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【詩集】拙くも進もうとする試み

空腹

作者: につき

 春の川は明らかに流れている。水面は揺れながら花を映す。

 娘と母の二人はわたしに写真を撮れと言った。

 見知らぬ笑顔はわたしを戸惑わせる。

 風は感じないが蝶が黄色くひらひらと飛ぶ。

 わたしは腹が減っているのだった。

 曖昧な霞む陽を見た。

 これらは嘘であり、遊びであり、少々の冒険であった。

 では何が本当なのかと問われれば、それはあの母娘の生活であろうし、何が遊びかと問われれば、それは春の川の気儘な流れであったし、何が冒険かと問われれば、それは紋黄蝶のつかの間の生であった。

 わたしの唯一つの実感であり、生の実際は、腹が減っていることだけであった。




(説明的な蛇足)


昼食を取る店を探して、川の近くを歩いていると、観光客らしき母と娘に出会った。彼女らは、川岸に生えている満開の八重桜の前でわたしにシャッターを切って欲しいと頼んだ。彼女らは嬉しそうであったし、わたしもそれでいいのだけれど、それはわたしの実際ではなかった。わたしは空腹であったから、それが全てだった。わたしの外界に起こる様々なことを遥かに超して、わたしの内面からの欲求が起こる。それだけが確かなように思える瞬間がある。 

お読み頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 紋黄蝶の束の間の生が冒険、というところがとても好きです。 風景の中にはさまざまな生があって、それぞれの現実を生きているのですが、実感できるのは自分のものだけなんですよね。その中でも「空腹」は…
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