ある日の森の前で
森の近くの大きな湖のほとりに、一人の老人がいる。
束ねられた白髪が風にふわりとなびきながら、髪と同じ色のひげが顔を覆っている。
老人は、太陽の光を浴びて白く反射している湖面を眩しそうに見つめていた。
湖の反対側には二本の巨大な塔が並んでいる。
その塔から、数人の子供が湖岸にそって歩いているのが列になっていた。
子供たちは無邪気に笑ったり話したりしながら、老人の近くまでやって来た。
「こんにちは。大五郎先生」その中でも年長に見られる少年が言った。
大五郎はゆっくり立ち上がった。
「やぁ。諸君」大五郎は子供たちを見回す。
子供たちはこれから何をするのだろうと、好奇心いっぱいの目で大五郎を見つめている。
「おや…、三人ほどいないのう。…まぁ、よい。先に始めるとしようかの…しかしじゃ、ここは湖岸で石ころばかりじゃ。…わしも、もう年じゃてのう…、このようなゴツゴツした石に座っていると…どうも少しお尻が痛くなっての……すまんが、もう少し後ろにある草原で話をしようではないか」
一同はそうして草の上へ移動した。
そのころ、空大、彈、悠は、塔一階にいた。
「…はぁ…わたし…、こんなに…、速く…、階段…降りたこと、…ない」
「何いってるんだよ。悠がビリだったじゃん」
息切れして前のめりになっている悠に空大がそっけなく言った。
「いや…それでも…下りでも、階段を一気に走ってきたんだ。…俺だってキツイよ…」
彈も、悠ほどではないが息を切らしている。
一同は、屋上から階段で降りてきたのだった。
「もう…どうして、大人は、…エレ、…ベーター、使っても、いいのに…わたし、足が腹筋みたいな筋肉だったら、…十個くらい割れてるかも…」悠が足をさすって言った。
「いやいや…お前の足には、どうみても筋肉の、き、もねぇよ…それよりさ、俺たち急がないと…ほら、あのおっさん、俺たちのこと睨んでるぜ」
空大が目をやって言った。
一階の広間で数人の大人たちがこちらを見ている。
「ほんとだ、やばい。…しかしだな…空大、俺はお前と十年の付き合いだが…お前が息切れしたのを…見たことがない気がする…」
三人ははや歩きで玄関へ向かった。
背中に大人たちの、早く行きなさいという刺々しい視線を感じながら。
一階には正面玄関の前には未来塔の飼育下にある犬のポンがいる。
「じゃあな、ポン。」空大はポンの頭を軽く撫でた。
ポンは地面に這いつくばった状態で軽く尻尾を降っただけだった。
三人は玄関を出て湖の対岸へ向かった。




