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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【最強の敵、半兵衛君を説得せよ、美濃攻略編】

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第47話 長谷川真昼、新たな誓いをキャッチする

「引越し、完了ー! いやあ、やっぱり広いね稲葉山城……じゃなくて、今日から岐阜城だね!」


 私は新しく本拠地となった岐阜城の天守閣から、広大な濃尾平野を見渡して叫んだ。

 あんなに苦労して落とした城も、入ってみれば意外と快適。

 畳も新しいし、何より眺めが最高。これ、令和なら家賃いくらするんだろう?


 信長様は私の隣で腕を組み、満足げに鼻で笑った。


「岐阜、か。沢彦の爺が言うには、周の文王は岐山より起こり天下を定めたとな。俺もここから、天下を布武してやるよ」


 信長様の手に、新しく作らせた『天下布武』の印判が握られている。

 力でねじ伏せる武士の世を終わらせ、新たな理で世を治めるという意味。

 吉乃さんが亡くなってから、信長様の瞳には冷徹な決意が宿っている。

 でも、私にはわかる。二度と身内を失いたくないっていう、誰よりも熱い優しさが隠れていることを。


「秀吉。……あいつを呼べ。仕上げだ」


 ***


 城下の特設グラウンド。

 そこに、相変わらず浮世離れした美少年の竹中半兵衛君が現れた。

 手にはモリミチボール。隠居生活で少しは丸くなったかと思ったけど、瞳の鋭さは全然変わってない。


「信長殿。僕を呼び出すとは、よほど暇とお見受けする」


「ほざけ、半兵衛。俺のチームには、お前の理屈っぽい頭脳が必要なんだよ。俺の球を前に飛ばしてみせろ。できなきゃ、お前は今日から俺のコーチだ」


 信長様の無茶振りに、半兵衛君はフッと不敵な笑みを浮かべた。


「いいでしょう。ただし、打てたら僕は再び栗原山へ帰りますよ」


「上等だ! 者共、ポジションにつけ!」


 信長様の号令と共に、織田家のオールスターがグラウンドに散った。

 ピッチャーは信長様、キャッチャーは私。

 ファースト権六さん、セカンド恒興さん、ショート秀吉さん、サード一益さん。

 外野には長秀さん、成政さん、信盛さん。

 審判は光秀さん。

 

 ベンチには又左さんや秀長、三左さんたち控え組に、ねねちゃんにまつさん、旭ちゃんに八重緑ちゃんまで勢揃い。

 VIP席には奇妙丸君たち子供軍団に、信長様の弟の信治様や信興様に信包様、新五郎利治君に久太郎君が並んでいる。

 ……ちょ、これ、観客席の豪華さで私が緊張するんだけど!


「1打席勝負だ、半兵衛! 俺の進化、とくと見せてやる!」


 信長様がワインドアップポジションに入る。

 第1球、第2球! 唸りを上げる160キロのストレート!

 しかし半兵衛君は鋭く振り、バックネット直撃のファールを連発した。


「……タイミングは合っていますね。信長殿、貴方はストレートしか投げられない。それが最大の弱点だ」


 半兵衛君の挑発に、私はミットを叩いて信長様を見た。

 

(信長様……今こそ、特訓の成果を見せる時ですよ!)


 第3球目。

 信長様が大きく振りかぶる。

 腕をしならせ投じたボールは真っ直ぐ半兵衛君の胸元へ……行くと思いきや!


 ――ギュンッ!


 手元でボールが大きく左へスライドする。


「なっ……スライダー⁉」


 半兵衛君が驚愕し、バットがギリギリで止まる。

 とてつもない反射神経じゃん、半兵衛君。

 判定はボール。これでワンボールツーストライク。

 

 そう。信長様は学んだのだ。吉乃さんを失ったあの日、力押しだけじゃ大切なものは守れないことを。

 相手をいなす、変化する強さが必要なんだと。


『スライダーか。センイチの得意球じゃったな』


 モリミチが唸り、半兵衛君も驚愕の瞳で信長様を見つめる。


「……ストレート以外も、投げられたのですか」


「当たり前だ。俺を誰だと思ってる。さあ、次で決めてやる!」


 信長様が吠えた。

 次の1球。変化球を意識してしまった半兵衛君のど真ん中に、今日一番の剛速球が突き刺さる。

 鋭いスイングが風を切る。


 バシィィィィィン!


「ストライク! バッターアウト!」


 光秀さんの右手が上がる。

 半兵衛君はバットを持ったまま、呆然と天を仰ぎ、そしてクスクスと笑い出した。


「……参りました。信長殿の変化、この目で見届けました。貴殿なら、道三様を超えることも可能でしょう」


 半兵衛君はバットを置き、信長様の前に跪いた。


「では、第三の関門を。……信長殿。天下統一の暁には、斎藤道三様の血脈を引く者に、天下の采配を譲ると約束していただけますか?」


 半兵衛君の言葉に、審判席の光秀さんがハッとして叫んだ。


「半兵衛殿! 何を仰る! それでは織田の天下ではなく、斎藤の……」


「逆ですよ、十兵衛殿。血脈とは血筋ではなく、魂という意味です」


 半兵衛君が魂から捻り出すように語り出す。


「私は、古い血筋や権威が何の意味も持たない世界が見たいのです。将軍でも公家でもない、ただの実力者が天下を采配する道三様が夢見た下克上の完成形……それを成せるのは、このうつけしかいない。道三様の血脈に譲るというのは、あの方の志を継ぐ者に次の時代を譲るという意味です」


 半兵衛君の言葉が終わると、信長様はニヤリと獰猛に笑った。


「いいぜ。俺の後に続くのが、俺より凄えうつけなら文句はねえ。半兵衛、織田家を、俺を使って存分に頭脳を使え!」


「……御意。この竹中半兵衛重治、命の灯火が尽きるまで、貴方の天下布武に従いましょう」


 ついに、最強の軍師が仲間に加わった。


「モリミチは半兵衛が持っていよ! よいな、センイチ!」


『応とも! モリミチさん、これから共に戦おうぞ!』


 信長様? センイチ? 私の意見は聞かないの?

 ま、まだまだ集めなくっちゃいけない英霊ボール多いし、全部集め終わってから回収でもいっか。

 

 そう思ってる私の後ろでは、新五郎君が「俺に天下を譲られても困るぞ」とブルンブルン首を振っていて、光秀さんは隣で喜んでいる秀吉さん……いや、帰蝶様をそっと見ていた。


(道三様の血を引く者はここにいる。……だが彼女は、もう女を捨てて織田の木下藤吉郎秀吉として生きる道を選んでいる。……やれやれ、織田家は嘘つきと変人ばかりだ)


 光秀さんは深く嘆息して、審判の位置から離れた。

 でも、表情はどこか晴れやかだ。


「さあ、信長様。美濃攻略の次は、いよいよ上洛。六角に三好三人衆、松永弾正久秀を倒し、足利義秋様を奉じましょう。天下統一はまだまだ先の話です」


 光秀さんの宣言に、信長様の隣で私も大きくガッツポーズをした。

 吉乃さん、見てて。

 私たちは今、最高のチームになったよ!

 

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