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その5
口を蔓で縛られてバタバタしているモグラを見ながら、イルが目を丸くした、
「?どこに向かって吐いてんだ?」
シュールもそれに珍しく同意したようだが、ビルとしてはほっとする。今現在、あの攻撃をされていたら、イル一人しか戦えず、怪我をしていたことは目に見えている。
同時に魔法を使うことは可能だが、力がものをいう捕縛系魔法との併用は、かなり大変なのだ。そのため、一般的には「捕縛系魔法使用時には、ほかの魔法は使えない」といわれている。
「どちらにせよ、被害がないなら・・・」
そう言いかけたとき、ビルはふと思い出した。
崖側には、多くの村人が避難していた。
そしてそこには、入ってきたばかりの新人を遣わせたばかりだった。
「まさかっ・・・!」
先ほどの瓦礫のせいで、ビルたちには崖側が見えなくなっている。しかし、背の高いモグラなら、余裕で見通せる距離だろう。
あの一撃の狙いは、間違いなくひ弱な村人とロジーナだ。
「イル、崖側に水を!ロジーナさんたちがあちらにいるんです!」
「マジかよ!」
イルは慌てて足を踏み鳴らした。水の紋が発動し、彼が唱える。
「『水陰流』!」
勢いよく水が噴出したのと同時に、奥で大きな何かが崩れる音がした。
盛大な砂煙を前に、切なく水が止まった。




