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シャーロック・ホームズ 「赤いリボンの彼女」

作者: 蒼山ホタル
掲載日:2026/06/03

ホームズは即答した。


「それは愛ではなく支配です。」


沈黙。



シャーロック・ホームズ


「赤いリボンの彼女」


ロンドンの雨の夜。


ベーカー街221B。


ホームズがバイオリンを弾いていると、階段を駆け上がる音が聞こえた。


「ホームズさん!」


若い女性が飛び込んできた。


黒髪に赤いリボン。


どこか不安げな瞳。


「お願いです……彼を探してください。」


ホームズは静かにパイプを置いた。


「彼とは?」


「私の恋人です。」


彼女は震える手で写真を差し出した。


「三日前から行方不明なんです。」


ワトソンは同情した。


「それは心配ですね。」


しかしホームズの目だけは鋭かった。


彼は写真の裏を見た。


そこには無数の針穴があった。


「なるほど。」


「何かわかったのですか?」


女性は身を乗り出した。


ホームズは微笑んだ。


「ええ。」


「彼は失踪したのではありません。」


部屋の空気が凍る。


「どういう意味です?」


「彼は逃げたのです。」


女性の顔が引きつる。


「……逃げた?」


ホームズは続けた。


「毎日百通以上の手紙。」


「職場への監視。」


「友人への脅迫。」


「そして写真への異常な執着。」


女性の肩が震えた。


「愛していただけです。」


「違います。」


ホームズは即答した。


「それは愛ではなく支配です。」


沈黙。


やがて彼女は笑った。


クスクス。


クスクス。


「さすが名探偵ですね。」


ワトソンは背筋に寒気を覚えた。


彼女の瞳には涙がなかった。


「でもね、ホームズさん。」


彼女は立ち上がった。


「彼は必ず私のところへ帰ってくるんです。」


「なぜです?」


「だって。」


彼女は嬉しそうに笑った。


「逃げられないようにしてありますから。」


その瞬間。


ホームズは机の引き出しから一枚の電報を取り出した。


差出人は失踪した恋人。


内容は短い。


> 「彼女が来たら警察を呼んでください。」




ホームズはすでに全てを見抜いていた。


彼女はゆっくりと後退した。


そして最後に微笑んだ。


「また会いましょう。」


赤いリボンだけが揺れた。


その夜以降。


彼女の姿を見た者はいなかった。


ただし――


ベーカー街の郵便受けには、


時々赤いリボンが届くという。


【完】

彼女の姿を見た者はいなかった。


ただし――


ベーカー街の郵便受けには、


時々赤いリボンが届くという。

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