プロローグ
標的は大沼から姿を現した。確かに格好は美少女だが、足がすくむほどの巨体だ。髪の毛が6メートル近くあるだろうか?身体はその5倍くらいあるかもしれない。肩まで沼に浸かっているから憶測でしかないが。
「ぶっ潰せ!!」
玄武軍団長の能登大輔のかけ声により、軍団員はいっせいに鉄砲をぶっ放った。
「コイツが沼御前か」
大輔は目の前の巨体な美女のモノノケと来る前に手渡された報告書に書かれた絵を見比べた。実物の恐怖は圧倒的だった。こんな化け物を放っておけるわけがない。なんとしても潰しておきたい。
都から北上郡にかかる遠征費用はバカにならない。失敗すれば、確実に軍団長からは落とされるだろう。しかも、今回は国が力を入れてバックアップしているために、失敗の記念には左遷させられる可能性がある。逆に成功すれば出世の大チャンスだ。次期兵部大臣となるのは間違いない。それを見越して現兵部大臣は能登大輔をこのプロジェクトの軍団長に指名したのかもしれない。いずれにしても、この戦いが大輔にとって今後の明暗を決める大事なものであった。
突如、沼御前がうめきだした。団員の鉄砲の玉が沼御前の胸板を射抜いていた。暗闇の中であるため、はっきりと確認できないが流血が激しいらしい。ウギャアアアアアとけたたましい声を最後にあげて沼御前は大沼に没していった。
その瞬間、たちまち水底が雷電のようになりだした。黒雲が不気味に低く垂れ下がり、沼から湯煙が立ち上ぼり天を覆ってしまった。
何事かと大輔は思った。しかし、こんなことに驚いている場合ではないし、驚いているとこの仕事は勤まらない。それより戦いに勝ったのだ。ようやく俺も兵部大臣になれると大輔は勇みだった。