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第10話


「なんとか、たどり着けたな」


 ……孤児院まですぐには到着できず、俺は何度か道を聞いた。

 みんな結構親切に教えてくれるものだ。

 何度か話をしてみて分かったのは、女性に道を尋ねるのが良いことに気づいた。


 特に、老婆だ。老婆は柔らかな笑みとともに道を教えてくれる。

 逆に冒険者っぽい人達は無視することが多い。


 あまり良い態度ではないな、と思ったので、俺も道を聞かれたときは助けてあげようと思った。

 とりあえず、リーシャの家を探さないとな……。

 確か、こっちのほうだったはずだが。


 俺が迷子になっていると、慌てた様子の冒険者がこちらへと駆けてきた。


「な、なああんたさっきリーシャさんのところから出てきた奴だよな!?」


 おお、冒険者が自ら道案内を申し出てくれたぞ。


「ああ、そうなんだ。それで、ちょうど迷子になってしまっていたんだが……案内してくれないか?」

「すぐ、そこの家だって! なんか、ガラの悪い男たちが中に入っていったんだよ! 様子見にいってくれないか!?」

「ガラの悪い男、か。分かった」


 ……客だろうか?

 でも、今も店は閉まっているようだしな。

 ガラの悪い男がリーシャの店に入る理由、か。


 ……一体なんだ?

 俺は首を傾げながら、荷車を冒険者に渡して、駆け出した。


「はやっ……!?」


 そんな声が聞こえたが、気のせいだろう。

 俺はリーシャの家の裏側へと回り、扉をあける。

 ばきんっ! という音がした。

 ……しまった。鍵ごと破壊してしまった。


 ……あとで弁償しないとな。

 俺が中へと入ると、男三人とリーシャがいた。

 リーシャを押さえこむように男が立っている。


「……リーシャ。納品を終えたんだが……彼らは客か?」

「ち、違うわ! ……ジョン! 逃げて! 騎士を呼んできて!」

「騎士……」


 騎士というのは何をするんだったか? 確か、治安維持だったか。

 リーシャを押さえていた男とは別の二人が、こちらへと飛び掛かってきた。


「逃がすか!」


 彼らは短剣とともに斬りかかってきた。

 いきなりなんだ?

 彼らの短剣は鉄製だろうか? ……もっと粗悪なものにもみえるな。


 彼らの短剣を片手ずつで受けとめる。

 彼らが振りぬこうと力を入れてきたが、俺はそのナイフをへし折った。

 

「な!?」

「な!?」

 

 二人が驚いたような声をあげる。

 ……驚くようなことではないだろう。そんなできの悪いものを使っていては折れるのは当然だ。


「てめぇ、何者だ!」

「俺たちの速度についていける奴がこの町にいるわけがねぇ!」


 そういって殴り掛かってきた彼らの拳をかわし、腹を殴りつける。

 ……いや、そんなのんびり動いていたら、誰でもついていけると思うが。


 二人が意識を失いながら、倒れた。

 ……とりあえず、彼らは敵として認識していいようだな。

 リーシャを押さえていた男が、驚いた様子でこちらを見る。


「て、てめぇ何者だ!」

「ジョンだ」

「誰も名前なんざ聞いてねぇよ! なんで、この町におまえみたいな化け物がいるんだよ!」

「……化け物?」


 人を勝手に化け物扱いするとはひどい奴だ。

 俺が一歩近づいた瞬間。男はリーシャを抱えこむようにして、腰にさしていた短剣を取り出した。

 そして、リーシャの首元へと近づける。


「う、動くなよ! こいつがどうなってもいいのか!?」

「……すこし聞きたいのだが、おまえはここに何をしにきたんだ?」

「そ、そりゃてめぇ! リーシャを犯しにきたんだよ!」

「それなら、逆に言いたいんだが……リーシャがどうなってもいいのか?」

「あ、当たり前だ! こいつをやるよりは、オレは自分の命が惜しいんだよ!」

「じゃあ、問うが……リーシャに何かあれば俺が許さない。彼女に危害を加えた場合、おまえは死と同然の痛みを味わうことになるが……」


 俺が睨むと、男はびくりと肩をあげた。

 その瞬間だった。リーシャが動いた。


「いだ!?」


 リーシャが男の手を噛み、それから彼の顎を殴りつける。

 そこから避難するように動いた彼女がこちらへとやってくる。

 それを追うように男が短剣を振り下ろす。 

 

 俺はその間に入り、腕で短剣を防いだ。

 筋肉を、骨を魔力で固めていく。

 がきん、っという音とともに彼の短剣が砕けた。


「なっ!?」


 ……ゲイルさんが言っていたからな。

 肉体で戦うのなら、鉄よりもミスリルよりも、オリハルコンよりも頑丈な肉体を造れと。


 なんとか、防げたな。

 驚いて隙だらけとなった男の腹に拳を叩き込むと彼はよろよろと体を崩し、倒れた。

 さすがに、店の中で吹き飛ぶような威力の拳は叩きつけられないからな。


「大丈夫か、リーシャ?」

「……あ、ありがとうっ」


 リーシャが涙を流しながら、こちらへと飛びついてきた。

 よほど、怖かったのだろう。


 ……まあ、そうだよな。こんなにガラの悪い男たちにいきなり襲われれば、そうなるのも無理はないだろう。


「……騎士を呼びに行けばいいのか?」

「え、ええ」

「なら――」


 俺は息を乱した様子で荷車をここまで運んできた冒険者に視線を向ける。


「わ、わかりました! 呼んできます!」

「ああ、頼んだ」


 ……俺がそういうと、彼はこくりと頷いた。

 ぎゅっとリーシャは俺の腕に抱きついていた。


「……リーシャ、少し離れてくれないか?」

「ご、ごめんなさい……まだ怖くて、その……ダメ?」

「……いや、ダメじゃないが」


 ……暑い。

 さすがに、ここまで移動してきたし、先ほど軽い運動もした。

 だから、くっつかれていると暑いのだ。


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