表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王の花嫁  作者: 川本千根
2/50

プロローグ2

昔、大きな湖を取り囲むひとつの大きな国があったの

それがいつの時代か分裂して三つの国に分かれたのね


朱国は湖の南側、鳥湖の一族が住む国

肥沃な土地が豊かな実りを生み出す気候の良い国

この朱国は南側が大海に面していて他の大陸との貿易が盛んなとても豊かな国よ


青国は湖の東側、龍湖の一族が住む国

砂漠地帯で耕作地は湖に面したほんのちょっとの土地だけ

湖でとれる魚が大切なタンパク源だった

ただ砂漠で採れる不思議な石がその世界では貴重なものだったからそれが青国の収入源になった


白国は湖の西側、天湖の一族が住む国

ここは標高の低い山が連なる森の国

人々は森の恵みで生きていたわ

そしてその西にはとても大きな大国があったの

西の大国は白国の脅威でもあり、また新しい知識をもたらす恵みの国でもあった


湖の北に国は無いの

ただ湖にせり出した高い高い山があるだけ

その山は湖族の信仰の対象でもあるの


この三国は常に戦争が絶えなかった


豊かな朱国の土地がほしくて


白国と青国は手を組んで、朱国を攻め続けていたし、朱国は豊富な資金力で大陸から武器を買い、白国と青国を迎え撃つのに国力のすべてを費やしていた


長い長い慢性的な争いの末、いつの間にか湖族の人口は半分に減ってしまった


朱国も青国も白国も、元はひとつの湖の民族


自分たちのしてきたことの愚かさに気づいたある時代の三人の王は話し合い、長い戦争を終わらせるためのひとつの解決策を見つけたの


それが移動国家よ


それはね、三つの国が二十年ごとに湖を中心に反時計回りに住む土地を変えるの


朱国に住む鳥湖は二十年経ったら国民全員が青国に移り住む


青国に住む龍湖は二十年経ったら国民全員が白国に移り住む


白国に住む天湖は二十年経ったら国民全員が朱国に移り住む


二十年ごとに国家が住む土地を交換するの

それを延々と繰り返すの

そうすればどの湖族も平等に朱国の豊かな土壌の恩恵にあずかれるわ


え、どうして二十年かですって?

そうねぇ、これは私の想像だけど人の寿命を考えるとどこかで豊かな朱国で過ごすことができるからじゃないかしら?


もちろん、子供や老人、病人なども含めての移動は大変な労力を伴うわ

家財、食糧、家畜…

国家機能全ての移動よ


それは中心に湖があったからこそ出来たことよ

移動の途中の水の心配をしなくてもいいし、湖が育てた豊富な魚介類は旅の食糧の足しになった


そして移動国家の成立はその時の朱国の王の決断があってこそ


だってそうでしょ?朱国で暮らす鳥湖族は豊かな土地を手放すことになるんだもの


もちろん鳥湖の国民は大反対だった

それを朱国の王は丁寧に根気よく説得したの


もともと湖族は神に使える民族

神とは湖そのものよ


湖の神はこの世の悪しきもの全てを飲み込んで世界を守っていると信じられていた


その結界として北の山と湖族は存在してると思われていたの


その時の朱国の王は湖の神への信心がとても厚い人だった


たとえ朱国を離れたとしても湖のほとりで暮らす限り湖の民としての責任は果たせると王は考えていた


そして何より長年続けていた戦争を終わらせたかった




さあ、ここからが本題よ


この鳥湖族、龍湖族、天湖族にはそれぞれ違う王の花嫁の選び方があったの…



ねえ、あなたはどの湖族の花嫁選びが聞きたい?


全部は無理よひとつ選んでちょうだい


選べない?

じゃあこうしない?


ここに四枚のトランプがあるわ

もしあなたがスペードのAを引いたら龍湖族、クラブのAだったら天湖族、ハートのAだったら鳥湖族

ダイヤのAだったらお話はなし


ホホホ、冗談よ、ダイヤは外しましょうね

あなたったらすぐ怒るんだから


さあ、引いてちょうだい


あら、ハートを引いたわね

鳥湖族の花嫁選びね

ある意味これは一番…


いえ、この話をどうとるかは聞いた人の感性にまかせましょう



では始めるわ

鳥湖族の王の花嫁選びと、選ばれた花嫁のお話を





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ