陸 〜遺されたクラスメート〜
僕達が入学した年は珍しく人が多かった。その中で四組まで作られ、僕は四年の時に四組になった。
その年の夏、志手山小学校史上最悪の出来事が起こり、四年四組はみんな死んでしまった。入院していた僕を除いて。
幼い頃の僕は病弱で、学校を休む事が多かった。クラス分けは毎回あるものの、仲間に入れないまま、次の年になっていった。
四年四組の日々もそんな感じで過ごしていった。学校にはたまに顔を出すが、勉強に追いつく事に必死で、友達なんてどうこうは考えなかった。
そんな中、四組のみんなは夏休み、合宿所の火事で死んでしまった。
九月、久々に登校すると、クラスが空っぽになっていた。
そんな僕を見て、洲本先生がやって来てこう言う。
「四年四組はもう無いよ。」
僕は頭の中が真っ白になった。少ししか話した事は無かったが、みんなが何も言わずに突然死んでしまうなんて、信じられなかった。
「君は今日から四年三組だ、ちゃんと机も用意してあるから。」
四年三組にはちゃんと机があったが、僕がそれに座る事はあまりなかった。洲本先生は入院している僕のお見舞いもしてくれたが、思うようには話せなかった。まだ、四組の担任であった菊池先生の方が喋れた。
「あの時の事、みんなはどう思っていたんだろう。」
娘の空もあの時の僕と同じ小学四年生になった。空を始め、海星や大地という僕の子供達はそんな経験が未だない。
今の僕は幸せ、なのだろうか。あの時の不幸が転じて幸せになる事も、人生の一つなのだろうか。
これからも僕は生きていく、四組のみんなが知らない世界を、知らない人生を、僕は歩んで行くのだ。