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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【旅せよ乙女、お市ちゃん結婚編】

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第21話 長谷川真昼、盗塁を刺す

 運命の対決当日。

 小谷城の中庭には、即席のマウンドとバッターボックスが作られていた。

 マウンドには信長様。キャッチャーは私。

 一塁は猿とは思えない機敏さで構える小一郎。三塁は気合入りまくりの又左さん。

 ショートは藤吉郎さんで、審判は涼しい顔の光秀さん。

 外野には、海赤雨三将のおっさんたちが3人仲良く並んでいる。


 応援席……というか縁側には、お市ちゃんとねねちゃん。

 そしてバッターボックスには、ツルッツルの脛を晒した赤褌姿の浅井賢政さんが立っていた。


「……寒い」


 賢政さんが小声で呟く。

 そりゃそうだ。もう10月だもん、山城の朝は冷えるよ。

 でも、お市ちゃんへの愛と脛毛処理の誓いのために寒風に耐えるその姿、嫌いじゃないよ。


『おのれ、コウジ! いきなり現れて賢政に憑くとはどういうつもりじゃあ!』


『うっさいわ、センイチ! 英霊ボール憑いてない奴と勝負するそっちが悪いわ! これは漢気じゃけえ、恋愛応援して何が悪い』


『じゃかあしいわ! 毎日コウジを応援に来てた女に、あの女、誰の恋人じゃろ? と1年気づかなかった鈍感野郎が恋愛語るな!』


『ほざけ! 儂の妻を語るなら、センイチの妻を語ってやるぞ! もう決めた、お前に決めたって勝手に決め……』


『ワーワー! コウジ、黙らんかい!』


『フッ……ここから先は真剣勝負よ』


『『我ら、どっちが勝っても恨みっこなしぞ!』』


 ……なんか、濃い話を聞いてしまったよ。

 センイチも奥さんいたんだね。やっぱ、ボールなのかな?

 ノロケ話、ご馳走様でした。


「ほう、興味深い。センイチ、この俺がいつでも思い出話を聞いてやるぞ」


『の、信長まで……んなことより集中せえ! 憑いて間がないとはいえ、コウジは手強いぞ』


「ふん。であるか」


 信長様もセンイチの過去に興味津々みたい。

 私もお姉ちゃんと一緒に、お母さんとお父さんの馴れ初めを目をキラキラさせて聞いたことあったなあ。

 お母さんが女の子パーティーで冒険出て、お父さんと初めて出会った時にビビッときたって、ノロケ話されたよ。

 お母さんたちを救って、礼はいらん、とか言ってウサギ小屋に戻って寝たお父さんを、鎖で繋いでアイマスクに猿轡させつつ、仲間たちに責任持って飼うから! って説得したそうな。

 お父さんはその時、初めて死を感じた、と遠い目をして語ってたけど。


 さて、思い出話終わり。

 勝負に集中しないと。


『コウジ、策はあるのか?』


 賢政さんの手元で、赤いコウジボールが輝く。


『あるけえ。センイチとの対戦成績、打率351、10本塁打、出塁率407。奴の癖も球筋も、儂のデータバンクに全部入っとる』


 すっげー! 具体的な数字出してきた!

 3割5分1厘って凄いのかよくわかんないけど。


『センイチは熱くなりやすい。そこを突く。読みのコウジと呼ばれた儂の読み、外れんよ』


 コウジボールは自信満々に語る。

 一方、信長様のミットの中でセンイチボールも唸る。


『フン。コウジの野郎、偉そうに。儂が監督時代、お前をコーチとして招聘した恩を忘れたか』


『ほう、それを言うかセンイチ。儂がタブチと共に、お前をどれだけ支えたと思うとる。今度はセンイチが儂のコーチをする番じゃろが』


『寝言は寝て言え! 儂の主は信長よ!』


 英霊同士で揉めるなっての。仲がいいのはわかったから。

 ていうかタブチって誰? また新しい名前が出てきたけど、とりあえず今は無視だ。


「いくぞ賢政! お市の婿になりたくば、この剛速球を打ち返してみせよ!」


 信長様が吠える。

 対する賢政さんも、真っ直ぐな瞳でバットを構えた。


「望むところ! コウジ殿の教えと、私の愛の力……見せてみせます!」


 第1球。

 信長様が大きく振りかぶる。

 ビュン!

 空気を切り裂くストレートが、外角低めにズバッと決まる。


 バシィィィッ!


「ストライク!」


 光秀さんのコールが響く。

 賢政さんはピクリとも動かなかった。


「……速い。ですが、見え……ないこともない!」


 お? たった3日の練習で信長様の球筋を見切った?

 すごいじゃん賢政さん! 私のコーチングのおかげかな?


『よし、次は内角高めじゃ。踏み込んで叩け!』


 コウジのアドバイスを受け、賢政さんが深く踏み込む。

 第2球!

 信長様の全力投球を、賢政さんが強振する!


 カキィィィン!


 快音が響き渡る!

 打球は高々と舞い上がり、センター方向へ!

 これは……いったか⁉


「雨!」

「我に任せよ!」


 センターを守っていた雨森弥兵衛のおっさんが、猛ダッシュで背走する。

 そして塀際でジャンプ一番!


 バシッ!


「獲ったどー!」


 雨森のおっさんがドヤ顔でボールを掲げる。

 海北、赤尾のおっさんが、おおって拍手してるけど、あんたら浅井家の人でしょ。

 

 センターフライ! バッターアウト!


「そ、そんな……」


 賢政さんが崩れ落ちる。

 惜しい! あと一伸びあればホームランだったのに!


『落ち込むでないぞ、賢政。わずか1日の儂の教えでこれなら、いずれ信長に勝てるけえ。世話になったな……』


「コ、コウジ殿……!」


 賢政さんとコウジボールが敗北を噛み締め、これにて勝負あり……と思いきや。


「あっ? 練習時間が足りねえって言い訳か? なら、その言い訳、無くしてやる!」


 信長様がマウンドで地団駄を踏んだ。


「立て賢政! 俺はくたばるまで投げ続ける! 打てるもんなら打ちやがれ!」


 ええー⁉ ちょっとちょっと、趣旨が変わってるよ信長様!

 ヒット打たれたら負けってルールじゃなかったっけ?

 賢政さんにとってはチャンスだけど、くたばるまでっていつまでだよ。

 キャッチャーやってる私の休憩時間はあるの⁉


「……感謝します、信長殿!」


 賢政さんが再びバットを構える。

 絶望ではなく希望の光が宿った顔をして。


「打つ。打ってコウジ殿の想いを叶え、私はお市殿と夫婦になる!」


 信長様がニヤリと笑い、再びセットポジションに入る。

 あっという間にツーストライク。

 追い込まれた賢政さん。

 ……もう、カウント関係なくね?


 第3球目。

 信長様が大きく足を上げ、腕を振ろうとした――瞬間。


 賢政さんの目が、バッターボックスから大きく見開かれた。

 視線の先はマウンドの信長様ではない。

 その奥、縁側に座るお市ちゃんだ!


「お市殿ぉぉぉぉぉぉ!」


 賢政さんがバットを持ったまま、猛然とダッシュした!

 え? 盗塁? いや、走る方向が違う!


「なっ、何をする気だ!」


 信長様も虚を突かれて投球動作が止まる。

 賢政さんはそのまま縁側に飛び込み、お市ちゃんに覆いかぶさった。


 直後、ドキューン! という乾いた破裂音と共に、賢政さんの背中を何かが掠めて血飛沫が舞う。


「きゃああああ!」

「賢政様⁉」


 お市ちゃんとねねちゃんの悲鳴が木霊する。

 銃撃⁉ どこから⁉


「気を逸らしたな。貰ったぞ、信長」


 火縄銃を構える男の脳裏に、師の死の間際の言葉がよぎる。


『今の世に、恐ろしい者は尾張の織田上総介よ。あ奴だけは、並の人間ではない』


 そんなわけあるか。義元を屠ったのも運がいいだけだ!


「宗滴様が認めたのは俺1人で十分!」


 城内の櫓の影から、銃口が覗いているのが見えた。

 あそこか! 第二射が来る! 信長様が危ない!


「そっこだぁぁぁぁぁ!」


 私は反射的にミットの中のセンイチを鷲掴みにし、全力でブン投げた!

 

 ビュン! ガシャァァァン!


 センイチボールが櫓の窓を突き破り、狙撃手の手元にある火縄銃を粉砕した。


「ちっ!」


 狙撃手――朝倉家の山崎吉家らしき影は、破壊された火縄銃を投げ捨てて姿を消した。


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