捕獲
「失礼します。」
ノックの音の後どこか冷たさを含んだ女性の声が聞こえた。
物部は、爪を研ぐ手を止めるとどうぞ、といった。
長身でスラリとした女性秘書、荒瀬が入ってきた。
「大臣、ダウンタウンで新たな覚醒反応が見つかりました。」
「ほお。新たな覚醒反応ね。それで、捕獲には?」
「特務感を派遣しましたが、未だに情報はありません。」
「軍本部の真下…。そういえば、今夜は掃除屋が来るといって神月を派遣しましたね。」
「ええ…。彼女も見つかっていません。」
「それは…少々厄介なことに…。」
物部は、不機嫌そうに爪ヤスリを触ると指先から血が流れ出た。
「おやおや。」
次の瞬間、指先から傷は消えていた。
物部が不敵に笑う。
「戦闘の後も見られたことから、的に捕獲された、と考えるのが妥当かと。」
「捕獲ですか…。それは困りましたね。仕方ありません。真田大佐を呼んでください。」
「わかりました。」
荒瀬は、秘書室に向かうと姿を消した。
それを確認すると、物部は狂人のような笑みをうかべる。
「そうかそうか!ダウンタウンに逃げたゴミがいたな。あいつが覚醒したか!氷室!ハハハ…!楽しくなってきましたね!!」