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こえ部っ!  作者: 四ノ宮晴樹
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放送部、入部。

「……え?」

「いやぁ、声が綺麗だったからさ。放送部に入って見ない?部員少ないんだよねぇ」

頭をかいてその女性は言う。

「嫌だと言ったら?」

「ここに君の歌声が入ったミュージックプレイヤーがあります」

「分かりました入ります」

そうしなければだめだ。社会的に。

「よろしい」

長い茶髪を耳にかけ、

「私は2年、加賀沙織。現放送部部長です。沙織んってよんでね!」

「沙織ん……先輩?」

「まあそれでもいいでしょう。もう帰るんでしょ?じゃあ明日学校で。」


まるで嵐のような人だった。



俺が毎日通っている学校は南葛城高等学校だ。

南葛(みなかつ)は中高一貫校の私立で、俺は外部生にあたる。

そこの1-2が俺のクラスだ。

正直言って俺のクラスに俺の友達と呼べる奴は居ない。


――誰だいまぼっちって言った奴。

隣のクラスに幾らかいるだけだ。

毎日を無為に過ごし、帰宅部としての仕事を全うしている日々である。

もう6月になるのに、部活に入っていない奴は珍しいと言える。

そこに(くだん)の勧誘である。入部届をもらい(先生に今頃かと怒られた)、提出する。

これからどんなドキドキワクワクが待っているんだろう!

などとはとうてい思わない。

「最悪だ。」

そもそも部活というシステムがどうかしている。

英語で言うとclub's systems are crazy.

何か違う。

というかどうでもいい。マカロンもどうでもいい。



授業時間も適当に過ごし、迎えた放課後。

俺は放送室の部室である部室棟3階の1室の前で右往左往していた。

入るべきか、否か。

よし入ろう。と覚悟を決め、ドアノブを握った。

「こんにちぐほっ!?」

ドアノブが俺の腹をえぐった。誰かが内側から開けて勢いが増したからだ。

「あっ。昨日の子だ!やっと来た!」

沙織ん先輩、つまり部長である。

「あ、あの、よろしくお願いします。」

「うんうん!よろしく!ささ、入って入って!」

部長にうながされ、部室に入る。

「みんな!この子が新入部員の……誰だったっけ?」

「おい加賀、聞いとけよ」

メガネの先輩が苦笑いで注意する。

「あはは~。ごめんごめんご」

「あの、俺、遥って言います。宮本遥」

「可愛い顔と名前じゃない。ッ私好みね!」

そう言ったのは部長とは対極のようなクールビューティーなお方だ。

性格はどうか分からないが。

「俺は藤本だ。」

メガネの先輩が短く自己紹介をする。

「僕は塚原っていいます。会計やってます。」

この人はなんと言うか顔立ちがかなり整っていてイケメンなのだが、

ずっとへらへら笑っていて変にこっけいに見えてしまう。

「私は六月一日(さいぐさ)薫。よろしくね、遥ちゃん」

先ほどのクールビューティーさんだ。いつも片手に本を持っている。

「他にも部員はいるのだけれど。今日は居ないわ」

「うん。みんなで12人なんだよ。でも高二がほとんどだから引退しちゃうんだよね~。だから、今やってる活動は勧誘ってわけ。」

「加賀がやってるのは拉致だな」

「さおりんの得意分野だもんね」

「なにをー!失礼な~!」

これはやばい。帰らなければ。

「宮本くん、帰らないで欲しいな。君はもう放送部員だろう?」

「嫌だ、こんな空間にいたくねぇ!」

拉致られた身になってみろ!

「まあそんな堅いこと言わずに。ジョークだよジョーク」

「至って真剣だったぞ……」

芝居上手過ぎるだろ……

「あと3人ぐらい集まれば十分かしら。」

「と、いうわけなので、きょうはここでゆっくりしていって!」

「どういうわけだよ……」



俺のために用意された席に、なんとお茶まで運ばれてきた。

「文化祭とか体育祭の時以外はこうやって部室でお喋りしたりするのがうちの活動だよ~」

「あと設営とかするわね。」

「そうそう!」

思い出したかのように相づちを打つ部長。

「実際加賀ってなんもわかってないよな」

「僕もそう思うよ」

お茶やお菓子を口にしながら口々にしゃべる。ほんのりした空間が漂ってきた。

最初は上手くなじめるか不安だったのだが、案外行けるようなものである。

そうこうしてる間に、

もう最終下校時間になった。最終下校時間の時も放送するのが学校の決まりのようだが、なんせ最終下校時間まで残った覚えがないので、初めての経験なのだ。

母さんに聞かれたらなんとこたえるべきか。まあ遊んでたっていったら満足するだろう。俺の親だし。

ぼんやりとこの後のことを考えながら、みんなと一緒に違う校舎にある放送室の方へ移動する。

そこは、普通の教室の1/4ほどの大きさの狭い部屋だった。

部屋の奥には書類の入った棚、右手には大きなコンソールが置かれ、実際に入れるのは10人がやっとという具合だ。

部長が先に入り、放送区域を指定して、音量を入れてからコンソールのスイッチを入れ放送を開始する。

「六時二十分になりました。校内に残っている生徒は速やかに帰宅する準備をして学校を出ましょう。」


部長の声は、まるで清流のような響きをもっていた。

というと少し変だが、聞き込まれるような声であったことは確かだ。

放心状態のような症状に陥っていると、藤本先輩がこっそり耳打ちしてきた。

「すごいよな。加賀の声。あれで頭良かったら最高なのにな。」

と言ってきた。仰るとおりである。

今言ったとおり、部長は少し頭が悪い。一学年二百人の中で下から数えて二十番ぐらいである。

そのため、良く補習にかかって放送部に顔を出せないことが多い。らしい。

放送が終わり、みんなも帰る準備をしようということになった。

帰る時は同じ方面の人は一緒に帰るという不文律が存在しているようなので俺も一緒に帰ることになった。

この学校は駅から徒歩二十分ほどなので、歩くか市営バスで駅まで向かうことになる。

俺はいつも歩いているので全員で歩くという放送部に順応してると言える。のか?

駅からはみんなバラバラに帰るので、そこまでが放送部の活動内容となるようだ。

そうこうしている内に駅についてしまい、みんなと別れ帰宅した。

家に帰って、思う




放送部も、案外悪くないかもな、と。

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