぶりに戦闘するから、私に任せてくれない?」

「そうか」


 リーシャはすでにレベル10迷宮を突破しているのだし大丈夫だろう。

 何かあれば加勢できるように準備をしながら、リーシャの様子を伺う。


 リーシャがゴーレムへと近づいていく。

 ゴーレムが拳を振り上げたところで、リーシャも剣を抜いた。

 ゴーレムの一撃をかわし、リーシャが片手を向ける。


「ファイアランス!」


 放たれた火の槍が、ゴーレムの腕を貫いた。

 ……なかなかの威力の魔法だな。ゴーレムが逃げるように後退するが、リーシャはそちらへと迫り、剣を振るう。


 ……剣の腕も良いな。剣術を持っているからだろう。

 そうやってリーシャはゴーレムをあっさりと倒して見せた。

 戻ってきたリーシャが軽く息を吐いた。


「だいぶ、体力が落ちちゃってるわね」

「……そうなのか?」

「ええ。さすがに連続の戦闘は厳しそうね……次のお願いしてもいい?」


 リーシャが視線を向けたほうにはゴーレムがいた。

 ゴーレムが接近してきたので、俺が前に出る。

 ゴーレムが拳を振りぬいてきたので、それに合わせ俺は『正拳突き』を発動した。


 ゴーレムの拳と俺の拳がぶつかる。そして、爆発するようにゴーレムの腕が吹き飛んだ。

 腕から体へと衝撃は抜け、ゴーレムの体が吹き飛ぶ。

 ……動かないのを確認したところで、俺はリーシャを見た。


「……やっぱり、強すぎるわよ!」

「……そうでもないだろ? 俺のステータスは低いんだからな」

「……それがおかしいのよねぇ」


 たいそう不思議がっているようだが……そういうことなのだろう。

 俺のステータスが低い以上、俺はたいして強くないのだ。

 レベルだって中々上がらないしな……。


「確か、ゴーレムは五体討伐すれば良かったんだよな?」

「ええ、そうね。この調子でいきましょうか」


 俺とリーシャはそれからゴーレムを討伐して回った。



 〇



 ゴーレムの討伐を終えたところで、俺たちは街へと戻った。

 そこでリーシャが思いだしたように声をあげる。それから、両手を合わせた。


「ごめんなさい。用事があったの忘れていたわ」

「……大丈夫なのか?」


 急ぎの用事であれば、相手にも悪いだろう。

 リーシャはこくりと頷いた。


「午後からだから時間は大丈夫よ。午後に玄関の修理業者が来るからその対応にあたるわね」

「……悪いな」

「いいのよ、気にしないで。今日も家に泊って行っていいから、依頼が終わったら家に戻ってきてね?」

「分かった」


 ……家を破壊したのは俺だからな。俺も付き添ったほうがいいのかもと思ったが、先にリーシャにそう言われてしまった。

 とりあえず、弁償費を支払えるように、稼がないとな……。

 

 このままでは食費、宿泊費とリーシャに頼り切りだからな。それはなんとしても避けたかった。


 ギルドに戻り、ゴーレムの素材を渡して依頼の達成を報告してから、新しい依頼を探す。

 ……あまり高額の依頼は残っていないな。


 街中で受けられる依頼を受けようか。

 今ぱっと見て思ったのは、ゴミ掃除とかだろうか? このくらいなら、それほど時間もかからずに受けられそうだ。

 依頼主もギルドになっているからな。


 その依頼書を持って、俺は受付へと向かう。

 受付が、驚いたようにこちらを見てきた。


「……いいのですか? もっと高難易度の依頼はありますが……」

「いや、俺一人だしな……」


 何が起こるかわからない。

 というか、Fランクの依頼は基本こういった雑用なのだ。魔物討伐依頼はEランクから。


 受付はなんとも言えない表情で俺の依頼を受領してくれた。

 俺が高難易度依頼を受け、失敗する姿でも見たかったのだろうか? ……やはり、外の世界は恐ろしいな。


「……場所は中央地区ですね。貴族街です」

「……貴族街、か」

「はい……あそこは、どうにもゴミをポイ捨てする人が多いんですよ。そのため、何度もこうして依頼が来るんですよね。ゴミが増えると、色々な病気の原因になりますからね……」

「……なるほど。ポイ捨てするような奴がいたら、声をかけたほうがいいのか?」

「そうですね。ただ、相手は貴族ですから……まあ、無理しない程度、にですかね」 


 なるほどな。

 俺はゴミ袋を受け取って、ギルドを離れた。

 ……このゴミ袋がいっぱいになるくらいゴミを拾ってくるのが目的だそうだ。


 地図をみながら中央地区に向かい、俺はゴミ拾いを開始した。

 ゴミを拾っていると、色々な人を見かけるな。

 ……貴族、か。確か、偉い人なんだったか? 俺も詳しくは分からないが、そういう立場の人がいるというのは聞いたことがある。


 道路を歩いている貴族たちは、騎士の護衛などを引き連れている。そして、ゴミ拾いをする俺を蔑むかのように見ていた。


 そして、わざとらしくゴミを捨ててきた。

 ……いやいや。


「ゴミはきちんと持ち帰ってくれないか?」

「なんですか? あなたが拾っているのだから良いではないですか」


 俺の言葉が気に食わなかったのか、30半ばほどのその女性が睨みつけてきた。

 騎士たちも腰にさした剣に手を伸ばし、こちらを睨んでくる。

 ……なに? 俺が間違ったことをしたというのだろうか?


「ゴミがあると、そこから思わぬ病気の発生もありえるんだ。知らないのか?」


 俺がギルドで教わったばかりの知識を披露すると、貴族は顔を真っ赤に染めた。


「平民の、冒険者の癖に、私にたてつきましたね。騎士、そいつを牢にぶちこんでしまいなさい」

「……はっ!」


 騎士がこちらへと迫ってくる。

 ……なに? ここでやりあうのか?

 俺がゴミ袋を置いて、拳を構えたときだった。


「アリベルト様。この街では、ゴミのポイ捨ては固く禁じられているはずではありませんの?」


 凛とした声が響き、こちらへ一人の少女がやってきた。

 姿を隠すようなフードに身を包んだ彼女は、ぱさりとフードを剥がし、その顔をさらした。


 銀色の髪の綺麗な少女だった。

 誰だ?


「か、カナリア様……どうしてここに……っ」


 先ほど俺に絡んでいた貴族の女性が、顔を青ざめさせていた。


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