居場所がない
週に1回の病院通いが二週間に1回になったのは、会社をやめてから半年ほどした頃だった。昼夜逆転の誰にも会わない生活を送る僕に、両親の態度は当初と少しずつ変わってきただろうか。
人に会わない生活は僕にとっては安らぎだ。しかし、会社をやめた直後とは違い、近頃は安堵以外の気持ちも芽生え始めた。
このまま、僕はどうなっていくのだろうか。
毎日部屋に籠る僕に、両親は昼間に外に出ることを勧めた。母親は散歩でもしてみたらどうか、といい、父親はバイトでも始めてみたらどうだ、と言う。
父親の声には、半年も休んだのだから、という響きが含まれていた。
働いていた頃の貯金があったから、家に生活費を入れてはいたが、やはりいい歳の男が働いていないのいうことは、両親にとって気持ちのいいものではないのだろう。
深夜にコンビニに行くだけの生活であったが、半年も過ぎれば時にはご近所さんに出会ってしまうこともあり、コソコソと会釈する僕に、ご近所さんは訳ありだと思ったのかもしれない。
安息の地は、徐々に狭められていく。
ただなんとなく、頭の中には、一寸先は闇、という言葉が思い浮かんだまま消えない。父親に言われるまでもなく、このままではいられない、はやく復帰しなければという焦りが四六時中頭の片隅にこびりついた。それでいて何もしようと思えないことが、ひどく不甲斐ない。交通事故にあっている最中に感じるというスローモーションのように、ぶつかる、ぶつかると思いつつも止まらない、止められない。破滅に向かう坂道を転げ落ちる自分を自覚しながらその未来を回避できないようなもどかしさをずっと感じる。
首がゆっくりとしまっていく。