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王の花嫁  作者: 川本千根
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若き王1

【宰相】 トウゴ




明日カエン様の花嫁選びが行われる


しきたりに則っり国中の十五歳から二十歳までの娘がこの湖近くの神殿に集められた


鳥湖族の考え方の大きな特徴に並列思想がある


学のあるもの無いもの、富める者貧しき者、病人も健者も人としての価値に変わりはない

ただ役割の違いがあるだけだ


王ですらある意味例外ではない


王は上から支配する存在ではなく平面の円の中心にいるものなのだ

その思想から王の花嫁は年齢の条件を満たした鳥湖族の娘全員が候補になる


そして王の花嫁は神が決める


カエン様の父上で、私の幼なじみでもあるアナン様は王位に就かれるまでは大人の言う事をきかず、勉強もそっちのけで私と遊び回った

私もアナン様も長老から学ぶ神学の授業がとりわけ嫌いだった


だがカエン様は違う

何より、誰よりも湖の神に対する信心が深い

巫女の一族であった亡き母上様のお血筋のせいかも知れぬ


アナン様の若い頃は女性と見紛うほどの美しさだった

線の細い顎のラインと長い首、その大きな濡れた瞳は見る者の魂を奪うような、ある種禍々しさを感じるような…


病に臥しカエン様に王位を譲ってからは痩せて精気を失ったが、その瞳の美しさは今も変わらない

カエン様の弟君リオス様がその美しい瞳を受け継がれておられる


カエン様は父上様にも母上様にも似ておられない


このカエン様の正しい美しさをなんと表現したら良いかわからない

カエン様の姿は完璧な中庸なのだ

この世で完璧な中庸ほど神に近いものがあるだろうか


そして、その輪郭にしろ瞳にしろ口元にしろ、その位置を一ミリでもズレたなら全く印象が変わってしまうであろう絶妙なバランスで配置されている

その調和が神々しい美しさを生んでいる


カエン様の外見にはカエン様の精神性が表れている


ただ一つ神に近い中庸を乱すものがあれとすれば、それはカエン様の飛び抜けて美しい黒髪だ

艶めかしい長い黒髪だけがカエン様が生身の人間であることの証かも知れぬ


神はこの若き二十歳の王にどんな花嫁を与え給うのか…




サリは…娘のサリはどんな気持でこの夜を過ごしているのだろう





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