その10
新キャラ登場。
ご機嫌でキャリーの中身を移したロジーナの元に、来客が見えた。ビルが足りないものの有無について聞きに来たのかと思った彼女は、その姿を想像して扉を開ける。
しかしそこにいたのは、ロジーナと年齢的に大差のなさそうな少年だった。普通ならざるその格好に、ロジーナは彼を蒼藍と踏む。とんだ判断基準であることは、彼女も承知である。
彼の格好は、ぱっと見は普通だ。服装を説明するなら甚平を想像してほしい。まあ、この世界でもその姿は一種の民族衣装であり、服装の民族性を失った現代人から見れば、奇妙な格好であることに変わりない。腹部に巻いているさらしも気になるところ。しかし最も異常なのは顔である。彼はなぜか目隠しをしていたのだ。疑うことなく、彼が蒼藍の「目隠し」なのだろう。
まさか、蒼藍には「変な格好をしなければならない」という規則でもあるのだろうか。そんなことを考えて彼女は一人混乱する。
「仕事あるって、ビルから聞いてねぇ?」
奇妙な姿で乱暴な言葉遣いだと、威圧感がかなり生まれる。おどおどしながら、聞いていないというと、彼はため息をついた。怒られるのかと恐怖する。
「やっぱり・・・」
彼の言葉を聞いて、なんだか妙に親近感を覚えた。ビルの口癖に困るのは蒼藍全員一緒のようだ。彼ががしがしと頭を掻いたところで、ロジーナは初めて彼の髪が長いことを知る。
「とりあえず、適当なもん二日分持って一階に集合!五分後だからな」
女の子の旅支度に五分というのもひどいが、ビルのせいにしろ何にしろ、おそらくすでに何分か待たせてしまったのに変わりはない。ロジーナは了解の意だけ伝えると、帰る少年に目もくれずに旅支度を開始した。