その12
一方、神扱いをされた二人は、いち早く村の奥にたどり着いた。ぱっと状況を確認する。避難勧告を無視した村人達が、モグラに襲われて悲鳴を上げていた。襲うといえど、モグラは「人間」を食らう魔物ではない。ただ暴れたときに生まれた瓦礫で、人々が逃げ惑っている状況だ。
そんな状況に、上空に飛んできたイルは呆れた顔を向けた。
「だから言わんこっちゃねぇんだ」
ぱっと見たところだけで二尾。倒した一尾と足して、目撃数三尾丁度である。
羽をしまったイルは近くの屋根に、壊れる可能性など微塵も考えず、勢いよく降り立った。その衝撃で足元に水の紋が浮かび上がる。が、その紋は先ほどとは比べ物にならないサイズの大きさだった。そしてそれが美しく輝く。
「『水壁』!」
途端に二尾のモグラがいる範囲に、大きな滝のカーテンができる。広がった紋と同じ大きさの区域である。彼が使ったのは結界魔法の一種だ。しかし、この魔法にはすこしばかり欠点がある。おかげで彼は近くの屋根に降り立ったシュールに一喝された。
「馬鹿か貴様!あとの二人が来たらどうするつもりだ!」
「うっせぇ!ジンメイユウセンだろが!」
シュールの懸念に、イルは納得していないのを強調するように、わざわざはっきりとそれを言った。「人命優先」は毎度黄壌から、蒼藍が受ける念押しの言葉だ。実際、フォディズムの村に行くことも多い蒼藍にとって、自分の存在を否定する輩を守ることには矛盾が生じる。そのため、相手の命を軽視しがちになってしまうのもいなめない点があった。
また結界魔法の欠点とは、「一方通行」と「種類制限」というところにある。現状から、イルが「中から外に」、「人間」は移動できるという制限をつけたことは明白だ。するといくら同じ「人間」とはいえ、「外から中に」入ることは不可能になる。
とやかく言っていたイルだったが、最終的には開き直る。
「っつーか、来る前に倒しゃいいんじゃねぇの!」
「ハッ、それは同感だな」
珍しく意見の一致した二人は、結界内から人がいなくなったのを確認する。人がいる状態では、モグラと思いっきり戦うことなんてできない。そのため、二人は人がいなくなるのを待っていたのだ。それからほぼ同時に仮面と目隠しに手をかけて、不敵に笑った。
「「視界が邪魔だ!」」
二人は仮面と目隠しを外して、暴れる二尾のモグラに向かって飛んでいった。




