その2
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ここで忘れていたものを色々と説明しよう。
彼女たちの職業にあたる魔道士とは、精神力とも体力とも違う魔力という独特な力を使う職である。魔力は体内にたまっているもので、それを外に出して使うのには、鍛練と才能が求められる。つまり、そう簡単になれる職業ではないということだ。
そして、この国では私営の院もあるものの、一応魔道士は国家公務員に数えられる。そのため、魔道士になるには国家試験を受けなければならない。試験は魔術学から出る筆記試験と、魔力を発動させるだけの実技試験の二つ。この難関をくぐれるものはかなり少ない。しかしそれでも、ここでもらえるのは一年間しか使えない仮免許だ。
きちんとした免許を取るには、さらに三ヶ月の研修がいる。研修中に実践的な魔法を習い、魔道士の常識を学ぶ。全体成績と最後の認定試験の成績の総合結果が認められて、やっと魔道士として社会に出ることができる。そしてそれこそが、最も難しいのだ。実際ロジーナも合格はぎりぎりだった。
早くもJの番になり、ジェシカが申告される場所に向かうことになった。
配属の通達は、黄央院の中央堂で行われる。そこにいる、まあ大雑把に言うと偉い人たちから直接お言葉を賜るのだ。偉い人たちというのは、一生に一度しか会うことすらできない存在である。あくまでも多くの魔道士は、という話だが。
厳格な服装の現役魔道士に呼ばれた彼女は、「んじゃ、行ってくるね」と勇ましく笑う。不安だろうが、憧れの仕事に就けて嬉しいなのは変わらない。わくわくとした感情の方が、彼女の中では強いのだ。
が、帰ってきた彼女の顔は行きとは正反対だった。不機嫌というか、不安というか、とにかく楽しみとか嬉しさとはかけ離れた表情である。ロジーナは小さな声で、どこに配属されたのかを尋ねた。すると、ため息をついてから残念な声でもらす。
「配属、碧空院だって・・・」
たったその一言で、彼女が落ち込む理由を理解した。