プロローグ
処女作の書き直しです。
原作とは内容が微妙に違いますが、それは私にしかわかりませんw
――ぽつん、ぽつん。
水が落ちる音が辺りに響く。
――ぽつん、ぽつん。
辺り一面の青く透き通った水の世界に、一滴ずつ水が下に落ちて、音を響かせる。
視界に入ってきたのは青髪で長髪、細身で色白。肌が透き通っていて、触れると今にも消えてしまいそうな美しい女の人だった。
彼女は目を開き、その赤い瞳に涙を浮かべ、まばたきをする。するとその涙は、雫となって頬を伝い、下にこぼれ落ちた。
彼女の足下に広がっている水の表面にその涙か落ちると、また音が辺りに響く。
――ぽつん、ぽつん。
『……助けて、助けて』
その赤い瞳を此方に向けて、囁くように彼女は言う。
そのか細い声は、耳元で囁くように、膜を震わせる。
『……助けて、チユ!』
彼女はそう言うと、次々と涙を零す。
声をかけようかと思った刹那、辺りは光に包まれた。
◆◆◆
「ん……」
少女は布団から起き上がり、目を擦る。
今見た夢の余韻が、まだ残っているようだった。
「あの女の人、懐かしい感じがしました……」
少女はボロボロの掛け布団をふたつにたたみ、病気の母を起こさぬよう、音を立てずにそっと扉に向かって歩く。
ゆっくりと扉を開き外へ出ると、辺りは暗く、赤月と白月の双魔月がこの世界を照らしていた。
そっと扉を閉めた少女のすぐ目の前には、大人でも簡単には乗り越えれない程の大きな煉瓦積みの壁が聳え立つ。
少女は振り向き、その壁を背にする。
双魔月の光が少女を照らす。
癖毛混じりのボサボサな青い長髪。丸くて優しい目をしていて、瞳は瑠璃色に輝いていた。
「綺麗な女の人でした。……あの人は、誰なんでしょうか」
少女はそう呟き、夜空を見た。白月はよりいっそう白く輝き、少女を照らす。
『……助けて、チユ』
少女はあの夢の事を考えると、また彼女の声が聞こえたような気がする。
白月の暖かな光に照らされて、少女は目を瞑ると深呼吸をする。
「……貴女を助けますよ、必ず」
頭に響くその声に答えるように、少女はそう呟いた。