第6章――覚醒――
――第6章――
「覚醒」
「空間転移魔法! ばかなっ!」
大臣は席を立ち、王女もまた呆気にとられた表情を浮かべた。
「信じられん! なんであんな少年が最上位魔法を使える! 我が国の精鋭魔導師でも使えるものはいないと言うのに!」
「……静かに」
「は、ははっ! 申し訳ございません、王女ユメカミ様……しかし、しかしですぞ、今のは確かに空間転移魔法……これが驚かずにいられますか!」
「……見届けましょう」
それを最後に大臣は黙ってしまった。
しかし王女も内心では驚いていた。
あれは確かに最上位魔法、使えるものなどこの世でも数えるほどしかいない。
それを、あの少年が目の前で使ったのは事実だ。
王女は再び目を戻す。
まだ戦いは終わってはいない……。
「ぐっ、ううっ……!」
俺は無我夢中で力を込めていた。目の前にはいつのまにかキメラがいる。
後ろにはメイと、闘技場の分厚い壁一枚。
ここを突破されればメイがやられる。俺はその身を盾にするように、キメラの爪を弾き返した。
一瞬キメラの身が引いたと思うと、蛇頭がまた邪悪な光を放った。
「強化しているのかっ……!」
禍々しいオーラがキメラを包み込む。
「う、うっ……ウィルさん……?」
気絶から目を覚ましたのか、メイの声が背中から聞こえてくる。
俺は視線をキメラから外さないまま語りかけた。
「メイ、大丈夫か!」
「は、はい。でもウィルさん……間に合ったのですね……」
「説明は後だ! メイ、俺に防御魔法を!」
「はい、うっ、ぐうっ……身体に力が……」
メイは苦しそうな声を出した。元々耐久力の無い身体だ、先ほどのダメージが響いているのだろう。
「メイ……どうすれば、どうすれば奴を倒せる!」
「魔法を……力に……心を……想いを……」
「魔法っ!」
俺はここに来て、過去の言葉を思い出す。
心を力に変えて、その想いをぶつければ魔法は自然とうてると……じいさんが言っていた事だ。
自信なんてなかった。
いくらやっても成功なんてしなかった。
だが、今はやるしかない。
と、思った瞬間、メイが……。
「プロテクト……!」
か細い声で俺に防御魔法をかけたと思うと、そのまま倒れてしまった。
おそらく最後の力を振り絞って俺に魔法をかけてくれたのだろう。
俺の身体を暖かな光が包む。
おそらくこれが最後のチャンスだ。
これを外せばメイも俺も死に、物語はここで終わる。
だが――。
――俺の物語は――
――終わらせないっ!――
暖かい光に身を任せ、俺は力を左手に熱い物が宿るのを感じた。
最初は防御魔法の暖かさだと思ってた。
しかし、目をやるとそこには……あの日見た、熱い炎が左手に宿っていた。
これは、攻撃魔法の炎だ……。
俺は自然とそれを剣に宿らせ、魔法剣を作り出していた。
キメラの咆哮、そして突進。
来るっ。
――俺は――
――その炎を纏った剣を振りかざし――
――大きく叫んでいた――
「業炎剣!!」
炎と共に飛び上がり、俺は蛇頭に切り掛かっていった。
邪悪なオーラを打ち破りながら、俺はそのまま蛇頭とライオンの身体を真っ二つにし、燃え上がらせた。
「……燃え尽きろ……爆破っ!」
声と共にキメラの身体は大きく燃え上がり、巨大な炎の塊となって、そしてチリになった。
そこからの記憶はない。
気付くと俺は城のベットに運ばれていた。
目を覚ますとそこは知らない場所だった。
隣にはメイも眠っている。
ああ、俺たちは生き残ったんだ……。
どんな結果が待っていても後悔はなかった。
俺は自己満足を抱いたまま、メイの安らかな眠り顔を見ながら、また再び短い睡眠の闇へと落ちていった……。
俺の冒険は、今ここから始まる、そんな事も知らずに呑気に……だ。




