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蒼藍~反魔道士思想の村~  作者: 環田 諷
もぐら退治
40/70

その5

 もくもくと四人が歩いていくと、荒れた土地に出た。今までの道のりも荒れていて、木も草も一本もなかったが、もう度合いが違う。

 地面のいたるところに穴が開いているのだ。それもとても大きい穴が。


「もしかして今回の討伐依頼って・・・」


 青ざめた顔で、ロジーナがビルを見た。こういう巣をもつ大型の魔物なんて、大体想像がつく。


「はい、モグラです」


 笑顔でビルが振り返って答えたのと同時に、彼の後ろの穴から巨大な蛇が飛びだしてきた。いや、東洋の竜に近い姿かもしれない。あれから、手足をとったような姿だ。

 モグラ、といっても、ミミズなどを食べる、あのモグラではない。土の竜という文字をそのままに、地中に住む竜の総称がモグラなのだ。

 出てきたモグラはそのまま別の穴に頭を突っ込んで、ずるずると弧を描く。なかなか終わらないその様子に、規格外の大きさであることを知った。

 はじめて生でみるモグラの姿にロジーナは固まった。彼女はそれが規格外だとはわからないが、想像をはるかに超える巨大さに言葉を失ったのだ。


「相手にとって不足なし!」


 そういって初めに走り出したのはイルだった。走り出した彼は、モグラのもぐった穴の付近で、勢いよくジャンプする。同時に彼の足元に、大きな紋が姿を現した。魔道士は魔法を使うときに、魔法の籠められた紋を使用するのだ。


「あれって・・・」

「ええ、イルが第一に使う魔法、『(ストリーム)』です」

「『波紋流(アース・リブル)』!」


 そうイルが唱えた瞬間、地面がゆらりとゆがんだ。波紋流(アース・リブル)は、地面を水のように液状化させる魔法だ。波紋はどんどん大きくなり、穴が崩れ始める。


「うわぁ!」


 まだ自分が使う以外の魔法に不慣れなロジーナは、ゆがむ地面に体制を崩す。後ろにいたビルが彼女を支える。それと同時にシュールが走り出した。

 深い地鳴りとともに、振動が伝わってくる。何の音かと考える前に、地面からモグラが飛び出してきた。いきなり地盤が緩んで、つぶされそうになったのだろう。

 飛び出してきたモグラを見て、シュールが仮面を上にずらして、ベェと舌を出した。すこしずらした程度のため、口元しか見えない。すると彼の前に、イルの紋とは別の紋が浮かび上がる。ジェシカ以外の仲がよかった研修仲間が使っていたので、それが火の紋(バーニング)だとわかった。


「『燎炎(イラプション)』」


 彼の口から豪快な炎が吐き出される。その光景に、ロジーナはぎょっとする。燎炎(イラプション)は火を生み出す技で、火を吐く技ではない。たまたま彼の紋が口の中にあるからというだけだ。火は大きなモグラを包み込み、しかしあまり効いていないようにも思える。


「ばーか!モグラに火はきかねぇよ!聞くのは水だ」


 火の熱さにもだえるモグラの前まで走ってきたイルは、ケタケタとシュールを笑った。その間にもだえていたモグラは、再び地中に頭を突っ込む。シュールににらまれ、彼は苛立ったように右足を大きく踏み鳴らした。再び紋が現れる。足を鳴らすのは、彼の発紋の条件のようだ。


「いっくぜ!『水陰流(アクア)』!」


 同時に彼の足元から水が噴出した。水陰流(アクア)は水を精製し操るという、水の紋(ストリーム)の典型技だ。水は彼の指示に従い、モグラの作った穴に入っていく。再び地鳴りが起こる。

 ふいに、シュールが振り返った。


「新人、後ろだ!」

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