奇襲
風が冷たい…。
俺は、下にいる潤を見る。苦しそうな顔をしているがまだついてこれそうだった。
俺たちは、ビルの壁を命綱なしで登っていた。元さんの作った手袋の性能を信じて。
念の為にワイヤーを持ってきているかこのぶんだと使わなくて済みそうだ。
しばらくすると、1つだけ格子の緩んだ窓があった。俺は力を入れて格子を外すとスルリと中に侵入した。息を整えていると、顔を真っ赤にした潤が入ってきた。
「たくっ…。俺は力仕事を苦手なの!」
「仕方ないだろ。いいから、作業に取り掛かろう。」
「やっと、俺の出番か。」
さてさてどれかな…。潤がブツブツ言いながら歩いていく。
今回は、軍の査察だった。査察といえば聞こえはいいが実際はクーデターのタレコミがあったから真相を調べろといものだった。
潤がUSBを差すとキーボードを叩き始める。
「なぁ。どうして掃除屋なんているんだろうな。ネオシティのことは、ネオシティで片付ければいいのに。」
「うーん…。」
潤が頭をかく。
「まあ、ネオシティから仕事がないと俺ら飢え死にしちまうしな。なんともいえねぇよ。」
「そうか…。」
ピロンと、鈴の音のような音がする。 よっしゃ!と潤がガッツボーズをする。
「よし。早くここから…。」
突然けたたましい警報がなり、光が俺たちを照らした。
ヘリが空を飛んでいるのだ。
「はめられた!」
「にげるぞ!このビルは中は筒抜けだ。一気にワイヤーでおりよう。」
「その後は!」
「それからだ!いくぞ!」
フロアへのドアを力任せに開ける。
幸い、電子ロックはかかってなかった。
その時だった。目の前の壁が奇妙に収縮すると爆発した。
頭を守るためそのまま倒れ込む。
むせながらも顔をあげると、そこには真っ赤な炎と同じような髪をしたライダースーツの女がたっていた。
「やっと見つけたわ!掃除屋!」
「ウェット!たて!」
仕事中基本的にコードネームで呼び合う。私生活に影響を及ばさないためだ。
「そんなことさせるわけないじゃない!」
女は無気味に笑うと手をにぎりしめる。突然目の前の空気が収縮してキーと音を上げる。
「やばい!飛べ!」
俺と潤は空洞へ飛ぶ。
飛ぶ間際ワイヤーをうったがこの落下速度では休み役に立つかさえわからない。
「そうね!下はいい判断ね。いいわ!行きましょう!」
天井と床からキーと音がすると大爆発を起こした。
「嘘だろ!」
俺と潤はダウンタウンの闇へと落ちていった。