その5
彼らの泊まる部屋は三階にあり、エレベーターもエスカレーターもないため、階段で三階まで上がる。こげ茶色の廊下はこの旅館の古さを示していて、修繕工事を考えたことはあるだろうかと四人に思わせた。一応道の中央には、民族的な模様の長いじゅうたんが敷かれているが、それもまた汚れている。
じゅうたんは階段にも敷かれていて、しかしそれは貼り付けるタイプのマットのようだ。貼り付けるタイプはまだ新しいようで、なんだかとても違和感を覚えた。階段を上るとギイギイときしむ音が響く。いざというときにつかまる手すりは、触れただけで折れそうで頼りない。
そんな階段を上がりながら、ロジーナは大きな独り言とも取れる発言をかました。
「なによ、あれ!宿主として最低じゃない!」
あえて聞こえるようにしているのだろうが、なにが理由であれ、心象悪いところに油を注ぐ必要はない。ただ彼女が我慢できなかっただけだ。ビルがそれをフォローする。
「避難するために時間がなかったのでしょう」
「でも、仮にもこっちはお客様よ?神様よ?」
「まあまあ、相手の都合も配慮しなければダメですよ」
いさめられた彼女は、しおしおと落ち込む。落ち着いてみれば、ビルの言うことが正論で、ロジーナの発言は自己中心だったことに。気付く。それからいきなり彼女の顔が青ざめた。
「あ、あたし、すみません、ため口で・・・」
「平気ですよ」
「っていうか、紛らわしいよな」
フォローのつもりなのか定かではないが、ビルの返事にイルがそう追加した。




