その11
「ええ、そうよ」
剣幕に負けず、彼女は笑顔で肯定した。それを兄は真正面から、ガンをとばして返す。前に抱きついていた弟を庇うように自分の背に回した。兄はちっとも気持ちのこもっていない言葉を続ける。
「弟を保護してくださったことには感謝します。でも、これ以上関わらないでください」
「は・・・?」
弟の視線に合わせるために膝をついていた彼女は、口を開けて固まった。兄は弟を連れて足早にその場を去り、ぽつんと一人、彼女は残される。
二人の姿が見えなくなってから、彼女は思わず憤慨した。
「なっによ、あの態度!」
「うるさい」
唐突にかかった声に、彼女はのけぞって上を見る。声の主は、後ろに立って彼女を見下ろしている仮面である。いつ来たのかはまったく解らなかった。気付いてから数秒送れて驚く。
「うわっ!」
「うるさい」
シュールは悠々と彼女の横を通り過ぎる。あわててロジーナは彼の後を追った。この状況でまた一人残されたら、さびしいったらない。
彼女は自分の仕入れた情報を、口に出しながら整理し始める。自信満々に話す彼女に対し、シュールが冷静に口を開いた。
「やっぱり典型的なフォディズムか」
「フォディズム?」
尋ねる調子で発言したつもりだったが、シュールは彼女の求める回答はくれない。その後宿に戻るまで何度も尋ねてみたものの、ずっと無視され続けて終わった。




