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蒼藍~反魔道士思想の村~  作者: 環田 諷
最後のモグラ
53/70

その3

「必要ありませんよ」


 妙に余裕を見せるビルは、ぐるぐるマークの眼鏡を外した。開いているのか解らないような目が、姿を現す。更に左の前髪を掻き分けた。もう眼前に瓦礫は迫っている。彼は避けずに、クスリと笑う。


「『発動・光折(こうせつ)の盾』」


 彼は目を大きく開いた。途端に、目の前で瓦礫が粉砕される。隠れていた瞳には、はっきりと魔方陣が浮かび上がっていた。武の魔法ウェポンでありながら、物体を具現化させない特殊な紋、防御の紋である。

 契約者の安心を認識した蜥炎せきえんは、もう自分を見ていないモグラに向かって、灼熱の火を噴いた。そして叫ぶ。


なんじの相手は儂なるぞ!』


 モグラは祝融のほうを見ると、先ほどと同じような瓦礫を連続で吐き出す。しかしすばやい祝融に当たることはない。尖った岩が、次々と地面に突き刺さった。

 不意に、後ろの水壁が消える。イルが魔法を解いたのだ。


「わりぃ!時間食った!」


 バタバタと羽音を立ててイルが姿を現した。続いてシュールも走ってくる。蜥炎とモグラの戦いを一瞥すると、シュールが呟く。


「結界などさっさと解いてしまえばいいものを。ビルの苟芒こうぼうなら一発だったろう」


 もちろんこれにカチンときたのは、村人に気を遣ったつもりで結界を張ったイルである。


「うっせぇな!お前がさっさと結界張ってりゃあ、『水壁(フォール・ウォール)』も必要なかったんだよ!」


 イルやシュールの使う発現系魔法には全てに結界技が存在する。使える使えないに個人差があるのは確かだが、少なくともシュールは葉の魔法プラントの結界魔法は使える人間だ。しかし残念なことに、そんなことで反省するほど、この男は大人ではなかった。

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