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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【織田家激震、義弟長政裏切り編】

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第79話 長谷川真昼、逃走戦を開始する

「ぜっこうちょおおおおおおおお!」


 雷鳴と雨粒落ちる闇夜の峠道に、鼓膜をぶち破るような絶叫が響き渡る。

 道を塞ぐのは、全身から青色の蛍光塗料でも浴びたみたいに発光している斎藤龍興。

 手にした英霊ボール『キヨシ』が、夜空のお星様みたいに燃え盛っている!


「嘘でしょ……あいつ、ポジティブすぎて発光してない⁉ 暗闇なのに直視できないくらい眩しいんだけど!」


 私が叫ぶと、龍興はニカッと白い歯を光らせて槍を構えた。


「ヒャッハー! 待ってたぜ信長! 今日は槍が振れて振れて仕方ねえ! 貴様ら全員、閻魔大王のところまで送ってやるぜええええ!」


 龍興が踏み込むただの一歩で地面が割れ、振るわれた槍から衝撃波のカマイタチが発生する。

 冗談じゃない、あれに当たったら即死確定の場外ホームランだよ!


「させるかよ!」

「ここは俺たち母衣衆に任せろ!」


 ガキンッ!


 龍興の剛スイングを、左右から伸びた二本の金属バットが受け止めた。

 赤と黒の背中。

 前田又左衛門利家さんと、佐々内蔵助成政さんだ!


「へっ、夜遊びにしちゃあ騒々しい野郎だぜ。美濃を追い出されて芸風変えたのか?」


 又左さんがニヤリと笑いながら押し返す。


「チッ、重い槍だ。だが、この成政のスイングで殴り殺してやる!」


 成政さんも負けじと闘気を漲らせる。


「信長様! 真昼! ここは俺たちに任せて先に行け!」


「狂った奴を仕留めるのは俺の役目だァ! 血飛沫見せろやオラァ!」


「又左さん! 成政さん!」


「早く行け! 振り返るな! 俺たちは必ず生きて帰る!」


 又左さんの怒声に、信長様は短く「死ぬなよ」とだけ告げて、私の手を引いた。


「走るぞ真昼! 脇道を抜けろ!」


 私たちは涙を飲んで、龍興と2人が激突する火花を背に、闇の中へと駆け込んだ。


 街道を外れ、道なき道を進む私たちに地獄は続く。


「落ち武者だ! 殺せ! 剥ぎ取れ!」

「余所者が紛れ込んでるぞ! 突き殺せぇ!」


 ガサガサと草むらから現れたのは、鎌や竹槍を持った農民や野武士の集団。

 普段は大人しい人たちも、敗走する軍を見ると豹変して襲いかかってくる。

 戦国の世の世知辛いリアルがここにある。

 お父さんもお母さんと出会う前は、襲撃される日々って言ってたっけ……。


「ええい、鬱陶しい! どいつもこいつも俺の邪魔をするな!」


 信長様がバットで竹槍を薙ぎ払うが、数が多すぎる。

 キリがない!


「雑魚は任せてくだされ! ここは織田軍のクリーンナップ、柴田権六が引き受ける!」


 権六おじさまが足を止め、丸太のような腕でバットをブン回した。


「権六さん⁉」


「真昼殿、お館様をお連れして先へ! この権六が、こやつらを根こそぎ刈り取ってから追いつきまする! 行くぞ、三左(可成)! 右近(政尚)!」


「「おお!」」


 権六さんは森可成さんと坂井政尚さんとともに、野武士の群れの中に笑顔で突っ込んでいった。


「仕方ありますまい。恒興、我らもここで……」

 

 丹羽長秀さんが立ち止まり、穏やかな笑みを浮かべた。


「左様だな。足止めするなら、ここで」


「長秀さん、恒興さんまで⁉」


「ここで野武士たちを殲滅させます。……さあ、行ってください!」


「真昼殿、信長様をお頼み申す!」


 長秀さんと恒興さんが逆方向に走っていく。


「ふむ。この機を逃さず、若狭の野盗どもも動くでしょう。久太郎、鶴千代。我らはそちらを牽制するぞ」


「「了解です」」


「そんな……! 重矩君たちまで……!」


「真昼殿がいるからこそ、我らは安心して信長様を任せられるのです。……では、ごめん!」


 竹中重矩君の指示に、近習と小姓たちもいなくなる。

 主力メンバーが次々と離脱し、残ったのは私と信長様、それと松永久秀さんだけになってしまった。


「信長様、街道は危険極まりない。……山を越えましょう」


 久秀さんが、先導しながら口にする。


「山? ……朽木か」


「ええ。朽木谷を通る経路がございます。そこには、それがしの友がおりますゆえ」


「久秀さんの友達……大丈夫ですか? この状況の私たちを受け入れてくれるなんて、お人好ししかいないと思うんだけど!」


 脳裏でお父さんぐらいだろうなと思う私の言葉に、久秀さんは悪びれずに肩をすくめた。


「朽木元綱という男ですが……まあ、損得勘定が正しくできる男です。……そうですな。殺しに来る確率のほうが高いでしょう」


「信用度ゼロですかい!」

 

 それでも、信長様は迷わなかった。


「案内せよ、久秀。貴様の悪運に賭けてやる」


 私たちは進路を変え、険しい朽木谷へと舵を切った。


 ***


 金ヶ崎城に残ったしんがり部隊の陣地に、全速力で舞い戻ってきた先鋒の家康軍が通過する。


「……信じられぬ。長政殿が裏切るなど……! あんなに誠実で、脛毛を剃るほど実直な男が、信長様を裏切るなんて……!」


 家康はブツブツと呟きながら、地面を叩いた。


「儂にはわかる……わかるぞ長政殿。恐妻家として耐え忍んだ儂じゃ。妻の恐ろしさ、痛いほどわかるのじゃ……ううっ」


『ボヤくな家康。データにないことが起きるのが乱世じゃ。今は感傷に浸っとる場合か』


 懐のノムサンボールが冷静にツッコむが、家康のショックは大きいようだ。

 立ち尽くす家康に、竹中半兵衛が冷ややかに言い放った。


「家康殿。邪魔です。さっさと退いてください」


「なっ……! 儂も戦うぞ! まだ旭殿の耳に入るような槍働きできておらぬ!」


 決意を固める家康に、半兵衛は扇子で家康の胸元を指した。


「貴方の役目はここで死ぬことではありません。生きて三河に戻り、東の盾となることです。役目を間違えられては困ります」


「ぐっ……」


『キャッチャーなら全体を見んかい。今、家康がすべきは退却のみよ。……はよ行け。……ノムサン、またな!』


『モリミチ……また、酒を浴びあおうぞ』


 英霊ボールたちの会話に、家康はハッと我に返った。

 唇を噛み締め、涙を拭う。


「ウキー」


「秀長が、旭に家康殿がかっこよかったと伝えると言っている」


「秀吉殿……秀長殿……ありがたき幸せ。すまぬ、光秀殿、半兵衛殿! この恩は必ず! 行くぞ忠次、数正!」


 家康は再び走り出し、京の方角へと消えていった。


(あれ? ここで秀長殿たちが死んだら、伝える手段なくね?)


 と、思いながら。


 それを見送った直後。

 ズズズズズ……と地響きが鳴り始めた。

 闇の向こうから、無数の松明と、黄色と黒の縞模様のような威圧的なオーラが迫ってくる。


「来たか……山崎吉家」


 秀吉の呟きとともに現れたのは、山崎吉家に率いられた朝倉軍。

 吉家の左右と上に3つの英霊ボールが浮いていた。


『マツキさんに、ミノルさんに、ヨシオさんか。……六甲おろしの幻聴が聞こえてくるわい』


 モリミチもまた、半兵衛たちの前に浮く。


「逃げられぬぞ、織田のネズミども。我らが朝倉軍団の闘志、ここですべてぶつけてくれるわ!」


 吉家の言葉を合図に朝倉軍が突進する。


『気をつけい、半兵衛。マツキさんはヤクザに殺されそうになった過去があるが、返り討ちにしてマンホールの底に落としたというプロ野球史に燦然と輝く剛の者。中途半端では殺られるぞ!』


「承知です、モリミチさん。みな! 死中に活を求めよ! 全軍鉄砲とバットを構えい!」


 金ヶ崎の闇夜、半兵衛の言葉とともに、轟音が鳴り響いた。

 

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