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~記憶探しの旅に出よう。~
目の前に鮮血が広がる。男が一目散に逃げてゆく。ついさっきまで一緒に歩いていた彼女が音を立てて倒れる。____暑さが一段と厳しい今年の夏、僕は彼女を目の前で亡くした。何もかもに愛された気になっていた。優しくしたら時に厳しい父や母、可愛い弟と妹、可憐で優しく儚げな大切な彼女がいて。何不自由なく今まで生きてきた。でも違う。愛されてなんかなかった。神様は僕を嫌っていた。だってそうだろう?嫌ってなかったらこんな仕打ちはしない筈だからさ。
「礼央‥‥‥いつまでウジウジしてるの?これじゃ、雨季ちゃんもまだ天国にいけてないかもよ?」
あれから、一年が過ぎた。僕はまだ彼女__星野雨季の死を引きずって立ち直れていない。母さんはこう言ってるけど、天国にいけてないならむしろ、ずっとそばにいてくれとさえ思う。母さんは簡単に言うが、僕の彼女への愛情は計り知れなかった。立ち直ろうにも、立ち直れないのだ。