表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼藍~反魔道士思想の村~  作者: 環田 諷
フォディスト
32/70

その13

「反魔道士思想についても知りませんよね」


 ロジーナが首肯すると、ビルはその下に矢印を引いて「フォード・ライン」と書いた。見覚えのある名前に、つい口を挟んだ。

「フォード・ラインって、思想家ですよね?魔道士についての有名な・・・」

「よく知ってますね、そうですよ。彼の思想については、やりましたか?」


 名前を知っていたのは、独学で使った参考書にさらっと載っていたのを、なんとなく覚えていた程度だ。詳しく載っていたわけではないので、知っているのは本当に名前だけだ。それを素直に言うと、ビルは「名前だけでも充分だ」と褒めてくれた。本当にセクハラ発言と外見をのぞけば、彼は理想の上司である。


「彼の思想の代表が、この反魔道士思想なんです」


 そこでロジーナは再び疑問を挟んだ。


「あれ?フォード・ライン自身は、魔道士ですよね?」


 かじっただけの知識なので、その正誤は不明だ。そのため、少し不安になる。


「はい。ですが、彼は魔道士を不平等の象徴としたんです。魔力がない人が言ってもただの僻みですが、発言したのが現役の魔道士となれば、思想として確立しやすいと思ったのでしょう。事実、反魔道士思想は特殊能力民族を中心に深く根付いています」


 魔道士が魔道士批判をするとは、なかなか皮肉な思想だ。

 ほかにもビルはいろいろと教えてくれた。が、簡単に言ってしまえば、みなが持っているわけではない力を、職業として、はたまた国家公務員として扱うのはおかしい、という思想のことである。そのため、それを主義化して、魔道士に頼らず生きるという信念を反魔道士主義「フォディズム」、主義主張者を「フォディスト」と、魔道士たちは呼んでいるのだという。

 この村がフォディストの村だというのなら、すなわち蒼藍そうらんたちは望まれざる客、ということになる。旅館の女将の態度も、あの少年の兄の態度も納得がいくというわけだ。

 思想名や呼び名までは知らずとも、その考えを彼女は稀有けうなことに、聞いたことがあった。が、ここまで如実に行動に移す人々を見たのは初めてだ。

 びっくりしたロジーナの顔をみて、残りの二人はショックを受けたと勘違いした。イルが心もとないフォローを入れる。


「まあ、相手にしねぇのが一番だ。俺たちは仕事さえやりゃあ、もう関わるこたねぇよ」


 確かに特定の人と関わることはないだろう。だが、その思想を持った人たちと関わることは、充分にありえるはずだった。

 ロジーナは思わず振り向いて、ビルに問う。


「あの、こういう事があるなんて聞いてません!」

「あれ?言いませんでしたっけ?」


 平然といつも通りに返してくるビルに、彼女は我慢ならずに泣きそうな顔で部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ