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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【美濃も三河も強敵だらけ、元康救出編】

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第23話 長谷川真昼、第2戦目先発出場する

 お市ちゃんの祝言も無事に終わり、私たちは尾張へと帰っていた。

 光秀さんは再び上方の情勢を把握すべく旅立ち、又左さんも古参衆筆頭林秀貞さんに反対され、帰参叶わず去っていった。


「ま、しゃあねえ」


 そう告げて去っていった又左さんだけど、サバサバしてんなあ。

 私だったらブチギレてるよ。


 小谷まで旅して、回収したボールはコウジボールだけか。

 先はまだまだ長そうだ。早く信長様に天下統一してもらって、安心安全でボール探ししたいよ。


 清洲城に戻り、はあ~っと一息ついて、信長様と一緒に吉乃さんや奇妙丸君たちに小谷名物リンゴを渡していると、イケオジの滝川久助一益さんが気配のない背後からいきなり現れたんですけど⁉


「おう、どうした久助」

 

 信長様……なんで驚かないの? ここ、プライベート空間じゃないの?


「はっ! 岡崎を占拠した松平元康の現状です。義元の遺体を返せと執拗に尾張へ軍を向けていましたが、ここひと月ほど音沙汰がありませぬ」


「ほう、竹千代が。……久助、吉乃や息子たちの護衛の任を解く。調べよ」


「承知」


 え? 消えたんだけど? お姉ちゃんは次の瞬間、私の背後にいたことはよくあるけど、ガチでどこにもいないんだけど⁉


「知りませんでした。久助殿が護衛してくれていたのですか」


 しょげこむ奇妙丸君だけど、仕方がないって。

 あれ、空間移動してるでしょ。

 てか護衛か。なら現れたり消えても問題ないか。

 プライベートはどこまで覗いてたんだ? 気になるぞ。

 私の昼寝を信長様に密告したの、一益さんじゃなかろうな?


「竹千代様というと、信長様の幼馴染ですね。今川の勢力が衰え、信長様の味方になると思ってましたが……」


 吉乃さんが、茶筅丸君やおごとくちゃんにリンゴの皮を向いてあげながら呟いた。

 へえ? 信長様、幼馴染がいたんだ。


「どんな人なんですか? 竹千代さんって」


 私が訊ねると、信長様はニヤリと笑う。


「肥溜めによく落としていたな。あいつ、2度目3度目と回を重ねるごとに回避しようと知恵を絞るから面白かったぞ。ま、全部落としてやったがな」


 わーお。それ、笑顔で語ることはないでしょ。お姉ちゃんだって、そこまでのことはしなかったぞ。

 いや、富士山登頂レース中に、谷に落とされたことあったっけ。


「ひっど! 信長様ひっど! そんな幼馴染じゃ、そりゃ大人になったら敵になっちゃいますよ」


「そうでもねえさ。あいつが未だに今川家にいる魂胆は見えている。どうせ、俺に力量を売り込んでるんだろうよ」


『ほう、FA宣言直前のシーズンのような奴か。信長、そいつは高く買ってやれよ』


「さて、どうすっかねえ」


 まーたセンイチはわけのわからないことを。信長様は人を食った笑みを浮かべるし。

 でも、ま、優秀な人なら味方になってくれたら嬉しいよねえ。

 北近江も味方になってくれたし、この調子で美濃も三河も味方にしちゃおう!


 ……なんて思ってるところへ。


「……信長様」


 今度は藤吉郎さんが走ってきて現れ、告げる。


「義龍兄様が……」


「であるか」


 信長様は、藤吉郎さんに最後まで言わせなかった。

 空気でわかる、義龍さんの死。

 出会って言葉を交わしたことのある人が、もうこの世にいない。

 そんな当たり前なことに、私の気分は沈んだ。


『帰蝶を頼む』


 うん、任せて。必ず、義龍さんの最期の願い、叶えるから。


『藤吉郎、ヒロミツの行方は?』


 センイチが、真面目な口調で訊く。


「消息不明だそうです」


 義龍さんの最期を看取ったヒロミツボール、彼は何を思ったのだろう?

 願わくば、敵として出会いたくない。


 私が感傷に浸っていても、信長様はドライだ。

 すぐに情報を集め、織田軍は美濃へ侵攻した。

 蜂須賀小六さんや前野小右衛門さんら川並衆の協力で木曽川を越えていく。


「今後、永久に織田家に寄生すっからな! 信長様!」

「俺らのためにも死なねえでくださいよ!」


「ああ、俺は約束を破んねえよ」 


 川並衆の後援を受け、私たちは美濃の墨俣砦手前の森部で斎藤軍と激突することになる。


 兵力は織田軍1500。

 対する斎藤軍は6000。

 数だけ見れば3倍以上の差。普通なら負ける戦。


「うう……当たり前のように戦に出てる私、おかしくない? か弱い女子高生なのに」


 行軍中、懐のセンイチにこっそり愚痴るしかないよ、こんなの。


『その設定、まだ貫く気か?』


「設定って酷いよ! そりゃあ、わかってるよ? 相手方に英霊ボールがいたらヤバいもんね」


『その通りよ。信長は総大将として下知せねばならん。その間にボールを預かるは恋女房の役目じゃ。わかってるなら一番槍せい! 全力で進めええええええ!』


 いや、6000の敵軍に1人で突っ込むアホがどこにいる?

 私を殺す気か? センイチ。

 私が、このクソボールを全力投球で斎藤軍に放り込むか考えていると、4人と一匹の若武者が私の側に寄ってくる。


「まあまあセンイチ殿。落ち着いてくだされ。真昼殿は織田家にとって欠かせぬ人物」


「勝三郎さん! うう、ありがとうございますぅ」


「相手は数こそ多いが、所詮は烏合の衆です。義龍亡き後、美濃を継いだ龍興に求心力はありません』


「長秀さん! じゃあ、勝てるんですね!」


「当然だろ。西美濃三人衆も、今孔明と呼ばれている竹中半兵衛も出陣してねえ。雑魚狩りの時間だあああああ!」


「成政さん! ちょっと落ち着いて!」


「ウキーウキーウキー!」


「うんうん、その通りだね、小一郎。……なんて言ってるかさっぱりだけど」


「半兵衛殿は龍興に苦言を呈し、不興を買ったそうだ。だが、あの男のことだ。成政殿、それに皆、油断めされないように」


 真面目な顔で藤吉郎さんが告げ、私たちの士気も上がる。


「「「「「「おお!」」」」」」

「ウキー!」


 私たちは藤吉郎さんの言葉に、小一郎と又左さん含めて元気よく返事した。


 ん?


「って、又左さん! なんでいるんですか⁉」


「なんでって、今度こそ帰参するためよ。頼むみんな! 協力してくれ!」


 頭を下げる又左さんだけど、みんな不敵に笑うって、おい。


「誰が戦場の手柄を譲るかよ!」

「勝負の世界は甘くないのですよ」

「それがしも、殿の乳兄弟だから贔屓されているという言葉を覆さねばならぬのです!」


 成政さん、長秀さん、勝三郎さん、それぞれ又左さんに一言告げて走り出す。

 みんな、元気だなあ。


「と、藤吉郎……小一郎……真昼」


 又左さん、消え入るような声を出さないで!


「わかってる。私は戦働きより支援のほうが得意だ。それに、ねねとまつ殿は親友だしな」


「ウキー、ウキキウキー」


「私も協力します! 見返しましょう! その代わり、私たちを護ってくださいね! 又左さん!」


 そんな私たちの熱い友情に、又左さんの目頭が熱くなる。


「ありがてえ……でもさ、真昼は俺が護る必要あるのか?」


 おいこら又左さん。真顔で何を呟いてやがる。


「者共! 敵は数だけの雑魚ぞ! 我が剛速球と貴様らのバットで蹴散らしてくれよう!」


「「「オオオオオッ!」」」


 信長様の檄に、金属バットやグローブを装備した兵たちが雄叫びを上げる。

 完全に野球部のノリだね。まあ、やることは戦争なんだけど。


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