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第9話 救いたいR

「お前……刀を持っているな……? 臭いがする……寄越せ……!」


「兄貴!」


「寄越せええええ!」


 『Revolution』。それは『革命』の力を秘めたスーパーサムライソード。この街を変えようと頑張る若き政治家、(つるぎ)ソウヤが契約者になるはずだった、金色の刀。


 夢と理想に燃える若き政治家はしかし、谷欠市に渦巻く巨大な陰謀を前に脆くも敗れ去る。


 政治家の汚職・腐敗・裏金・癒着。利権で雁字搦めになったこの街を変えるのは事実上不可能だ。正義の若者が巨悪の老害の前にアッサリ潰される。悲しいかなよくある悲劇にすぎない。


 だが運命の悪戯か、剣ソウヤはスーパーサムライソードに選ばれその呪われた刃を鞘から引き抜いてしまった。そしてその力で、悪しき老害政治家どもを皆殺しにして街を一掃するのだ。


『たとえ今は報われずとも、俺は正義を信じてまっすぐ前を、上を向いて歩き続ける! そうすれば、いつか正義が勝つ日が来ると俺は信じている! 俺はいつか必ずこの街の市長になる!』


『正義なんてどこにもなかったよ。この世にあるのは悪徳の栄えだけさ。悪を倒すためには正義じゃ駄目だ。闇の正義でなければ悪を滅ぼせない。子供の君にはわからないだろうね!』


 街頭演説を続ける剣ソウヤと偶然仲よくなった斬月ムサシロウは、力に溺れ醜い異形の怪人となってしまった彼を泣きながら斬り捨てることでまたひとつ侍として成長する、はずだったのに。


 一体何故Rの刀が剣ソウヤではなくライタ兄貴の手に渡ってしまったのか、意味がわからないよ!


 ただひとつ言えることは、今朝の段階では間違いなくライタ兄貴は契約者ではなかった。刀が街中にばら撒かれたのは一昨日だが、欲望の悪鬼ゴルディオニとの契約に至るためには誰かが鞘を引き抜く必要がある。


 今朝家を出てから俺が帰宅するまでの間に、ライタ兄貴はどこかで刀を抜いてしまったのだ! それが偶発的な事故かは意図的なものかはともかく、とにかく兄貴を助けないと!


「ディノ! お前の刀を俺に寄越せ! 俺ならもっと上手くやれる! お前より上手くやってやるから!」


「兄貴! クソ! やるしかないのかよ!」


『サムライバル! t-reX!』


『オープン・ザ・スーパーサムライソード! ティー・レェーックス!』


 革命怪人! いやどんな怪人だよ! その姿は原作における、剣ソウヤが変刃(サムライブ)したサムライバー嘘月とも選挙カー怪人とも似ても似つかぬ別物だった。


 今の兄貴の姿は板チョコ型の装甲を持つ悪魔のような風貌の怪人だ。虫歯でもイメージしたのだろうか。


 サムライバーではなく怪人になってしまったのは、力を制御できず呪いに呑まれ暴走してしまったせいだろう。


「ディノ! お前はもう何もしなくていい! 俺が全部代わりに上手くやってやる! 今までもずっとそうだっただろう! これからもそうしてほしいんだろう! だったらお前の刀を全部俺に寄越せ!」


「悪いな兄貴! そうしてもらえるならそうしてもらいたいのはやまやまなんだけどさ! こればっかりは俺がやらないといけないことなんだわ! そもそも兄貴に刀あげたら俺が死んじゃうだろ!」


 サムライバー竜月に変刃(サムライブ)した俺と兄貴の戦いは、まるで兄弟喧嘩のような口ぶりで始まった。だが兄貴の攻撃には明確な殺意がこもっている。本気で俺を殺して刀を奪うつもりなのだ。


「俺の言うことがきけないのか! いつからそんな悪い子になった! お前はいつもそうだ! いつだって自分勝手で、いつも俺に迷惑ばかり! 都合のいい時だけ甘えて!」


「悪かったとは思ってるよ! でもしょうがないじゃん! 俺次男なんだから! この家の財産は全部兄貴のもんだろ! 親父もお袋も出来損ないの俺を嫌ってるんだからさあ!」


「俺だって好きで長男なんかに生まれたわけじゃない! 本当はもっとほかにやりたいことだって沢山あるのに! 長男だからってだけで全部押し付けられて! いい迷惑だ!」


「それは可哀想だとは思うけどさあ! でも実家が金持ちなのはよかっただろ! 貧乏人の家に生まれて、なんにもやりたいことができないまま惨めに過労死するよりよっぽどさあ!」


 刀と刀のぶつかり合い。言葉と言葉のぶつかり合い。紫の刀と金色の刀がぶつかり合って火花を散らす。


 来世はお金持ちの家の子にしてください。それが俺の前世の遺言だった。搾取される貧困労働者。底辺社畜としての人生はコリゴリだ。来世は一生遊んで暮らしたい。それが俺の唯一の願い。


『大丈夫だディノ。兄ちゃんがついてるからな』


『泣くなディノ。兄ちゃんが傍にいるから』


『父さんと母さんがなんと言おうと、お前は大事な俺の弟だ』


 ニート志望の子供なんて、親からすれば出来損ないもいいところだろう。両親が俺を嫌ったのも当然だ。だがライタ兄貴だけは、幼い頃からずっと弟に優しかった。


 そんな兄貴に甘え続けて、死ぬまで養ってもらいたい、なんてのうのうとほざいていた俺への天罰がこれならば、そんなものはひっくり返してやる!


「死ぬまで俺に寄生して生きていきたいのなら! 相応の対価を寄越せ!」


『Revolution! エンゲェージ!』


「本気なんだな! 兄貴!」


「ああそうだ! 俺は本気だ! いつだって本気で生きてるんだ! 投げやりでいい加減なお前とは違ってなあ!」


『t-reX! Butterfly! ダブル・エンゲェージ!』


「ああそうかよ! それじゃあくれてやるよ一生分の御恩をよを!」


 スーパーサムライソードは契約者の負の感情を増幅させる呪われた秘宝。兄貴の言葉すべてが兄貴の本心だった、とは言わない。でも、不満はあったのだろう。それが爆発しただけ。


 俺と兄貴の初めての兄弟喧嘩。優しい兄貴。いつも俺を助けてくれた兄貴。今度は俺が助けてやる番だ!


「レボリューションキック!」


「ポイズンファング!」


 兄貴の投擲した刀が、俺の心臓目掛けてすっ飛んでくる。胸部装甲に阻まれるも刀はしつこく前進を続け、それを強引に蹴りで打ち込もうとする兄貴。


 俺は仮面の下で涙を流しながら、猛毒の刃で兄貴を斬った。


 ドオン! と空中で斬られた兄貴の体が青白い炎に焼かれ、ドサリと塩の塊と化して崩れ落ちる。


「ああ……ディノ……俺の……弟……」


「兄貴!」


「ごめんな……俺……何を……ごめん」


 兄貴が死んだ。俺が殺した。あとに残ったのは塩の山と、そこに突き刺さった金色の刀だけ。


 何故兄貴が死ななきゃならなかったのか。わかってる。全部俺のせいだ。俺という異物、異世界転生者が調子に乗って原作の物語を変えてしまったから、そのせいでこの世界の辿るべき運命が変わってしまった。


 それなら! それなら俺が責任を持って、兄貴を助けてやる!


『サムライバル! Revolution!』


「契約完了! 行くぞ!」


『todaY! Revolution! ダブル・エンゲェージ!』


 Revolution。それは『革命』の力。本来ひっくり返せないものをドンデン返す意志の力! こんな結末、認められるか! 俺が強引に変革してやる!

サムライバー図鑑


 Ace 赤 斬月ムサシロウ/サムライバー斬月

 Butterfly 青 天雅リン/サムライバー花月

 Critical 緑 宝田エル/サムライバー満月

 Fumble 赤 宝田エタ/サムライバー新月

 Hunter 緑 木霊ノゾム/サムライバー風月

 Inferno 赤黒 円城フレア/サムライバー炎月

 Joker 黒 葉隠ナデシコ/サムライバー三日月

 Mindcontrol ?

 Nightmare 灰色 密輸人/サムライバー歪月

 Revolution 金色 竜崎ライタ?

 Tempest 黄緑 嵐山キョウスケ/サムライバー嵐月

 Unite 黄色 契約者不明

 t-reX 紫 竜崎ディノ/サムライバー竜月

 todaY セピア 木野ギンジ/サムライバー古月

 ZZZ ?

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