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蒼藍~反魔道士思想の村~  作者: 環田 諷
眼鏡・目隠し・仮面
18/70

その11

 その甲斐があってか、三分で支度を終わらせて部屋を出ることができた。廊下を駆け足で抜け、車が通れそうなほど幅のある階段に着く。そこから見渡せる階下には、三人の青年の姿があった。一人はビル、一人は呼びに来た目隠し、そしてもう一人がまだ顔も合わせていなかった、蒼藍そうらんの「仮面」と呼ばれる男である。

 ロジーナは階段を下りながら仮面の姿を観察した。

 仮面はビル同様、格好から妙だった。白いコートも、ハイの黒ブーツも、真っ黒なスキニーパンツも、まったくおかしくはなかった。しかし、彼は室内でありながら紺色の手袋をはめていたのだ。それもかなりぴったりとした革の手袋を、目隠しの着ている甚平がふさわしいこの季節に、だ。さらに彼の体のいたる部分に短く小さなベルトをつけているのである。これに極めつけの仮面とくれば、どう見たっておかしい人だ。

 階段を下りてくるロジーナを視界に捕らえたビルが、他の二人に声をかけた。動きから、おそらく出発をうながしたと見える。すると気付いていなかったのだろう目隠しと仮面が、ロジーナのほうを見た。かろうじて見えているらしい。仮面にいたっては左目の部分が割れて、赤色の瞳が覗いていたが。


「待て、そいつは誰だ?」


 不機嫌そうな視線が、合流したロジーナに投げかけられる。ただでさえ怖い身なりなのに、そんな怖い顔をしないで欲しい。思わず足を止めた彼女に対し、問われたビルはぽかんとした顔で振り返る。


「あれ?言いませんでした?新人が来ると」

「聞いていない」


 やはりビルの言ったかぶりはいつものことのようだ。これなら同じことを何度も聞かされるほうがマシである。しかし今回は少し違ったようだった。


「お前がいねぇときに電話が来たんだよ、能面野郎」


 先ほどまで黙っていた目隠しが、仮面を指差しながらケタケタと笑う。どうやら電話通知のときに、彼は仕事に行っていたようである。もう一つ解ったことは、仮面と目隠しの仲があまりよろしくないということだ。そうでなければ能面野郎はないだろう。

 人間の表情というものは、目元さえ見れれば大体解るようだ。笑われた仮面は不快感丸出しで、目隠しに言い返した。


「ああ、貴様にはこの仮面すら見えてなかったか」

「てめぇ・・・」


 一触即発という二人の間を、ビルが悠々と通った。その行為がどう作用したのか分からないが、二人は互いに舌打ちをしただけで喧嘩が止む。剣呑とした雰囲気に慣れていないロジーナは、思わずホッと息を吐いた。

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