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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【海賊王に私はなる? 伊勢攻略編】

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第66話 長谷川真昼、釣り船で海戦に挑む

「海だぁぁぁ! ついに来たよ、私の大航海時代! 待ってなよ海賊王、私が戦国の海に新時代を築くぞお!」


 伊勢湾の海岸線。潮風に黒髪をなびかせ、私は自分を昂らせるために意気揚々と叫んでいた。

 信長様率いる陸軍本隊の秀吉さんたちと別れ、私は九鬼嘉隆さんの拠点へと案内されていたのだ。

 私の脳内に、映画『パイレーツ・オ◯・カリビアン』のテーマが爆音で流れている。

 黒い帆をなびかせた巨大な帆船、甲板に並ぶ大砲、そして荒くれ者たちがラム酒を片手に「ヨーホー!」と歌い踊る……そんなパラダイスが待っていると信じて疑わなかった。


 ――が。


「……ねえ、嘉隆さん。海賊の隠れ家って、普通もっとこう……ドクロのマークとか、秘密の入り江とかあるもんじゃないの? なんでここ、近所の漁港って雰囲気なの?」


 案内された場所に広がっていたのは、腰巻き一つで網を繕うおじいちゃんたちと、潮風にたなびくアジの開きの干物の山だった。

 

「今日はアジが大漁じゃ!」


 なんて元気なおじいちゃんたちの声が響き、どこからどう見ても、のどかな「ふるさと納税の返礼品キャンプ場」である。


「ガハハ! 何を言ってやがる姉ちゃん。海で生きる奴に嘘はいらねえ。これが俺の自慢の九鬼水軍よ!」


「いや、水軍っていうか、ただの朝市でしょ! どっからどう見てもただの漁師たちじゃん!」


 私が膝をついて絶望していると、嘉隆さんは波止場に並んだ船を指差した。


「あれが俺たち九鬼水軍の舟よ!」

 

 そこに浮いていたのは、どう見ても数人乗ればいっぱいの手漕ぎ舟や、休日に近所のおじいちゃんが釣りに行くような小さな小舟の群れだった。


「待って。嘉隆さん。大砲は? 装甲板は? 鉄甲船とかいうロマン兵器はどこ?」


「んな重いもん載せたら沈むだろ。海の上はな、軽くて速いのが一番なんだよ!」


「……これで戦うの? これで敵の水軍に突撃するの? 海賊兵はおじいちゃんばっかって、運営さん、これ完全に初期装備設定ミスってない⁉」


「何言ってやがる。みんなジジイになるまで、漁師一筋で生き延びた歴戦の猛者どもだぞ!」


「漁師一筋って断言しちゃったよ、この人! 海賊設定どこいった⁉」


 私が頭を抱えている横で、軍師の半兵衛君はモリミチボールを弄びながら涼しい顔で頷いた。

 

「あながち間違いでもありませんよ、真昼殿。嘉隆殿の九鬼家は北畠に執拗に狙われ、彼は兄君含む一族を殺されています。そんな虐殺から生き延びたのが、ここにいる方たちなのです」


 ……へえ。みんな、過酷な人生送ってたのね。


「ひょっほっほ、儂らの逃げ足、海の上なら任せんかい」

「そうじゃそうじゃ、戦いはまったくからっきしじゃが、魚採りなら誰にも負けんぞお」

「いざとなったら全速力で逃げるわい。嘉隆坊っちゃん残してな!」


「おじいちゃんたち! これから戦に出されるんですけど⁉ 忠誠心も全然ないよ!」


 私が絶叫している側で、半兵衛君と鶴千代君は冷静な瞳で漁船を眺めていた。


「漁師たちの操船技術、小回りが利く早舟、海の上でも精密な守備シフトが敷けます。隙間を縫うようなバント戦法には最適ですよ」


「浮力の計算上も、この寸法が波の影響を受けにくいですね。沈没する角度も予測しやすい」


 鶴千代君が手帳に何やら不気味な数式を書き込んでいく。

 ……だめだ、この一団、感覚が麻痺してる!


『ヘイ! 真昼! ビビることはないぞ! デカい船なんてただの動く的だ!』


 嘉隆さんの懐から、虹色に輝くボビーボールが飛び出した。


『ミーが下剋上を成し遂げた2005年を思い出すわい! 9年連続Bクラスチーム、過去19年中Bクラス18回がジャイアント・キリングを起こす、これこそがベースボールの醍醐味! BUILDING OUR DREAM! 夢を築くのは、いつだって挑戦者の方さ!』


 ボビーが熱く叫ぶと、半兵衛君の懐のモリミチが、どこか遠い目をしてボソリと呟いた。


『……2005年か。あの、日本シリーズでの33-4という伝説のスコアを叩き出した年じゃな。……あれは同じプロとして、見ていて心が痛んだわい……』


 すると私の懐のセンイチが、青白い炎のような凄まじい闘志を噴出させた!


『……フン! 儂はその時すでに監督を辞めてシニアディレクターじゃったからな! ダメージなど微塵もないわ! まったくこれっぽっちも、1ミリも痛くないぞおおおおお!』


「いや、センイチ。声が震えすぎて裏返ってるし、闘志が恨みの色になってるよ⁉ なんか呪いみたいな波動が出てるって!」


『やかましいわ小娘! これはタイガースファンの総意じゃ! あの時の借りを、この伊勢の海で返してやるんじゃ! 全員ボコボコにしてやるわあああ!』


 相変わらず英霊ボールたちの遺恨が深すぎる。

 まあいいや、敵も同じような小舟なら石の投げ合いっこくらいなら無双できるはず……。


 そう自分を納得させて出航したんだけど……水平線の向こうから、波を切り裂いて巨大な影が現れた。


「……え?」


 私の思考が停止した。

 現れたのは、小舟の100倍はあろうかという巨体。

 重厚な木造の装甲に覆われ、屋根の上には櫓が組まれ、そこには無数の弓窓と鉄砲口が並んでいる。

 それは海の上に浮かぶ城みたいだ。


「あれが北畠水軍が誇る大型軍船、安宅船だ。俺たちのように、北畠と敵対する漁港を片っ端から攻撃してきやがる。海賊よりたちが悪い連中よ!」


「あの~、嘉隆さん? これ、漁師VS正規軍になってるんですが?」


 私が絶句していると、巨船の舳先に立つ北畠水軍の総大将と副将が大笑いしてくる。


「ヒャッハッハ! 負け犬の九鬼嘉隆が織田のネズミどもに泣きつき、洗濯桶に乗って遊びに来たか! 俺は北畠水軍総大将、小浜景隆!」


「俺は向井正重! この海は我ら北畠の物よ! 小舟ごと海の藻屑にしてくれるわ!」


 見上げるような巨船から、一斉に鉄砲の銃身が突き出される。


「待って待って待って! スケール感がおかしいって! 相手だけ最新の戦艦じゃん! こっちはお風呂に浮かべるアヒル隊長レベルだよ⁉ 物理演算バグってるよおおお!」


 私の絶叫が響く中、嘉隆さんはニヤリと笑い、ボビーボールを高く掲げた。


「ガハハ! 面白くなってきやがった! 姉ちゃん、しっかり捕まってな。……ボビー! マジックの時間だぜ!」


『オーライ! 派手に行こうじゃないか! ボビー・マジック、プレイボールだ!』


 虹色の光が伊勢湾を包み込む。


「竹中様、この戦で負けたら織田はどうなるのですか?」


「海上から攻撃され、地上部隊は孤立して全滅するでしょう。さらに、尾張の民たちは略奪され放題になります」


「僕たちが死んだらこの戦は敗北。分かりやすくていいですね」


 鶴千代君? 半兵衛君? なんでそんな冷静なの?

 見てよ。嘉隆さんの周りで臨戦態勢整えた人たちを!

 おじいちゃんが杖持って足腰プルプル震えてるんだけど!


 子供の頃のお父さんの最初の装備、自作の竹槍で海獣倒したって自慢してきたことあるけど、これ、それ以上に絶望の戦力差だよ!

 

 そうだ。センイチとモリミチとボビーを投げてみよ。

 えっと、火薬ないかな? あればボールを手榴弾にできるんだけど。


 なんてことを思いつつ、釣り船軍団 vs 巨大戦艦。

 常識外れの海戦がこれより始まる。

 

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