その11
彼らが院に帰ったのは、ロジーナがそう決意してから一時間後だった。さすが奎婁の足といえる時間短縮である。
「便利なものだな、天霊というのは」
召喚系の紋を持たないシュールが、アルバートに感心する。イルも伸びをしながら満足げだ。すっかり苛立ちは収まったらしい。
彼らの天霊のイメージは、一番身近にいるビルの天霊に固まりがちだ。こういう非戦闘型天霊との対面は、今回がほぼ初めてだったといっても過言ではない。事実、全ての蒼藍の中でも、非戦闘型と契約できている者はロジーナで二人目という奇異さだ。
「アルバートは奎婁の中でも、自慢できる性格だもの」
アルバートを還したロジーナが、ふんと胸を張った。天霊の性格は人の性格のように平均的なものは無く、あとはどんな個体と契約できるかというくじ運にかかっている。そこから考えると、彼女はそれなりに運のいいほうのようだ。
伸びをしていたイルは、カバンを持った。
「さ、入るか」
みながそれに同意して蒼春院の入り口に向かった。そのときだった。
ガガガ、と地を削る音を立てて扉が開いた。取っ手のないこの扉は、開くときにどうも地面とこすれるようだ。開いた入り口から、一人の男が姿を現した。
その男の見目は、爽やかの一言だった。それも並みの爽やかさではない。少女マンガに出てくるヒーローのような、健康的かつ魅力的な爽快感を持つ、麗しい外見だったのだ。その男は蒼藍たち一行を見て、ふわりと笑いかけた。
「お帰り」
呆然とする彼らを代表して、ロジーナが尋ねた。
「・・・誰ですか?」
つづく




