その4
この辺りから長く説明が入ります。細かいことが苦手な方は飛ばして戴いてもさほど支障はありません。
完成したのは、院について学んだときにも見た、院の配置図だった。といっても内院と四院だけだが。上手に逆さまに書いてある。ロジーナが何をしたいのか解らずにいると、彼は唐突に顔を上げた。問答が始まる。
「内院や各四院の仕事の違いとかは知っていますか?」
「内院と四院は違うと思いますけど・・・」
「外院と四院の違いは?」
「仕事内容のレベルが違うところですか?」
「内院の仕事は?」
「院同士をつなぐことくらいしか・・・」
そこまでの会話で眼鏡は一息ついた。ロジーナは意外と自分が物を知らないことに気付く。魔道士院について研修で習うのは内院、四院、外院の形態や院の特徴だけで、詳しい仕事内容などは教えてもらえないのだ。その辺は自力で何とかするしかない。
とはいえ移動する七日間の間に、落ち込むだけでなく勉強しておくべきだった。そうロジーナは深く反省する。一方、しばらく考えた眼鏡は、彼女の様子を無視して口を開いた。
「それでは説明を開始しますね」
彼は手に持つマーカーで、黄央院を示した。ロジーナもカバンからメモ帳を取り出す。
「黄央院は別名内院、または魔道士狩り院と呼ばれています。説明するまでもないかもしれませんが、裁判所みたいな機関なのが由来ですね。裁判以外にも、魔道士資格試験の製作、新人の研修監査、新人の配属、魔道士の管理までやっています」
眼鏡はペンを顔の近くに持ってきた。ロジーナは思わず目でその動きを追ってしまう。
「実は国の政治にも深く関わっていて、国家権力の一つとも言われているのですよ」
すごい機関であるということを知っていたものの、そこまで力があるとは、彼女は思ってもいなかった。とはいえ、補足事項によると、実際的に権力を持っているのは七重宝樹だけらしいが。
「それで、黄央院直属の機関が四院なのです」
そう切り出して、北に位置する院を指差した。
「玄冬院は、魔道士警察とも呼ばれています。違法魔道士や魔法使いに制裁を下す機関です。制裁といっても、とっ捕まえて黄央院に送るくらいですけど。そのため、黄央院からの依頼に応じてますね。要人警護なんかもやってます」
話によると、黄央院中央堂まで彼女を見張っていた魔道士たちは、黄壌ではなくこの玄冬院の魔道士だったらしい。ふとそこで、恥ずかしいながら彼女は挙手して質問する。