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俺かく語りき。曰く、「神は生きている。」

「というと?」

「エンダーシアに神を持たない人間はいないのです。信仰を持たない者は……魔族位のものでしょう。」


 俺はふとした疑問を投げ掛ける。


「神を持たないって、ティエル様以外の神も居るのか?」

「何を言ってるんだな?ティエル様が神様なんだな。」


 見ると他の二人も妙な顔をしている。なるほど。確かにそいつは厄介だ。俺は思う。



 ここから推測するに、ここではティエル教、もといキリスト教もどきが唯一の宗教で、国教でもあるのだろう。そしてその信仰は種族を問わず深い。


 基本、宗教的価値観はそう簡単に覆らない。例えば無宗教と言われる日本人ですらそう簡単に鳥居や神木を壊したり汚したりことが出来ないように、信仰は半ば本能に近い形で思想に深く刻まれる。


 そしてティエル教が唯一の宗教なら、それが唯一の思考の基盤にある。こっちで言うとキリスト教徒は6や13を不吉な数字とする。日本人なら4と9。この基盤は程度の差はあると言える簡単には覆らないし、僕らはお互いをわかりあえない。


 ましてやエンダーシアは言語すら方言があるだけで多様性を持たない。魔族ですら同じ言葉を操っているのだ。ある意味、この世界の人間は一つの大雑把な共通認識、ほぼ同じ価値観の下生きていることとなる。


 ティエルが絶対的な神であり、それ以上の人間はいない。そして神に近い人間、神に造形が近い人族が、この世界の主導権を握っている。だからこそ、亜人は地位が弱く、魔族は忌み嫌われる。不平等が当たり前のこととして蔓延している。


 加えてエンダーシアは科学が全く発達していない。魔法、つまりティエルの恩恵によりそんなことを考えずとも大抵のことができるからである。神に祈りを捧げさえすれば、許された【権限】の度合いにもよるが、火も水も金属も、力や生命すらも得ることができる。


 そんな中でも一番厄介なこと。俺達の世界とこの世界の決定的に違うところ。それは、


 神が実在している点だ。


 俺はこの世界に来るとき、ティエルに会った。彼女は翼をはためかせて確かに俺に会い、この【デバッグ】の【権限】を授けた。


「この世界の歪みを正してください……!」


 そんな悲痛な叫びと共に。だから今、俺は魔族打倒と世界の矯正の為に旅に出ている。この世界の平穏の為に。


 しかしどうだ。この街は世界の創造主、絶対的正義であるティエルを否定している。いや、否定なんてのは言い過ぎかもしれないが、少なくとも否定する人間の否定はしていない。


 だが神はいる。神の、ティエルの恩恵によってこの世界のヒトビトは生きている。だからティエル信仰は自然なことで、だからこの街は、


「異常、だな。」


 一瞬、ほんの一瞬。シュウカがぽつりとこぼした言葉に寒気を覚えた。まさか。いやまさか。そんな、そんなはずは……。


「どうしたんだな?顔が真っ青なんだな。」


 覗きこむマルの頭に手を置いた。


「いや。なんでもない。……なんでも、ないんだ。」


 俺は上手く笑えていただろうか。髪をすく手は震えていなかっただろうか。そんな心配をすることで、浮かんだ恐ろしい仮定を打ち消した。


 このあとは、魔物食研究家の研究所でもいこうか。この街が少し変わっているのは、もしかしたら俺のような、異世界人がいるからかもしれない。




<現在のタカシのステータス>


Lv.【--】(デバッグ権限により数値なし)

HP【999999999】(任意変更が可能。最大値。)

MP【--】(デバッグ権限により数値なし)

ATK DEF DEX 等各種ステータス【999999999】(任意変更が可能。最大値。)


〔スキル〕任意のスキルを使用可能。


〔権限〕【デバッグ】自身のステータスを任意に変更可能。世界の管理者と同じkコードの抹消権限を持つ。

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