その5
もくもくと四人が歩いていくと、荒れた土地に出た。今までの道のりも荒れていて、木も草も一本もなかったが、もう度合いが違う。
地面のいたるところに穴が開いているのだ。それもとても大きい穴が。
「もしかして今回の討伐依頼って・・・」
青ざめた顔で、ロジーナがビルを見た。こういう巣をもつ大型の魔物なんて、大体想像がつく。
「はい、モグラです」
笑顔でビルが振り返って答えたのと同時に、彼の後ろの穴から巨大な蛇が飛びだしてきた。いや、東洋の竜に近い姿かもしれない。あれから、手足をとったような姿だ。
モグラ、といっても、ミミズなどを食べる、あのモグラではない。土の竜という文字をそのままに、地中に住む竜の総称がモグラなのだ。
出てきたモグラはそのまま別の穴に頭を突っ込んで、ずるずると弧を描く。なかなか終わらないその様子に、規格外の大きさであることを知った。
はじめて生でみるモグラの姿にロジーナは固まった。彼女はそれが規格外だとはわからないが、想像をはるかに超える巨大さに言葉を失ったのだ。
「相手にとって不足なし!」
そういって初めに走り出したのはイルだった。走り出した彼は、モグラのもぐった穴の付近で、勢いよくジャンプする。同時に彼の足元に、大きな紋が姿を現した。魔道士は魔法を使うときに、魔法の籠められた紋を使用するのだ。
「あれって・・・」
「ええ、イルが第一に使う魔法、『水』です」
「『波紋流』!」
そうイルが唱えた瞬間、地面がゆらりとゆがんだ。波紋流は、地面を水のように液状化させる魔法だ。波紋はどんどん大きくなり、穴が崩れ始める。
「うわぁ!」
まだ自分が使う以外の魔法に不慣れなロジーナは、ゆがむ地面に体制を崩す。後ろにいたビルが彼女を支える。それと同時にシュールが走り出した。
深い地鳴りとともに、振動が伝わってくる。何の音かと考える前に、地面からモグラが飛び出してきた。いきなり地盤が緩んで、つぶされそうになったのだろう。
飛び出してきたモグラを見て、シュールが仮面を上にずらして、ベェと舌を出した。すこしずらした程度のため、口元しか見えない。すると彼の前に、イルの紋とは別の紋が浮かび上がる。ジェシカ以外の仲がよかった研修仲間が使っていたので、それが火の紋だとわかった。
「『燎炎』」
彼の口から豪快な炎が吐き出される。その光景に、ロジーナはぎょっとする。燎炎は火を生み出す技で、火を吐く技ではない。たまたま彼の紋が口の中にあるからというだけだ。火は大きなモグラを包み込み、しかしあまり効いていないようにも思える。
「ばーか!モグラに火はきかねぇよ!聞くのは水だ」
火の熱さにもだえるモグラの前まで走ってきたイルは、ケタケタとシュールを笑った。その間にもだえていたモグラは、再び地中に頭を突っ込む。シュールににらまれ、彼は苛立ったように右足を大きく踏み鳴らした。再び紋が現れる。足を鳴らすのは、彼の発紋の条件のようだ。
「いっくぜ!『水陰流』!」
同時に彼の足元から水が噴出した。水陰流は水を精製し操るという、水の紋の典型技だ。水は彼の指示に従い、モグラの作った穴に入っていく。再び地鳴りが起こる。
ふいに、シュールが振り返った。
「新人、後ろだ!」




