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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【海賊王に私はなる? 伊勢攻略編】

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第65話 長谷川真昼、海賊と出会う

「ちょっと信長様! ホワイト企業とか週休二日制って言葉、ググったことある⁉ ないよね、スマホないもんね! でもね、京から帰ってきてまだ1日だよ? 畳と合体する約束、まだ半分も終わってないんだけど!」


 岐阜城の大広間で、私は新しく張り替えられたばかりの畳にしがみつきながら信長様に猛抗議していた。

 

 せっかく京から凱旋して、これから優雅なスイーツ三昧の日々が始まると思ってたのに、信長様の前に広げられた地図に、すでに新しい遠征ルートが真っ赤な筆で書き込まれていたのだ。


「うつけが。1日も寝れば十分だろ。俺を見ろ、京から戻ってから、会合と政務と飲み会とバットの素振りと銭の計算しかしてねえぞ」


「それは信長様がショートスリーパーの変態なだけでしょ! 私は成長期なの! 睡眠不足は肌荒れと情緒不安定の元なんだから! てか昨日は全織田のみなさんに絡まれちゃって、ほとんど寝てないんだけど⁉」


 私がギャーギャー騒いでいると、隣で苦笑いしながら秀吉さんがお茶を淹れてくれた。


「まあまあ真昼、落ち着いて。信長様も急いでおられるのだ。京に十兵衛様と村井殿を残して、治安維持と御所の修繕を任せているが……あちらも休みなしの激務だと聞くよ」


「光秀さんと村井さん……。あの2人、絶対裏で織田家労働組合結成しようとしてるよ。そのうちストライキ起こされても知らないからね」


 村井さんの魂が抜けた顔を思い出して合掌していると、軍師の半兵衛君がモリミチボールを弄びながら補足した。


「東の情勢も動いていますからね。三河の家康殿は今川の残党を掃討するため、武田信玄と同盟を結びました。いまだに今川家への忠義を貫き、遠江で抵抗を続ける執念の男……朝比奈泰朝殿を討つための包囲網を敷いている最中です」


「泰朝……。あのマスクマンのおじさん、まだ頑張ってるんだ。野球の恨み、相当根に持ってるのかなぁ」


 熱田神宮での一打席勝負、矢作川での死闘を思い出して遠い目をしていると、信長様がバットで地図の南側――伊勢の国をドスンと叩いた。


「泰朝の相手は家康に任せておけばよい。俺たちが次に叩くのは伊勢だ。北畠具教という古臭い名門を叩き潰し、伊勢湾の制海権を完全に掌握する。……久助(一益)、連れてこい」


 信長様の合図で、影のように控えていた一益さんがスッと立ち上がり、1人の男を広間へ招き入れた。


 入ってきたのは全身から潮の香りと、隠しきれない殺気を放つワイルドな大男だった。

 日に焼けた肌に筋骨隆々の身体。腰には大きな太刀をぶら下げ、不敵な笑みを浮かべている。


「……えっ、もしかして海賊? ワンピ◯スのオーディション会場はここじゃないですよ?」


 思わず口走った私に、大男は豪快に笑い飛ばした。


「ガッハッハ! おかしななりをした小娘だ。あんたが噂の信長様の恋女房、長谷川真昼か。……俺は九鬼嘉隆。志摩を追われ、今は海の上でしがない海賊稼業を営んでいる男よ」


 嘉隆さんは信長様の前に跪くと、鋭い眼光を向けた。


「信長様。俺を雇いなせえ。一族を殺し、俺から志摩を奪った北畠と志摩五領主ども……奴らを海から引きずり下ろし、この海をあんたの庭にしてやる」


「九鬼嘉隆か。久助の親友だと聞いていたが、面構えは悪くない。……不合格なら海の藻屑にするが、構わんな?」


「上等だ。その代わり、勝った暁には志摩を返してもらうぜ」


 信長様と嘉隆さんの間で、火花が散るような視線の応酬が炸裂する。

 ……って、ちょっと待って。


「ねえ、一益さん。なんで忍者の一益さんと、海賊の嘉隆さんが親友なの? 住む場所も職種も全然違うじゃん。マッチングアプリなんて便利なのもないのに」


 お母さんが魔王討伐の旅立つ時に、マッチングアプリ使ったって言ってたっけ。

 その女子メンバーと、野宿してたお父さんを拾ってパーティー編成完了したんだよね。

 今でもみんな仲良しだよ。

 ……お父さんは全員に跪いていたけど。

 

 私の疑問に、一益さんは表情を崩さずに答えた。


「……昔話でござるよ。流浪の旅をしていた若かりし頃、ある村を襲っていた強欲な僧兵どもの集団を見つけてな。嘉隆は海から、拙者は山から、どちらがより多く僧兵をボコボコにできるか競ったのが始まりでござる」


「あの日は楽しかったなあ、久助! 俺が重り付きの鎖で頭を10個叩き割った横で、てめえは吹き矢で11人始末しやがったっけ!」


「結果はそれがしの勝ちでござる。嘉隆、あの時の酒代、まだ返してもらってないぞ」


「……いや、出会いからしてバイオレンスすぎるでしょ! いい話風に血なまぐさい話しないで!」


 戦国時代の友情パワーに戦慄していると、嘉隆さんが懐からド派手な虹色に発光するボールを取り出した。


「ところで信長様。あんたの軍勢は、この喋る石を戦に使うって聞いたが……こいつも混ぜてやってくれ。俺が海で拾った英霊ボール、名は『ボビー』。変幻自在の撹乱術が得意だだ」


 嘉隆さんがボールを床に置くと、即座に中から陽気で偏屈そうな声が響き渡った。


『ヘイ! 嘉隆! この城はデカいな! やっぱり旅はするものだ! ……おや? そこにいるのはセンイチじゃないか!』


 すると私の懐からも、センイチが飛び出す。


『ぬうっ! ボビーか! お前、こんなところで何をしとるんじゃ!』


『それはミーのセリフだ! センイチ! ミーは怒っているぞ! お前は2008年、オリンピックの日本代表監督なんて華やかな舞台に立っておきながら、その後のWBC監督要請をあっさり固辞しおったな! ミーなんて代表監督のオファーすら来なかったんだぞ! 贅沢な悩みを持ってんじゃない!』


『うっさいわい、このパフォーマンス野郎! 儂には儂の事情があったんじゃ! お前は千葉で大人しくパフォーマーでもしてりゃいいんじゃ!』


『何だと⁉ ミーの采配をパフォーマーと呼ぶな! ミーのマジックは緻密な戦略と情熱の結晶ね! ミス・マネジメントをしたお前に言われたくない!』


「……あの、すいませーん。これから伊勢を攻める話をしてるんですけど、野球の日本代表監督の枠で揉めるのやめてもらえます?」


 相変わらずの英霊ボール同士の低次元な口論に、私のポカン具合が加速する。

 半兵衛君はそんな喧騒を無視して、サラリととんでもない作戦を発表した。


「九鬼殿のボビーが持つ変幻自在の攪乱戦術……これに我が軍の兵力を合わせれば、伊勢攻略は神速で終わります。……総兵力、7万。軍を4つに分け、さらに海から九鬼水軍で包囲します」


 半兵衛君の指が、地図の上に四つのポイントを示す。


 東軍は柴田勝家殿を大将に、森可成殿、前田利家殿、佐々成政殿らの武力突破部隊。

 西軍は佐久間信盛殿を大将に、池田恒興殿、木下秀吉殿、木下秀長殿の調略部隊。

 南軍は滝川一益殿を大将に、丹羽長秀殿、稲葉良通殿、安藤守就殿の北畠本隊への主力部隊。

 北軍は斎藤利治殿を大将に、坂井政尚殿、浅井長政殿、松永久秀殿らの同盟部隊。

 

 そして――


 半兵衛君の視線が、私に向けられた。


「水軍は長谷川真昼殿を大将に僕と九鬼嘉隆殿。それと蒲生鶴千代殿を初陣に出して経験を積ませたいと思います。真昼殿、捕球の異能は、揺れる船の上での防衛に最適です」


「はああああああ⁉ なんで私が海⁉ 私、泳げないわけじゃないけど、船酔いしたら戦力外通告だよ⁉」


「真昼様、ご安心を。私が酔い止めのお薬を用意しておきますから」


 小姓の久太郎君が、どこからか薬箱を取り出して微笑む。……準備良すぎでしょ!


「よし、決まりだ! 者共、伊勢は本願寺の言いなりになり、将軍義昭様に敬意も払わぬ。海を織田の遊び場にしてやれ! プレイボールだ!」


 信長様の号令と共に、岐阜城は再び戦の熱気に包まれた。

 海賊王・九鬼嘉隆さん、英霊ボール・ボビー、ドS軍師・竹中半兵衛君、天才児童・蒲生鶴千代君と船出することになった私。


 伊勢平定戦――波乱の幕開けである。


「なんで私が海ぃぃぃぃ!」


 私の絶叫を乗せて、織田軍7万の大移動が始まったのだった。

 

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