その4
「結界外に一尾でもいれば、結界の意味はないだろうな」
「おまえさぁ、すんだ事をグチグチと・・・ケンカ売ってるわけ・・・?」
「俺から貴様に提供するものなど何一つないが?」
「いい加減にしてください、二人とも」
ケンカするのもTPOを考えるべきである。いつでも険悪な二人に、ビルは嘆息をした。それだけで、彼の怒りが二人に伝わる。
怒られて不機嫌になった子供っぽい二人を放置して、ビルは蜥炎に呼びかけた。
「ありがとうございます、交代してください」
『ああ、悔しいが儂では歯が立たぬ』
そういって、彼はモグラをにらんでからビルの足元に再び開いた門を通じて元の世界へ戻っていく。
いくら同じ紋を使用するとしても、取り出す「門」が違うため、天霊を変える場合は新たに紋を発動させる必要がある。そのため、ビルは一度紋を消した。
一方、蜥炎がいなくなり、多少手持ち無沙汰になったのだろう。子モグラは、唐突に向きを変えた。シュールがあわてて左胸をたたいて紋を発動させる。
「逃がすものか、『蔓纏捕縛』!」
彼の前に現れた葉の紋から、先ほどより多い蔓が飛び出してきた。蔓はモグラに絡みつき、その動きを封じる。じたじたと暴れるモグラに、シュールは体制を必死で保つ。
「ビル、早くしろ!」
シュールが言ったそのときだった。前進を封じられたモグラが、体を大きくのけぞった。何度も退治している三人は、それが何の動きかわかる。モグラが使う一番厄介な攻撃である、大岩を吐く攻撃をするときだ。本当に小さな子供なら使えないのだが、大人に近づく上で身につけるものとされる。
そのため、これをできないと踏んでいた三人は驚いた。慌ててシュールが蔓で口を塞ぎにかかるが遅く、巨大な土の塊を勢いよく吐き出される。が、それは三人がいるのとはてんで方向違いで、崖のほうに飛んでいった。




