のけものたちのあつまりだよ
不自然な導入!やけに説明口調な登場人物たち!何話にも連なる説明回!そう!これがくそ小説!
オークの角煮以外にもバシリスクの唐揚げやら人面樹のきんぴらやらを平らげてお腹もくちくなった頃、俺は隣の客に声をかけた。
「いやーすごいなダーダリアンは。魔物なんて初めて食べたよ。ところで、ここらの人は皆魔物を主食にしてるのか?」
ここに来たばかりで色々と教えてほしい旨を伝えると、彼は快く話をしてくれた。
曰く、ここは先に俺達が見たように土地が細く、作物を育てる湖とが難しく、かといってその立地から頻繁に食料を輸入するのも日持ちの関係で厳しいとのこと。彼は言う。
「ほら、あんたも知ってるだろ?ここは『終わりの街』なんだよ。」
孤児やら身を立てられなかった職人・冒険者・研究者etc。そんなエンダーシア国内のはぐれ者、かといって罪を犯したり自らの命を絶ったりすることができない人々が最終的に行き着く街がここ、ダーダリアンらしい。
「かく言う僕も昔は王都の官吏でね。まあちょっとしくってこっちに派遣されたんだけど。一応ここにいると給料は少し上がるし、他の住民も移住する時に家がもらえる。」
ま、王都の兵士と同じだな。命を国に捧げる代わりに融通される。なんて何が面白いのか少し笑う。
「ただここの配属はお貴族様や王都の人間にとっちゃ無能の代名詞。一回来たらもう出世コースから外れるからな!」
俺達一同は納得した声をあげる。
「なるほど。だから『終わりの街』か。」
「そーゆーこと。」
それに、反応に気分が良くなった彼の口が軽やかに回る。
「立地も立地だからな。魔族領のお隣なんて、普通の人間は恐ろしくて耐えられないだろうさ。」
「まあそうかもね。」
「だが、ここはいい街だ!」
シュウカの相槌を受けてか、いきなり彼は両手を広げる。
「皆が皆、自由に生きられる!皆己の価値観の元で生きて、それが認められている!ここは格差も宗教もない!ここは俺が俺でいられる街なんだ!!」
いきなり叫びだした男に圧倒されていると、思い出したように俺を向いて言った。
「そうそう。ここでは誰もダーダリアンのことを『終わりの街』とは呼ばない。その名前を口にしてみろ。お前達の周りの人間がこぞってダーダリアン自慢を始めるぞ。一日中な。」
「お前みたいにか?」
俺の言葉に彼はまた笑い、迷惑料にとデザートを奢ってくれた。
「いい人だったな。」
「そうだな。料理も風変わりだが絶品だった。」
「それにしてもマンドラゴラまで食べちゃうなんてびっくりだったんだな。美味しいけど。」
常連客の男が奢ってくれたのはマンドラゴラのゼリーだった。普通に食べると刺激と毒性の強いマンドラゴラだが、すりつぶして煮てから灰汁を入れてまた湯がくとぷるんぷるんのゼリー、こちらで言うところのスライムになるらしい。
「もしかしたら……俺の他に居るのかもしれないな。」
マンドラスライムもといマンドラ蒟蒻もどきの作り方に疑問を覚えた俺は、店主のおっさんにレシピの作成者について教えてもらった。わりとこの街では有名な人間らしい。後で訪ねてみよう。
「また考え事かタカシ?」
「あ?うんや何でもない。」
我に返ってふと横を見るとリーナが浮かない顔をしていた。
「リーナ?どうした?」
「皆ここに来てから変な顔してばっかりなんだな。」
「珍しいな、貴女が考え事など。」
矛先を向けられた彼女は言う。
「えっ!?私顔に出てました!?いやだなぁ。特に大したことではないのですが……。」
こういう時のリーナは絶対に何かある。俺は知っている。
「なんだよその奥歯にものが挟まったみたいな言い方は。俺達の間に隠し事はなしだ。そうだろ?」
うっ、と声を詰まらせた彼女は辺りを見回して、
「そうですね……。ですがここでは話しにくいので、一度宿を取りませんか?」
かくして俺達は宿屋に入る。今日も2つ部屋を取ろうとしたが、3人の猛攻により、また四人部屋にされてしまった。
「日頃からの節制がいざというときに役にたつのだ。」
なんてシュウカが言っていたが、それならお前が日頃からの食費を押さえてほしい。
さて、部屋に入りベッドに腰かけると、ようやくリーナが口を開いた。
「あの、ですね。えと、タカシ様はティエル教はご存じですか?」
「ああ。この世界を作った唯一神を奉ってるんだよな。」
「もしかしたら外世界からいらっしゃったタカシ様にはピンと来ないかもしれませんが……。」
「『ティエル教が存在しない。』先程の男性がおっしゃっていた言葉は、我々エンダーシアの民にとっては罪にも等しい発言なのです。」