その7
そう理屈はわかっているのだが、納得ができるわけではない。ロジーナは兄をにらみつけた。なかなか攻撃的な目線だ。青色の瞳が、しっかりと兄の瞳をとらえていた。
「信じられないなら信じなくていい。でもあたし達は、人命優先で動いてるの。あなた達が自分を人間だと思うなら、少なくともあたし達は味方だわ」
予想していたよりも強いロジーナの言葉に、兄は何も返せなかった。またそうなってしまっては、無駄に危険区域にいる必要もない。村人たちは渋々、というより嫌々ロジーナの指示に従った。
あと例の兄弟二人だけになり、ロジーナはモグラをちらりと見る。先ほどの天霊はもう居らず、緑色の何かに縛られていた。よく見ると、後ろの広がっていた水壁もなくなっている。
―――イルさんとシュールさん、もう倒したんだ
二人の強さに感心する。さきほど若者三人で一尾倒したモグラを、二人で二尾倒したのだから、それもひとしおである。そんな彼女が二人を立たせようとしたその時、兄弟の顔が青ざめた。
「おねえちゃん、うしろ!」
弟の指摘に振り返ると、モグラがこちらに向かって岩を吐き出していた。高さがあるので、自分たちに直接突っ込んでくることはないが・・・。
―――崖に突っ込んだら、崩れてくる!
ロジーナの懸念どおり、勢いよく岩が崖にぶつかれば、その岩と瓦礫がふってくることになる。下に人がいれば、ひとたまりもない。
「走って!」
ロジーナの掛け声に、反抗もせず兄弟は走り出した。二人を逃がしたロジーナは、後ろにそり立つ崖を見上げる。岩とすれ違った瞬間、兄が振り返った。
「あんたは・・・っ!」
言いかけたところで、彼の隣から水が噴出した。そして大きな音とともに、砂の混じった強風に襲われる。岩が崖にぶつかったのだ。二人は思わず目を瞑った。




