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「俺は勇者になんて就活しねえ!」  作者: 千早――ちはや――
――序章――
7/9

第6章――覚醒――

――第6章――

「覚醒」


「空間転移魔法! ばかなっ!」

大臣は席を立ち、王女もまた呆気にとられた表情を浮かべた。

「信じられん! なんであんな少年が最上位魔法を使える! 我が国の精鋭魔導師でも使えるものはいないと言うのに!」

「……静かに」

「は、ははっ! 申し訳ございません、王女ユメカミ様……しかし、しかしですぞ、今のは確かに空間転移魔法……これが驚かずにいられますか!」

「……見届けましょう」

それを最後に大臣は黙ってしまった。

しかし王女も内心では驚いていた。

あれは確かに最上位魔法、使えるものなどこの世でも数えるほどしかいない。

それを、あの少年が目の前で使ったのは事実だ。

王女は再び目を戻す。

まだ戦いは終わってはいない……。



「ぐっ、ううっ……!」

俺は無我夢中で力を込めていた。目の前にはいつのまにかキメラがいる。

後ろにはメイと、闘技場の分厚い壁一枚。

ここを突破されればメイがやられる。俺はその身を盾にするように、キメラの爪を弾き返した。

一瞬キメラの身が引いたと思うと、蛇頭がまた邪悪な光を放った。

「強化しているのかっ……!」

禍々しいオーラがキメラを包み込む。

「う、うっ……ウィルさん……?」

気絶から目を覚ましたのか、メイの声が背中から聞こえてくる。

俺は視線をキメラから外さないまま語りかけた。

「メイ、大丈夫か!」

「は、はい。でもウィルさん……間に合ったのですね……」

「説明は後だ! メイ、俺に防御魔法を!」

「はい、うっ、ぐうっ……身体に力が……」

メイは苦しそうな声を出した。元々耐久力の無い身体だ、先ほどのダメージが響いているのだろう。

「メイ……どうすれば、どうすれば奴を倒せる!」

「魔法を……力に……心を……想いを……」

「魔法っ!」

俺はここに来て、過去の言葉を思い出す。

心を力に変えて、その想いをぶつければ魔法は自然とうてると……じいさんが言っていた事だ。

自信なんてなかった。

いくらやっても成功なんてしなかった。

だが、今はやるしかない。

と、思った瞬間、メイが……。


「プロテクト……!」

か細い声で俺に防御魔法をかけたと思うと、そのまま倒れてしまった。

おそらく最後の力を振り絞って俺に魔法をかけてくれたのだろう。

俺の身体を暖かな光が包む。

おそらくこれが最後のチャンスだ。

これを外せばメイも俺も死に、物語はここで終わる。

だが――。


――俺の物語は――


――終わらせないっ!――


暖かい光に身を任せ、俺は力を左手に熱い物が宿るのを感じた。

最初は防御魔法の暖かさだと思ってた。

しかし、目をやるとそこには……あの日見た、熱い炎が左手に宿っていた。

これは、攻撃魔法の炎だ……。


俺は自然とそれを剣に宿らせ、魔法剣を作り出していた。

キメラの咆哮、そして突進。

来るっ。


――俺は――


――その炎を纏った剣を振りかざし――


――大きく叫んでいた――


「業炎剣!!」

炎と共に飛び上がり、俺は蛇頭に切り掛かっていった。

邪悪なオーラを打ち破りながら、俺はそのまま蛇頭とライオンの身体を真っ二つにし、燃え上がらせた。

「……燃え尽きろ……爆破っ!」


声と共にキメラの身体は大きく燃え上がり、巨大な炎の塊となって、そしてチリになった。

そこからの記憶はない。

気付くと俺は城のベットに運ばれていた。

目を覚ますとそこは知らない場所だった。

隣にはメイも眠っている。

ああ、俺たちは生き残ったんだ……。

どんな結果が待っていても後悔はなかった。

俺は自己満足を抱いたまま、メイの安らかな眠り顔を見ながら、また再び短い睡眠の闇へと落ちていった……。

俺の冒険は、今ここから始まる、そんな事も知らずに呑気に……だ。

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