その4
ガラガラとキャリーケースを引きずりながら、一行は村を出る。キャリーケースなんていう大きな物を持っていかなくてはいけない理由は二つ。一つは直帰するため、もう一つは何をされるか解らないためだ。反魔道士思想の村では、とくに注意が必要になる。過去には、遠征してきた魔道士の持ち物を村の外で全て燃したという事件も起きている。
とはいえ街中と違い、道路整備のなっていない道は、車輪が着いていても大変である。がたがたとカバンがゆれ、横転もしょっちゅうだ。
横転しては元に戻して、というのをくり返すロジーナを見かねて、シュールが彼女のキャリーの取っ手を持った。そのままひょいと持ち上げる。驚いたロジーナは、彼からキャリーを取り返そうと手を伸ばす。
「重いですよ、悪いですよ」
「敬語を使うな、紛らわしいと言っているだろう」
「・・・すみません。でも、本当にいいって」
「確かに重いな」
そういうと、シュールは自分が肩からかけていたカバンを、ロジーナに向かって放った。至近距離だったため、彼女はそれをうまくキャッチする。
「まだそっちのほうが軽いだろ」
「いや、あんま解決になってないんですけど・・・」
「お互いに荷物を替えれば、罪悪感も何もないだろ」
優しいのか自己満足なのか。しかし、彼が気を遣ってくれていることに変わりはない。
「フェミニストなの?」
「思想の話がすきなのか?」
朝の言い間違えを掘り起こして、彼は言葉を否定する。本人的には当然の行為であり、フェミニストなど思想で分けるほどのものではないというのが実際なのだ。
これ以上一緒にいて、とやかく言われるのを嫌がったシュールは、先頭を歩くビルの近くまで足を進める。
「おや、ずいぶんと可愛いカバンですね」
ロジーナのカバンと気付いて茶化すビルに、シュールは辟易したまなざしを送る。言葉も何もなくとも、それだけで言いたいことは充分に伝わったようだ。




