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#40 ステージへの道6-2回戦③-

 二回戦。VS教師チーム。二回裏軽音部チームの攻撃。


「何とか、ショートかファーストに転がしていこう。スイングはコンパクトにな。無理ならバントしてもいいぞ」


 円陣を組んで、作戦を伝える。

 なりふり構ってられるか。全員バントでもいい。


 五番打者、栄坂。パワーはあるから当たりさえすれば。当たりさえ……しませんでした。

 栄坂、あえなく三振。というか橋谷の変化球が凄まじい。とても素人に当てられる球じゃないぞ。手加減しろや、こら。


 六番打者、イケメン。最初からバントの構え。一球目、ファール。二球目、見送りのストライクであっという間に追い詰められる。


「おい」


「何だよ」


 コトコが珍しく話しかけてくる。


「バントのやり方教えろクズ」


 クズは余計だ、クズは。

 イケメンの次はコトコの打席だ。俺は短い時間でフォームやコツを教えた。付け焼刃だがやらないよりマシだ。

 そうこうしている内に、イケメン三振。


「スリーバント失敗か?」


 アウトの場面を見逃したので、戻ってきたイケメンに聞く。


「いえ、バントで前傾姿勢してストライクゾーンに張り出してたら内角攻めがキツくなったんですよ。だからヒッティングに変えたんです」


 生徒に向かってなんてことすんだ、クソピッチャーが。…………いや、使えるか。


「コトコ。こっち来い」


 バッターボックスに入ろうとするコトコを呼び寄せる。


「名前で呼ぶんじゃねーよ。怖気がするぜ」


 と、文句を垂れながらもコトコはやってきた。


「バントの時、少し前かがみ気味でいけ。ボールは上手く避けろよ」


 俺はそれだけ言ってコトコを送り出した。

 女相手に手加減してくれるか、と思ったがそんなこともなく。コトコはバットに掠らせることもなく三振した。


「てめえの教え方が悪い」


 ベンチに戻ってきたコトコは一言漏らした。何で俺はこんなに嫌われてんだよ。


 スリーアウトチェンジ。

 最終回。三回表。依然0対2。

 これ以上離されるわけにはいかない。

 ホウカは二番打者をショートゴロに打ち取ったが、続く三番坂口にツーベースを浴びる。ランナーを出しても四番の堂島でゲッツーの予定だったが、ランナーセカンドでは難しい。

 作戦を変え、堂島には三振してもらう。


 さて、正念場だ。


 三回表。0対2でリードを許している。これ以上点はやれない。

 打者は東スポはげ教師。先ほどはフォアボール。はげのくせに選球眼が良いみたいで侮れない。

 実はこのハゲも事前に買収しようとした。しかしきっぱりと断られた。実力はないだろうと思っていたので、気にしていなかったが、これなら生徒の金で競馬したことを校長に言うぞ、って脅せば良かった。


 マウンド上のホウカは厳しい表情をしている。三回に入ってやや球威が落ちていた。

 一、二球と外角高めに外して、三球目。内角低めにストライクを取りにいったところをキレイに弾き返される。

 打球は一二塁間を抜けて、ライトの真正面に転がる。


「スイちゃん、こっち!」


 スイコはしっかり捕球して、俺にボールを投げる。一連の動作が様になっていた。実はけっこう練習してたのか?

 俺がホームに返球しようとする頃には、すでに二塁ランナーはホームを踏んでいた。打ったハゲは二塁を蹴ろうとして止まる。


 0対3。

 ホウカが肩で息をしている。

 俺はボールを持ったままマウンドに近づく。


「肩の力抜けよ。ドンドン打たれていけって。俺たちが守ってやるから」


 ボールをホウカに差し出して、凝ってそうな彼女の肩に手を乗せる。

 やや憔悴した顔をしたホウカが顔を上げる。


「負けられないです。これ以上打たれては――」


「だから、気にするなって。これから全部ど真ん中に渾身のストレート投げろよ。ボール球投げたら俺の靴を舐めさせるからな」


 ホウカにボールを押し付けて守備に戻る。

 六番打者。さっきはエラーで出塁されたが、打たれた球は平凡な内野ゴロだった。


 ホウカは阿法のサインに三回首を振ってから、投げた。ランナーがん無視の全力投球。

 第一球、見送りストライク。球速が息を吹き返した。

 二球目。二塁ランナーが走る。一球目と同じど真ん中、空振りストライク。完全に振り遅れている。

 ホウカはランナーをまったく見ていない。真正面のバッターを焼き殺すような鋭い視線を向けている。

 サインは一回で決まる。三球目投球。二球目を全く同じに再現した。


 スリーアウトチェンジ。

 審判の宣言を聞いて、ホウカは大きく息を吐く。


「やりゃ出来るじゃねーか」


 マウンドからベンチに戻るホウカを労う。


「わたくしを誰だと思っているのですか。青連院ほうか様です」


 知ってるよ。


「それよりもどうするつもりです。伊庭さんやあなたにあのピッチャーを打てるとは思えません」


 打てるわけないだろ。相良先輩や栄坂ですら打てないのに。


「何とかするさ。その後は任せる」


 最終回、軽音部の攻撃。

 先頭打者、スイコ。初球からバントの構えで果敢に当てに行こうとするが、前回のコトコと同様掠らせることも出来ずない。


「ごめん、無理だった」


 スイコがバットを抱いて済まなさそうに戻ってくる。


「なーに、いい布石だったよ」


 スイコからバットを受け取って打席に立つ。


「なっ!」


 俺の格好にピッチャーが思わず声を上げる。


「ほう」


「なーにやってんだあいつ?」


「あれは予告ホームランだよ。あのバットの示す先にボールを飛ばしてやる、という合図だ」


 コトコの疑問に阿法が答える。


「馬鹿かよ、あいつ。打てるわけねーぜ」


 聞こえてんだよ。馬鹿って言うほうが馬鹿なんだよ。

 気を取り直して、バットを両手で握る。ピッチャーに近い方の足をホームベースに寄せるクローズドスタンスをとる。

 橋谷は俺の態度が癪に障ったようで、えらく不機嫌だった。


 一球目。予想通り内角をえぐる鋭いカーブが飛んでくる。

 ギリギリのところでかわす。判定はストライク。

 さて、もう一度。

 俺はバットを高らかと掲げ、ライトの遥か向こうを指し示す。


「無意味な挑発行為はやめてください」


 審判に怒られた。意味はあるぞ、と言いたかったが素直に謝った。

 やや前傾姿勢気味に、さっきよりさらに極端なクローズドスタンスをとる。


 橋谷は明らかにイラついていた。というか舌打ちしてるし。イケメンから続くバント攻勢に、辟易しているのかもしれない。そしてここにきて俺の予告ホームラン。

 橋谷の第二球はそんなモヤモヤのはけ口だった。最初から明らかに俺を目掛けた投球。

 審判にバレないようにその場で屈まず、球に頭を合わせにいく感じで身体を前方に傾ける。


「ぐっ!」


 衝撃は思ったより強烈で、頭部に打球を受けた俺は身体をのけぞらせて倒れた。

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