花園を求める!(三十と一夜の短篇第9回)
女子。それは尊ぶべきもの。
女子。それは天国よりも地獄よりも、もっと遠くにある、伝説の存在。
あぁ、女子。俺は、女の子に飢えている。
悪者をちょちょいと倒し、俺はみんなのヒーローになった。
みんなからもてはやされて、これからはモテモテ人生ひゃっほー、と思っていたのだが、そうではなかったらしい。
なぜだ!
みんなを救う俺の姿は間違えなくかっこよかったはず。
顔に自信はないけれど、それを補って余るくらい、イケメンだったはず。
なのになぜ、俺の周りには一人の女の子もいないのだろう。
「勇者様、さあさあどうぞ。好きなだけお飲みください」
食べ放題飲み放題、もちろん嬉しいさ。
けれども、酒を注いでくれるのは、食事をよそってくれるのさえも、なぜ男なのだろうか。
その上おじさんである。
俺は二十九歳童貞。職業勇者。
二十代最後の年に、見事俺はヒーローになったのだ。
だからそのままの流れで、卒業だって出来てしまうと思ったのに。
なぜ、なぜなのだろう。
なぜ俺は何十も年上の男に、奉仕してもらっているのだろう。
全くもって嬉しくない。
いやいや、酒を飲めるのは嬉しいよ?
さっきも言ったとおり、豪華な料理を食べれるのも嬉しいよ?
俺はただ、女の子が足りないんじゃないかなと、そう思うだけで。
「あの、俺って、勇者ですよね。この国を、というか全世界を救った、スーパーヒーローですよね」
不安になって訊ねてみれば、
「ええ、もちろんにございます。貴方様がいらっしゃらなければ、この世界は闇に染まり、人々は苦しみ続けることとなったでしょう。感謝しております」
なんていうべた褒め状態。
やはり俺はスーパーヒーローなのだ。
ではなぜ、俺は童貞なのだろう。
なぜ俺は今まで一度も、女子と手を繋いだことがないのだろう。
触れたことがないというわけではない。
すれ違うときに手か何かが当たるくらいの経験はある。……と思う。
あってほしいと思う。
というか、女子というのは、本当に存在しているのだろうか。
だってスーパーヒーローが自分の街にいたら、だれだって会いに来たいだろ?
一緒にいたいとか、そう思うだろ?
握手くらいならいくらでもしてあげるよ。
ハグだって全然大丈夫だよ。大サービスさ。
ファンサービスは、他のヒーローに負けないと思うんだよね。
なのにどうして、だれも声すら掛けてくれないのだろうか。
もしかしたら、俺が世界を救ったということが、知られていないのかもしれない。
「俺は勇者です。そのですね、国王様がお礼に娘さんをくださるとか、そういうことはないのでしょうか?」
あるあるだと思うのだけれど、かなり期待しているのだけれど、むしろそのために世界を救ったといっても過言じゃないくらいなのだけれど。
そうだ。
俺はこんなおじさんたちにもてなされるために、世界を救ったわけじゃない。
女子。それは尊ぶべきもの。
女子。それは、幻だ。
ごめんなさいでした!