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第8話 嵐を呼ぶH

「ライタ。今日は午後から土砂降りになるみたいだから傘忘れるなよ」


「ん、ありがと兄貴」


 スーパーサムライソード事件3日目。その日は朝から曇天だった。いつものように兄貴の車を見送った俺は、その足で駅前に向かう。


――


「君、僕に狩られてみるかい!」


「ほざけええええ!」


『Hunter! エンゲェージ!』


『Tempest! エンゲェージ!』


「グリーンスライサー!」


「テンペストアタック!」


 サムライバー風月。白いスーツに緑の装甲。鳥の翼をモチーフにした仮面のサムライバー。彼こそが『H』の刀の契約者、木霊ノゾムその人である。


 嵐をモチーフにした『T』の怪人の突進攻撃を華麗に回避し、彼は緑の刀で斬撃を撃ち出した。テンペスト怪人の背中に鮮やかに命中したそれは、どうやら的確に心臓を切り裂いたらしい。


「チクショオオオオ!」


 ドオン! と青白い炎に焼かれて崩れ落ちる異形の怪人。遺された塩の山に突き立てられた黄緑の刀。


 彼は変刃(サムライブ)を解除して人間の姿に戻ると、黄緑の刀をクールに拾い上げた。


「獲物を仕留めるのはいつだってこの僕だ! 木霊財団の名に懸けてね!」


 木霊ノゾム。18歳。少年漫画には欠かせないクールなイケメンライバルキャラのお出ましだ。Hunterの刀を持つ彼は、物語の鍵を握る重要人物でもある。


 原作第1話。海外から成田空港経由で秘密裏に日本に持ち込まれた呪われた秘宝・スーパーサムライソード。それが偶発的な事故により千葉県・谷欠(たにがき)市全域にばら撒かれたのが一昨日の晩。


 何を隠そうその偶発的な事故の原因となったのが彼だ。


 木霊財団とは、世界各地に眠る危険なオーパーツをひそかに収集・研究・管理・保管している民間団体だ。場合によっては封印や破壊も行う世界の守護者、を自称する一族。


 そんな木霊財団を運営する木霊一族の末裔が彼。


 日本にスーパーサムライソードを持ち込み、欲望の悪鬼ゴルディオニを復活させようと企む悪の科学者プロフェサー・G。


 そのプロフェサー・Gの野望を阻止すべく成田空港に舞い降りた彼は、プロフェサー・Gが雇った密輸人と交戦。


 だがその密輸人自身が既に契約者であったため、やむなく成田空港から発車した空港快速の屋根の上で激突。


 戦いの最中に敵の荷物が破損してしまい、走行する列車の上から谷欠市全域にスーパーサムライソードが流星のように降り注いでしまったというわけ。


 悪い言い方をするなら一連の騒動の元凶の一端を担ってしまった人物とも言える。


「これでようやく4本目か。まだまだ先は長いな」


『サムライバル! Hunter!』


『サムライバル! Unite!』


『サムライバル! Nightmare!』


『サムライバル! Tempest!』


 斬月ムサシロウが漫画の主人公ならば、木霊ノゾムは物語の主人公だ。いるでしょ、主人公よりも主人公してるライバルキャラ。


 斬月ムサシロウが巻き込まれた一般人枠で、木霊ノゾムが選ばれた戦士枠。


 名義上はライバルキャラだが実質的にはダブル主人公と言っても過言ではないぐらい活躍する。


 そんな彼は既に4枚もの刀を獲得している長有能キャラだった。収集ペースどうなっとんねん! 原作知識持ちの俺だってまだ3本やぞ!


「Tの刀、欲しかったなあ」


 イケメンライバルキャラの初登場回を物陰からコッソリ盗み見ていた俺は、彼の持つTの刀に熱い視線を注いでいた。


 前にも言ったがスーパーサムライソードは特定の刀を組み合わせて使うとその真価を発揮できる。俺のメイン刀であるt-reXなら超変刃(スーパーサムライブ)に必要なのはT・R・E・Xの4本だ。


「スペルがモロかぶりしてるんだよね!」


 Tの刀は木霊ノゾムのHUNTERと、Eの刀は主人公である斬月ムサシロウのACEと、Rの刀はヒロイン葉隠ナデシコのJOKERと。それぞれかぶってしまっている。


 特に3人+俺にも共通する『E』の刀は本編中でも特別な意味を持つ重要な刀のため、そう簡単に横取りできないのが現状だ。


「やってることが中途半端なんだよな、俺」


 現状ベストを尽くすなら、あの戦いに乱入しTの刀を横取りすべきだったのだ。t-reXへの変刃(サムライブ)とT-REXへの超変刃(スーパーサムライブ)では戦闘能力が桁違いに変わる。


 もっと言うなら主要人物3人がまだ弱いうちにさっさと倒して彼らの持つ刀をすべて奪うべきなのだ。そうすれば天雅リンの分も含めて7本の刀が手に入っていたはずなのだから。


 何故そうしないのか? だってできないんだもん。彼らに嫌われたくないんだもん。好きな漫画のキャラに憎まれるのだけでも辛いのに、まして斬らねばならないなんて無理無理。


 だから俺って中途半端! と落ち込みながら、木野珈琲店で美味いコーヒーを飲んで自分を慰めることしかできない。


「坊主、学校行かなくていいのか。折角高い学費払ってもらっていい学校に通わせてもらってるってのに。親御さんが泣くぞ」


「ちゃんと行ってるよ。たまにサボるけど。それに俺の親は俺には無関心だから平気平気。大事なのは優秀な兄貴だけで、出来損ないの弟にはなんの期待もしてないんだって」


「……そうか。ま、ズル休みも程々にしとけよ」


「うん、わかってるわかってる。大丈夫大丈夫」


 全然大丈夫ではないのだが、木野の爺さんの手前大っぴらに泣き言を言うわけにもいかない。


 そのままダラダラ木野珈琲店で過ごした俺は、500円のランチセットで昼飯を済ませ、雨が降る前に自宅に戻ることにした。


 だが歩いている途中で土砂降りの雨が降り始めてしまい、途中タクシーを拾って自宅に着く頃には夕立のような猛烈な土砂降りに。


「ただいまー! って、うん?」


 普段なら家政婦のオバチャンが出迎えてくれるはずなのだが、何故か妙に静かだ。それに電気が消えている。


 なんだか嫌な予感がする。俺は警戒しながら妙に静かな竜崎家の玄関ホールに足を踏み入れる。そこで俺は気付いた。血の臭いがする!


「ディ……ノ?」


「ライタ兄貴?」


『サムライバル! Revolution!』


「な!?」


『オープン・ザ・スーパーサムライソード! レボリューショオン!』


 まばゆい金色の光が兄貴の体を包み込んでいく。だが。


『サムライバル! R! ERROR! ERROR! ERROR!』


「がああああ!?」


 制御できない力が暴走し、サムライバーに変刃するはずだった兄貴の体が醜い異形の怪人へと変化していく。


 兄貴の足元には、家政婦のオバチャンの亡骸が転がっていた。兄貴に斬られたのだろう。その横には兄貴専属の運転手のオッサンの姿もある。


「ディノ……逃げ……ぐわあ!?」


 それをやったのは、ライタ兄貴だ! 帰宅したら、兄貴がスーパーサムライソードを持った醜い異形の怪人に変わってました。なんてこったい!

サムライバー図鑑


 Ace 赤 斬月ムサシロウ/サムライバー斬月

 Butterfly 青 天雅リン/サムライバー花月

 Critical 緑 宝田エル/サムライバー満月

 Fumble 赤 宝田エタ/サムライバー新月

 Hunter 緑 木霊ノゾム/サムライバー風月

 Inferno 赤黒 円城フレア/サムライバー炎月

 Joker 黒 葉隠ナデシコ/サムライバー三日月

 Mindcontrol ?

 Nightmare 灰色 密輸人/サムライバー歪月

 Revolution 金色 竜崎ライタ?

 Tempest 黄緑 嵐山キョウスケ/サムライバー嵐月

 Unite 黄色 契約者不明

 t-reX 紫 竜崎ディノ/サムライバー竜月

 todaY セピア 木野ギンジ/サムライバー古月

 ZZZ ?

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