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ぐれーと・おーるど・わん 1 


 ッポーン♪ポーン♪

 「いらっしゃいませー。」


 入店そうそう元気な挨拶が聞こえてきた。店員さんの誰かが挨拶してくれたんだろうな。

 俺は今ワークステーションに来ています。うん、前回ほんのちょろーっと説明した仕事場ね。


 この建物の外観は馬鹿でけータワービルで、内装はこれまた(1階から3階)馬鹿でけー(が吹き抜け)ファミリーレストラン風の内装。一昔前は外装に合わせてお堅い室内だったらしいんだけど、お偉いさんが、せっかく人が集まる場所なのだから何かやれ!って。

 それでファミレス風になったとか。名古屋飯のアピールとさらなる集客を~とかなんとか。


 まあ、その考えは受けたんだよねー。あちら側の人達に。

 「ブヒヒヒ、今日もこの甘辛い味噌がカツにサイコーに合うブヒィ!ここで一番美味いブヒィ!」

 「こー!いやいや、そんな物より甘辛いこの手羽先の方が断然美味いぜ!コココココ!!」

 「おい!お前ら!たまには魚介類も食ってみろよw。このエビフライ何かジュワッと美味さが溢れてくるぜww!!」


 うへぇ、飲食スペースのテーブルでオークが『味噌カツ』、鶏型の獣人が『手羽先』、ロブスターのマーマンが『エビフライ』を食べて、仲良く楽しげに騒いでいる。見事な共喰いだけど良いのかな?


 ……良いか。美味しそうに食べてるし、無視しよう。そうしよう。


 今日は仕事始め(新年最初の仕事)だからな。先ずはカウンターへ行って仕事情報を確認する。

 「いらっしゃいませ、お客様。本日はどの様なご用件でしょうか」

 「アルシェラさん、おはようございます。今ワークステーションで無印8~10等までのクエストありますか」

 カウンターへ行くと美人のお姉さん、アルシェラさんが嫌そうな顔で業務的な挨拶をしてきた。これでも2年間ここで仕事をしているのだが…いつもこの塩対応だ。何でだろう、特に嫌われる様な事はしていないはず、ちょっと悲しい。

 「では免許証の提示をお願いします」

 「はい、どうぞ」

 「…はぁ。乙の段・きのとの遣いなんですから、無印のクエスト何か探さないで上の段の仕事して下さいよ、まったく」

 カードを受け取る前にぼやくアルシェラさん。あぁ、低級のクエスト受けるって分かってて冷たい対応だったのね。そりゃ職員としては上位のクエストをバンバンとこなして欲しいもんね。ごめんなさい。


 ごほんっ、えーとね。免許証の提示を求められたけど、この免許証ってのはワークステーションでの自身のランク(等級)を表す物なんだ。

 

 このワークステーションではランクで受けられる仕事が変わる。


 順番に言うと、無印の1~10等級。

 十干(じっかん)(こう)(おつ)(へい)(てい)()()(こう)(しん)(じん)()だ。十干(じっかん)は同じ読みが在る為それぞれ、きのえ・きのと・ひのえ・ひのと・つちのえ・つちのと・かのえ・かのと・みずのえ・みずのと・の遣いと呼ばれる。


 だから俺は乙の段・きのとの遣いで、一番凄い人は癸の段・みずのとの遣いだね。


 で、俺が探してる無印のクエスト。これは雑用とかスージア内で【ほぼ適正ランクなら危険性の無い】クエストだ。野草採取や探索、警護等が主かな。数件モンスターの討伐(・・)があるけど小規模のネズミかオオカミタイプ若しくは迷い込んだ4~5匹のゴブリンなどが相手でパーティー(・・・・・)なら問題ない。


 ―――うん、ボッチは寂しいぜ。


 「……はい、確認しました。カードを返却します。ご指定のクエストですが現在取り扱い中のものはこの3件です」


 ジーッジジっとクエスト内容が印刷されて出てくる。

 アルシェラさんはカードと共にクエスト内容の印字された3枚の用紙を渡してくれた。こんな時代でも紙媒体が使用されるのには理由が有って、種族によっては画面が見え難いといった理由が有るからだ。………まぁ、全種族対応の高性能電子版ってのも有るがクソ高いってのもある。世知辛れぇね。

 

 カードとクエスト用紙を受け取りアルシェラさんにお礼を言う。さて、クエストは…

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 9等級

 ネズミ及び虫駆除


 下水にてラウラット及びグーローチの異常繁殖が確認された。

 本来どちらも4等級のモンスターだが、環境及び異常繁殖により9等級依頼として依頼する。

 場所・マンホール内部

 対象・ラウラット、グーローチの殲滅

 報酬・9万5000円

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 8等級

 ウサギ狩り


 私はウサギ狩りがしたいのだ!平民よ我を盛り立てよ。

 我が名は人偉帝国グーランノート子爵次男アルディス・ヴィス・オットテンナー(略

 場所・スージア【グーランノート】【アナジシの森】

 対象・ウサギ10()

 報酬・6万5000円

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 10等級

 美しくコボルト狩り


 ハハっ美徳の無い貴族も居たものだな。貴族の務めを果たす事其れこそ美しい。

 そう思わないか?ああ、失礼。私の名はグーランノート子爵クーレム・ヴィス・ウトーシーナ(略

 場所・スージア【グーランノート】【アナジシの森】

 対象・コボルト10体

 報酬・4万2000円

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ………えー。マジですか。これだけ?冗談抜きで?


 俺が困惑してるのには理由がある。普段クエストと言うものは47都道府県と【スージア5大国】から発注がある。


 この【スージア5大国】と言うのは【親和郷国・ヘディングアウラ】・【森都公国・アスノーディア】・【天獣王国・ガーワンニャ】・【人偉帝国・グーランノート】・【協商連盟・ゴルシルバ】の5つ、簡単にそれぞれの国柄説明すると


 ヘディングアウラ・日本と一番親しい国交があり、多種族混成国家

 アスノーディア・亜人種の国でエルフが頂点の国家

 ガーワンニャ・獣人主体で弱肉強食の国

 グーランノート・人族至上主義の帝国

 ゴルシルバ・商人が集まりグーランノートから独立した国


 こんな感じだ。で、普段受けてるヘディングアウラからのクエストが無く、3件しかないクエストも内容がヤバ過ぎて困惑したって訳。

 


 先ず1つ目のクエスト。4等級のモンスターの依頼では破格の値段と言っても良い。通常は10等級で5万前後だからな。だが場所とモンスターの最悪なので却下。下水に何か入りたくないし、グーローチ……温厚種のモンスターなんだがぶっちゃけでけーゴキブリ。そんなの相手にしたくないです。


 2つ目のクエストは、うえー鬱陶しい貴族の依頼(お守り)。安全の確保できない場所で護衛しながらウサギ10()も狩らなきゃいかんとか罰ゲームかよ。あと、動物とか物とかの数え方は共通だから本来は羽が正しい。うむ、このクエストは地雷案件(バカ貴族のクエスト)だな。


 最後も…あかんヤツや。2つ目とどっこいどっこいで、しかも危険性が段違いだぞ。最低でも甲の段でクエスト発注しなければ危ないし、報酬も内容を鑑みるにケチだ。このクエストも地雷案件だな。


 となると、現状絶望的に仕事が無い事になる。


 「アルシェラさん~。これだけしかクエスト無いんですか~」

 「何情けない声出してるのですか。ならダンジョンはどうですか。潜れば稼ぎにはなるでしょ」

 「新年から潜るのはちょっと……それに深く潜らないと稼ぎになりませんよぅ」


 アルシェラさんがダンジョンを勧めてきたが…ダンジョンはボッチには厳しい。

 何がどう厳しいのか説明はまぁ、また今度。ダンジョンの事は入る時になったら話そうか。


 ガックリ項垂れてるとハァっとため息が聞こえ、一枚のクエスト用紙をアルシェラさんが差し出してきた。


 「このクエストは甲の段のクエストですが内容は10等級寄り、貴方が探していた内容に近いのでは?」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 甲の段

 村の周辺警備


 村の畑にモンスターのものと思われる足跡があった。

 おそらくゴブリン、10体前後と思われる。畑を守ってくれ。

 場所・スージア【グーランノート】【キータ村】

 対象・ゴブリンの殲滅

 報酬・8万8000円

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 おお、ゴブリンの討伐依頼か。ゴブリンの基本討伐危険度は5等級。ただし、村を襲撃するゴブリンや人型モンスターの中には武装が整い、剣や槍、弓などを装備する事が有る。このクエストだと状況により8等級まで危険度が上がるが……やるか。


 ちょっと甲の段で依頼が掛かってんのが気になるけどね。


 「アルシェラさん、このクエスト受けます」

 「分かりました。……はい、受注登録しましたので頑張って下さい」

 「はい、頑張ります」

 「あと、次からここで項垂れないで下さい。業務の邪魔になりますから」



 キツイ事言わんで下さい。泣きそうだ。


 …取り敢えず、クエストを受注したのでカウンターから離れ、転移装置へと足を向かわせる。転移装置はワークステーション入口に設置してある。理由は防犯の為とか何とか。めんどくさいね。



 「ブヒィ!!、どて煮サイコーブヒィ!たまらなく深い味わいが絶品ブヒーーーーィ!!」

 「こけーー!この串焼きの肉はスゲーこーー!?味付けは塩のみとは思えん美味さだこけこーー!!」

 「おいおいww天むすの上品なうま味wたまんねーぜぇwwなぁ、お前らも食ってみろってwww」


 

 …まだお食事会をしてたんですね。

 今度はオークが『どて煮』、鶏型の獣人が『名古屋コーチンの串焼き』、ロブスターのマーマンが『天むす』を食べて騒いでる。


 なぜだろね、ただの食事風景の筈なのに狂気のサバトにしか見えん。

 ただ美味しい物食べて浮かれ騒ぐのは良いけど、あんまり騒ぐと……あぁ、アルシェラさんが注意しに行っちゃった。後ろ姿しか見えないから分からないけど、めっちゃ怖いのだろう。3人共青い顔して震えてる。

 

 出荷を察知した動物の様だ。そうなるとアルシェラさんは―――

 あ、イカン。何かゆっくり此方に振り向いて来てる。


 逃げ出す様に急ぎ転移装置へと向かう事にする。

 さて、お仕事開始ですよー。




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