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王の花嫁  作者: 川本千根
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若き王3

【宰相の娘】 サリ





もうすぐ夜が明ける

とうとうカエン様の花嫁選びの日が来てしまった


私はカエン様の妹君のユキ様と同い年だったし、お父様と前王様が仲が良かったので、小さい頃から王宮のテントに出入りして、2つ上のカエン様やユキ様、3つ下のリオス様とは兄妹のように育った


私たちは皆森の国、白国で生まれた

大人たちは肥沃な土地で良く作物の育つ朱国を尊ぶが、私は白国の森が好きだった


白国ではよく森の小川でカエン様たちと笹舟を流したりして遊んだ

今でこそカエン様は感情を顕になさらないけど、あの頃はよく笑ったし、競争に負けるとふて腐りもした


ご自分のお立場を自覚なさってからは、ご自分を律することを覚えられて己のすべてを神と国に捧げられているようにみえる


そしてその自分への厳しさが私には痛々しく感じる時がある

だからといって私はカエン様に何もしてあげることができない


カエン様と本当の兄妹だったらどんなに良かっただろう

この切ない気持ちは味あわなくてすんだはず…


私が後悔しているのはこの恋心が隠しきれなかったことだ

自分ではおさえていたつもりだったけど、多分親しい人は皆気づいている


この日が来るのはわかっていたのに


いろんな人に心配をかけてしまっているかもしれない


もし神が私を選んでくれたら…

一生命をかけてカエン様をお守りしよう


もし他の方が選ばれたら…

そのときは一日だけ泣こう


そして涙が乾いたら私は私の責務を果たそう

若くてもお父様の補佐としてを王宮に使える身である私はやはり鳥湖の中心に近い立場なのだ


私はカエン様と花嫁様にすべてを捧げ生きてゆく





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