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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある日×十字路×11歳と36歳

作者: タルト3594

ワイズマン『まいったなぁ…どうやら道に迷ったようだ』


今日(こんにち)、この国で、海外から来日し仕事をしている外国人は少なくない。それは彼、ワイズマン・ンドゥヒャムも例外ではなかった。アメリカ合衆国フェニックス州の小さな集落ズタレストゥ村。その小さな村の独自の宗教ルグレケ教の宣教師バババルヴァ・ンドゥヒャムの長男として、ワイズマン・ンドゥヒャムは生を受けた。ルグレケ教の教えはただひとつ、【甘んじるな】というたったひとつの教えだ。それは食事であったり仕事であったり、様々な【甘んじ】てしまいそうな場面でも、決して【甘んじ】てはならないというもので、ルグレケ教の名門ンドゥヒャム家も例外ではなかった。では、そんなンドゥヒャム家のワイズマンが何故今日本にいるのか…。


それは今から25年前の出来事である。


その日ワイズマンは学校で日本の刀、日本刀について熱く議論を交わし、帰路についた。事の発端は友人の『世界一の剣は日本刀』という一言である。


ワイズマンの友人アルムス・ディノクルージェは超がつくほどの日本マニアであった。アルムスの父親が日系人であったこともあり、自宅にはたくさんの日本製の骨董品が飾られていた。そんなアルムスの口癖は『日本最高』だった。しかしワイズマンは日本刀が最高の剣とは思えずアルムスと度々衝突し、その日もまた例外ではなかった。


ワイズマン『日本刀はすぐに折れるから最高の剣ではないよアルムス!最高の剣は我らが誇り高きシェリーザ(ルグレケ教の教典に出てくる伝説の聖剣、英雄ポポビッツの愛刀で破壊の神ゴンゴラを滅したとされている)だよ!』



アルムス『わかってない、お前はなんにもわかってないよワイズマン。シェリーザの射程距離はせいぜい2mやそこらだ。だが日本刀の射程距離は匠の技、刀気によって最大で1kmまでのばすことが可能だ。わかるか?ワイズマン。日本刀が最強なんだよぉおおおおおおお!』


ワイズマン『うわぁあああああん』



と、こんな様子でワイズマンは帰路についたのである。家についてからワイズマンは誓った。


ワイズマン『いつか日本に行ってあのイエローモンキーどもの日本刀、糞ジャップソードをへし折って、アルムスの野郎をギャフンと言わせてやる』


それからワイズマンはとりつかれたかのように日本語を勉強した。あのアルムスに頭を下げてまで…。


全てはたったひとつの信念のもと。


そう、【日本刀をへし折る】という。

たったひとつのの信念のもと。ワイズマンは来る日も来る日も日本語の勉強に没頭した。


そして、それから24年…。


ようやくワイズマンは全ての日本語をマスターし、マスターオブジャパンランゲージとなった。


そんなある日ワイズマンがネットサーフィンをしていると…。


ワイズマン『!?これは!?』


【日本刀の極意教えます】と書かれたそのサイトには、毎年行われている合宿の詳細ものっており、その内容は、一週間三食つきで86万円だった。


ワイズマン『うひゃひゃひゃひゃwwwまさかこんなに早くみつかるとは…。五十年はかかると思っていたぞぉおおおおおおお!!待っていろ、待っていろ糞ジャップソード!!俺が全力でへし折ってやるぅううううううう!!』


それから1年、ワイズマンは来日するために貯金をした。タバコをやめ、酒もたち。ギャンブルもやめて…。


全ては、日本刀をへし折るため。



そして、今にいたる…。



ワイズマン『糞ジャップめ、俺に日本刀をへし折られるのがそんなに怖いか。こんな複雑な道作りやがって』


実は、ワイズマンは既に、近隣住民なら数分で目的地につける距離にいたのだが、異国からきたワイズマンにとっては、それは迷路そのものだった。


ワイズマン『マズいな夜もふけてきた。万事休すか…』


時刻は14時24分である。



ワイズマン『ん?あれは…』


と、そこに前方から小学生の女の子が歩いてきた。


ワイズマン『知っている。知っているぞ…。あれはジャパニーズ幼女だ!!とんだひにいる夏の虫とはジャパニーズ幼女のことかぁあああああああ!!』


そう言うなりワイズマンは走りだした。


しかしそれに気づいたジャパニーズ幼女は臨戦態勢をとり。懐から小太刀を取り出した。


バッ!(小太刀を取り出すSE)


ワイズマン『あれは!?糞ジャップソードの短いタイプ、小太刀!?バカな、このジャパニーズ幼女、この歳でクノイチなのか!!?』


ワイズマンもすぐに臨戦態勢になる。ポケットからコルパァ(ヨーヨーに棘がついたような形をした、ルグレケ教の下級戦士の愛用している武器)を取り出した。


ワイズマン『ジャパニーズ幼女よ、俺のコルパァとその小太刀、どっちが強いか勝負だぁあああああああああ!!』


ワイズマンはそう言うなりジャパニーズ幼女にむかってコルパァを投げつけた。


シュバァアアッ!(投げつけるSE)




だが


ジャパニーズ幼女はそれをスッとかわすと、一瞬にしてワイズマンの背後にまわり、逆手で喉元に刃をあて、小さな声で呟いた。



ジャパニーズ幼女『無心流・風樹(むしんりゅう・ふうじゅ)』ワイズマン『バカな…、なんだ…今の動きは…!?、これが、クノイチ…!?(ドクンッ!)』


ジャパニーズ幼女『無心流の前では、全ての者が無力と化す。で、どうする?まだやる?おじさん…』


ワイズマン(勝てるわけ…ない…)


ワイズマンはコルパァを使った模擬戦では無敗を誇る戦士であった。

だが、実戦というプレッシャーがあったという言い訳などできないくらい、ジャパニーズ幼女は圧倒的だった。


ワイズマン『ははは…大人をからかうのはそれくらいにしてくれぃジャパニーズ幼女。僕は…そう僕はただ、道を尋ねたかっただけなんだぁ…ははは…』


ジャパニーズ幼女『おじさん迷子…?』

ワイズマン『ぁあ、そう、おじさん迷子なんだよ、この辺りにジャパニーズ古武術の道場【狩羅(かるら)道場】があるって聞いたんだけど、ジャパニーズ幼女は知らないかなぁ?』


ジャパニーズ幼女『それ、あたしんち』


ワイズマン『なんと!?本当かい!?僕はなんて運がいいんだ。今日って狩羅源獣郎(かるらげんじゅうろう)先生はいるかな?』


ジャパニーズ幼女『おじいちゃんならたぶんいると思うけど』


ワイズマン『いやぁラッキーだなぁ僕は、まさか源獣郎先生のお孫さんに会えるなんて、ははは…』


ジャパニーズ幼女『案内するわ』



こうして、ワイズマンはジャパニーズ幼女に連れられて道場へと向かっていった。~狩羅道場~


ワイズマン『これがジャパニーズ道場…。(ドクンッ!)』


ジャパニーズ幼女『おじいちゃ~ん、おじいちゃんにお客さんだよ』


ガサガサ


源獣郎『おお~、飛鳥、帰っておったか。んで、わしに客じゃとな』


ワイズマン『はじめまして源獣郎先生。私はアメリカから来たワイズマンといいます。インターネットで先生を知り、先生の修行を是非とも受けたいと思い、この日本に馳せ参じました』


源獣郎『なんと、そうであったか』


ワイズマン『先生、是非とも私を弟子にして下さい』


源獣郎『ワイズマンとやらよ、わしの修行は厳しいぞ、覚悟はよいか?』


ワイズマン『合点承知!!』


源獣郎『ならば何も言うまい、飛鳥よ、わしはこれから一週間このワイズマンと修行にはいる』


ジャパニーズ幼女・飛鳥『食事は?』


源獣郎『いらん!無心流の修行において刀以外の全てのものは雑念となる!!』


ジャパニーズ幼女・飛鳥『へぇ…本気なんだ』


ワイズマン『え…あの…三食つきで86万ってネットで…』


源獣郎『うむ、そのかわり86万のところを1万円にしてやろう、それでどうじゃ』


ワイズマン『それならば…』



こうして、ワイズマンは源獣郎とふたり、修行へとはいった。



だが、一週間後、山から下山したのは源獣郎のみであった。


ジャパニーズ幼女・飛鳥『おじ…いちゃん…その腕…何があったの!!?』


そう問われ源獣郎は小さな声でこう答えた






























源獣郎『熊…じゃよ』



ジャパニーズ幼女・飛鳥『そんな…そんなのって…』


わなわなと体を震わせながら崩れ落ちる飛鳥


門下生『師範代…』


他の者の衝撃はそれ以上である。


ジャパニーズ幼女・飛鳥『彼は…彼は最後になんて…』




源獣郎『痛い…と一言、それがあやつの最期の言葉じゃ…』


ジャパニーズ幼女・飛鳥『いやぁああああああああ!!!!』




薄暗い闇夜の中


少女の悲鳴だけが


虚しく響いていた…。




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