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王の花嫁  作者: 川本千根
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プロローグ1

さあさ、体が温まるから紅茶をお飲みなさい

それにしても驚いたわ

こんな山奥の山荘に若いお嬢さんが訪ねてくるなんて


そう、瑠璃が池にハイキングに来て迷ってしまったの

多分水沢の十字路を間違って南に進んでしまったのね


ハイキングに…あなた…お一人で?

あなた…まさか…


いえ、そんなに怒らないでちょうだい

数年に一度瑠璃が池はそういうことがあるのよ


あなただってさっき、私を山姥扱いしたじゃない

免許証や松○屋のカードをを見せて、やっと信用して部屋に入ってきたんじゃない

ふふふ、お互い様よ


でも、雨が本降りになる前にここを見つけられて良かったわね

この山荘は父が残してくれたものなの

父は瑠璃が池が大好きだったの

父はそこそこ名のしれた画家よ

まあ、お若い方はご存知ないかもしれないけれど


一番上のあねが東京の自宅を相続して、二番目の姉は父の絵を沢山もらって、わたしはこの山荘を相続したのよ


明日はここで二人の姉と久しぶりに落ち合うのよ

私は一足先に昨日来たの


あなた、これからどうする…の?

えっ、ペンション清風荘の予約を取ってあるの

あそこのオーナーなら知り合いよ


ここから車で10分くらいだから、電話して迎えに来てもらいなさいな

朝倉の別荘って言えばわかるはずよ


どうだった?

そう、雨が小降りになったら迎えに来てくれるって、良かったわね


私ここには本を読みに来るのよ

だからテレビを置いてないの

ごめんなさいね、退屈よね

沢山本を持ってきたから、あなたも何かお読みになる?


そう、活字があまりお好きじゃないのね

トランプならあるけど、二人じゃババ抜きをしてもすぐ終わってしまうし…


そうだ、私がお話を聞かせてあげましょうか

私ボランティアで本の読み聞かせをしているの

やだわ、そんな、桃太郎とかシンデレラなんかじゃないわよ

ほほほ、あなた面白いわね


ところであなたはおいくつ?

そう、二十歳なの、いい年頃ね

じゃあ、私のとっておきのお話をしてあげる




これは私が娘時代にお祖母様から聞いた話なの

『王の花嫁』ってお話よ

お祖母様は女学校時代のシスターに聞いたらしいの


シスターは本当にご機嫌のいい時にしかこの話をして下さらなかったからお祖母様たちはシスターのまえではうんとお行儀よくしてたらしいわ


お教室や礼拝堂をいつものピカピカにし、お友達同士喧嘩もせず、英語の単語や聖書の聖句もいっぱい覚えた

そうしてやっと聞けたお話よ


それはね大きな湖を取り囲む三つの移動国家の特徴ある王の花嫁選びのお話よ


あらっ、目が輝いてきたわね

興味が出てきたのね

あなたわかりやすい人ね

さっきまでうんざりした顔をしていたのに、ホホホ


えっ、移動国家って何かですって


それを今から説明するわね





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