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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【目指せ京の都、将軍義昭上洛編】

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第53話 長谷川真昼、主将に任命される

 夜の闇の近江路に、半兵衛君が掲げた連鎖粉砕の計という名の強行スケジュールにより、織田軍の各部隊はそれぞれのターゲットへと突撃していた。

 もはや修学旅行のワクワク感なんてゼロ。あるのは「納期に間に合わなかったら千本ノック」というブラック企業顔負けのプレッシャーだけである。


 まずは標高372メートルの険しい崖に守備兵がぎっしりと詰まった要塞・箕作城。

 ここを攻めるのは長秀さんを主将にした、一益さん、秀吉さん、秀長、そして川並衆を率いる蜂須賀小六さんの機動力部隊だ。


「なあ、秀吉の旦那。野球には隠し球ってのがあるんだろ?」


 崖の下で、小六さんがバットを肩に担いで不敵に笑う。


「だったらよ、敵の目を眩ませて、ど真ん中にストレートを叩き込んでやりましょうぜ」


 小六さんの指示で、数千の兵が1人2本ずつの松明を掲げ、山全体を光の帯で包囲した。


「野郎ども、一斉に鳴らせぇ! 半兵衛のアニキの言われた通りにするんだああああ!」


 小六さんの合図で、全兵士が特製バットを岩肌に一斉に叩きつけた。


 ――カキーン! カキーン! カキーン!


 闇夜に響き渡る無数の乾いた破壊音に、城内の守備兵たちは地獄の底から妖怪が攻めてきたと想像してしまった。


「な、なんだあの音は……! 織田の軍勢に地獄の亡者どもが加わっているのか⁉」


 恐怖で足がすくみ、守備兵が音の方向に目を奪われた一瞬の隙に、一益さんと秀長の部隊が、野手の隙を突く盗塁の如き速さで絶壁を駆け上がった。


「ストライクアウト。……本丸、制圧完了でござる」


 影のように現れた一益さんの一言で、難攻不落の箕作城はあっけなく陥落。

 六角兵たちは数ヶ月戦う覚悟があったのに、1日で陥落したことに茫然自失していた。


 ***


 同時刻、箕作城の隣に位置する強固な守備拠点・和田山城。

 ここには稲葉良通さんら西美濃三人衆と、織田の主砲軍団が陣取っていた。


「見ておれ龍興……。斎藤家を捨ててまで手に入れたこの理、今こそ証明してくれるわ!」


 良通さんは信長様から貸し与えられた、特注の重量級金属バットを構える。

 センイチの熱血指導を受けた良通さんは、もはや迷わない。


「ぬんっ! 全力スイングじゃああああ!」


 良通さんが一閃させたバットが、兵士たちの槍の壁を根こそぎ叩き折る。もはや野球というよりは重機だ。

 そこに風格を纏った柴田権六おじさまが続く。


「ガハハ! これぞ主砲の仕事よ!」


 金棒さながらのバットで城門の閂を粉砕。森可成さんに前田又左さんも続き、力任せに敵の守備シフトを突き破っていく。

 守備網の隙間を抜くバッティング? そんなの必要ない。野手ごとスタンドへ叩き込む場外満塁弾の如き圧倒的パワー。

 和田山城は、わずか半日で文字通り粉砕された。


 ***


 観音寺城の六角義治のもとに、血相を変えた早馬が次々と飛び込んでくる。


「報告! 箕作城、妖術のような光と音に呑まれ、一刻で落城!」

「和田山城、織田の主砲軍団に門を砕かれ陥落!」


「馬鹿な……! あの鉄の棒を振る連中が、これほどまでの速さで我が網を破るだと⁉」


 義治は震える手で地図を叩く。六角定頼公が築き上げた連携防御が、織田軍のスピードとパワーの前に、バグを起こしたプログラムのように崩壊していく。

 隠居の承禎は、遠くで立ち昇る煙を見つめ、静かに悟った。


「……あれは兵法ではない。神に選ばれた天兵が、新しい世を作ろうとしているのだ……」


 ***


 さて、私はというと。

 ターゲットである日野城へ向かう馬上で、とんでもない事態に直面していた。


 ガタガタガタガタガタガタ……!


「ちょっとセンイチ! どうしたのよ、さっきからスマホのバイブ機能みたいに震えちゃって! 三河のタヌキにでも化かされた?」


『……違うわい。この……地響きのような威圧感……。近くにおる。間違いない、ドラゴンズのコーチだったあの大先輩が……!』


 懐のセンイチが、恐怖と敬意が入り混じった声で呻く。

 

「……真昼殿。あの日野城を守る蒲生賢秀という男は策や恐怖では動きません。なぜなら、彼もまた理の外にある力を守護神としているからです」


 馬を並走させる半兵衛君が、冷静に告げてくる。

 光秀さんも眉をひそめた。


「守護神、ですか……。義昭様が真昼殿を神の巫女と呼ぶように、あちらにも英霊がいると?」


 やがて日野城に到着した一同を待っていたのは、他二城の喧騒とは対照的な、水を打ったような静寂だった。

 城壁の上に不動の構えで立つ蒲生賢秀の手には、鈍く、荘厳な光を放つ白球が握られていた。


「来るが良い、尾張の怪物。我が主君は不甲斐ないが、この石の教えに従い、一歩も退かぬのが我が道よ」


 そう聞いた瞬間、センイチが絶叫した。


『やっぱりじゃ! あのボール、ミズハラ監督の時代のコーチ・マサオさんじゃ!』


 半兵衛君の懐にあるモリモチボールも、畏れ多くといった様子で呟く。


『1年だけじゃが、お世話になったのう……。ノックの嵐、今でも夢に出るわい……』


『ブレーブスが付く以前、阪急軍草創期の第一号選手でな。儂の出身高校の後輩じゃ。儂がフライヤーズの監督になった時に、ブレーブスから引き抜いてのう。ドラゴンズにも来てくれたのじゃ。ZZZ……』


 ミズハラも一瞬目覚め、英霊ボールたちが一斉に日野城の白球に向かって、嵐のような共鳴を始めた。

 ええっ! センイチとモリモチの師匠キャラ登場⁉ なにその「元祖・鬼コーチ」みたいな立ち位置。


 私の師匠って誰だろ? やっぱりお姉ちゃんになるのかな?

 小さい頃、柔道とか空手とかの道場にお姉ちゃんと一緒に入門したことあるけど、10分後にはお姉ちゃんが先生倒して出禁になったし。

 ……まあ、私も倒したことあるけどさ。

 ちなみに、ピアノ教室で鍵盤破壊して出禁になったのはお父さんには内緒だ。

 お父さん、私とお姉ちゃんに、おしとやかに育って欲しかったみたいだからね。

 

 ブルッ。……そりゃあ、予期しないで出会ったら震えちゃうわな。

 私も突然「真昼、こんなところにいたのね。千円返しなさい」なんて、戦国時代まで追ってきたお姉ちゃんに言われたら逃亡したくなるよ。


「……よくわかんないけど、英霊ボール発見ってことね。要は、あの頑固そうなおじさんと、鬼コーチボールを攻略すればいいんでしょ? 主将の私に任せて!」


 私は気合を入れて日野城を見上げた。


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