その15
廊下に出た途端、彼は驚かされた。出たとこのすぐ横で、ロジーナがひざを抱えてすねていたのだ。他二名と違い、女性の扱いに慣れていないイルは、どう対処していいのか解らない。が、彼女を放ってさっさとどこかにいけるほど、淡白にもなれない。目隠しの結び目のあたりをガリガリと掻いた。
イルが彼女の真向かいにしゃがみ込む。彼女はそこで初めて、出てきたのがイルだと気付いたようだった。
「何してんだ?お前」
「うっさいわね。ほっといて」
彼女はそう言ったが、イルにだって多少なりとも知識はある。女性の「ほっといて」を真に受けてはいけないと、誰かに昔聴いた記憶があった。
「もうイヤになったか?」
「違うわよ。もうほっといてって」
確かその人は、三回までは真に受けるなといっていたと、イルは記憶している。が、定かではない記憶に頼り続けるのは心もとない。彼はさっさと立ち上がり、フォローだけして出かけることにする。
「わかった。じゃ、一応言わせてもらう。あいつはわざと言わなかったんだ。言ってたら、お前すぐ蒼藍をやめてたろ?仕事しなけりゃ移院はできねぇ。働かねぇ蒼藍はいらねぇんだ。さっさと首になって、お前は魔道士を続けることすらできねぇだろうな。魔道士免許は一生もんだ。剥奪されたら二度となれねぇぞ」
「知ってるわ、そのくらい」
なぜか、彼女は言葉を返してくれた。多少は機嫌が直ったということか?疑問を抱きながら、イルはもう一度しゃがみ込んで彼女に視線を合わせた。目隠しをしているので、彼の目が見えることはないが。
「じゃあわかんだろ、すねんな」
ただそれだけいうと、なにをするでもなく彼は立ち上がった。




